料理のコツだけじゃない。世渡りのコツも学んで元気になれる。-沖縄の行事料理-
沖縄の伝統的な行事料理。今は料理本も発行されていますが、本では伝わってこない料理のコツもたくさんあると実感しています。
冠婚葬祭をまだまだ家で行うことの多い沖縄ですが、来客の人数も半端ありません。例えば法事。本土と違い、お寺などとの関係が薄く祖先崇拝の沖縄なので来客の方々には家で食事を出すのです。
そんな時、家人だけで調理するなんてとてもとても追いつきません。親戚や近所に住んでいる女性たちがお互いに声をかけあって手伝いにきてくれたりします。人生も料理もベテランの先輩方が来てくれると頼もしいばかり。作る順番、担当、盛り付けまで、するするするっと作業は流れてきます。
親戚や近所の人の中には大概「〇〇が得意な人」「おいしい〇〇を作る人」がいるものです。
どんなして(どうやって)作っているのかねぇ
行事で人が集まる時がまたとない「達人のコツ」を聞くチャンスなのです。
ベテランの方ほど勘と経験で味付けしていることがほとんどなので目の前で見るのは何よりの勉強です。
三枚肉の炊き方と味付け、昆布の下ごしらえ、りんがくを焦がさず艶よく仕上げるコツ、来客が多い時のお茶の淹れ方、シンメーナービの返し方、おいしい白和えの作り方・・・
もう数え上げたらキリがありません。ありがたい知恵の伝授です。
目の前で聞けるのは料理の話ばかりではありません。昔の話、現在の話、子どもの話、親の話、料理の手は止めずにいろんな話を聞くことが出来るのです。爆笑あり、励ましあり、相談あり、ストレス発散あり。興味をひかれることがたくさんでてくるのです。
辛くてしんどいことや悲しいことは人に話すことで不安を軽くし、嬉しいことや楽しいことはみんなを幸せにさせる。そうやって話をする場をたびたび持てる機会があること、それが沖縄の女性たちを強くしたたかに、そして明るく笑い飛ばす力に変えているのではないかと感じています。
現在は個人個人が忙しくなり、家で料理を作らずに仕出しを頼む家庭も増えてきました。それは時代の流れとして仕方のないことだと思いますが、私には台所に集まる機会が減ることがもったいないと思えて仕方がありません。時には昔ながらの料理の仕方を経験し、台所での話に耳を傾ける。新しい発見や生きることの底力を感じることができるはずです。
今、私は行事で料理を作るたび、手順と共に教えてくれた人の顔や、その時の話など楽しく思い出しています。そんな経験をさせてくれた人たちへの感謝の気持ちが湧いてくるとともに、私自身も次の世代にそれら丸ごと伝えていけたらいいなあとキッチンから思っているのです。