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映画鑑賞記録008「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族」

昨年上映された、デンマーク、オランダ合作「胸騒ぎ」のリメイク。
私にとって、2024年後味の悪さ2第一位作品だったので、また「あれ」を見せられることへの覚悟と楽しみ?で鑑賞。

「胸騒ぎ」と比較しながらの前半、興味深かったのは、子どもたち、アグネスとアントの年齢が思春期まで引き上げられていること。
「胸騒ぎ」では、単に幼さゆえだったアグネスのぬいぐるみへの執着は、両親の不仲、母親の不倫など家族間の問題を、彼女なりにバランスを保っている描き方とか(だから取りに行っちゃうのも納得できちゃう)、細かなディテールにメタファーを込めているところがブラムハウスらしい、うまい、うま過ぎるんだよー 笑
アントの方も後半で、隙を見てはベンとルイーズ、アグネスにSOSを送り、脱走を試みる“希望”を持っていて、子どもたちに自我があるのが、物語に奥行きが出ていておもしろかったです。

そして後半からは一気に「胸騒ぎ」とは一転、脱走劇です!(そりゃハリウッドですから「胸騒ぎ」のような終わり方はできないですよね)
最後のアントがパトリックを殺すシーン、「あれ、もしかして人を殺す快感を覚えちゃったかな」とちょっと不安になりましたが、どうなんでしょう。

どちらかに軍配をあげるつもりで書いてるわけではないけれど、私は「胸騒ぎ」派かな。
ああいう状況になったら抵抗できない、しない、になるのだろうリアルさを描いた「胸騒ぎ」に対して、さらにブラッシュアップされたリメイクを施しているので、作品としてはおもしろいんですが、やっぱり勧善懲悪が成り立たない、救いようのないラストがいいな。

細かなディテールはない荒削りな作り、海外旅行先で、文化の違いや言葉があまり通じない中で、いい人たろうとして均衡を欠いていく方が身に染みる恐怖でしたね。
今までの人生で、この手の“胸騒ぎ”は何度か経験しているから、紙一重だなって薄寒くなったもの。
いい人であろうとすればするほど、転げ落ちるんです。

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