肩 no 荷
仕事を少し早く終えて、新幹線に飛び乗って、ライブハウスへ向かう。
何度も遊びに行くあの街は、住んだこともないのに、ただいまという気持ちになる。
私の直前でロッカーが埋まってしまった。
トートバッグを抱えて、後ろの方で始まりを待つ。
SEからの新曲。
聴いたことない曲でも、だからこそ、言葉一つ一つが心に深く溶けていく感覚。
激しい曲のイメージが強いと思いますが、そうなんですよ、この人たちバラードもすごくいいんです。と心の中で誰でもない誰かにオススメしている。
そういえば、私が初めて買ったこのバンドのCDはバラードだったな。なんて思ったりもして。
新旧織り交ぜたセトリで、ライブも中盤。
ずっと集中できればいいのに、歌詞をきっかけに日常のことを思い出す。
辞めようと思いつつ、踏ん切りのつかない仕事の内容が私の頭を侵食していく。
ああ、そうか。今の仕事って、このトートバッグみたいになってるんだ。
時間が経つにつれて、徐々に重さが響いてきて、好きなことをしてる時にも、そっちに意識がいってしまう。
大好きなバンドの言葉に心打たれながら、そんなことも感じた夜だった。
誰かが必要な時に、肩の荷を下ろせるような仕事ができたらいいな。