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増え続ける感染症への向き合い方(*全文公開中)

パンデミックが去った2024年の夏から秋にかけて、日本では様々な感染症が流行しています。マイコプラズマ肺炎、手足口病、溶連菌、季節外れのインフルエンザ──もちろん、新型コロナウィルスも流行中です。

コロナ禍において、インフルエンザの発症件数が激減したのは記憶に新しいところですが、今になってインフルに限らず様々な感染症が増えたのを「ある種の揺り戻し」と見立てている医師もいます(こうした因果関係を科学的に検証するには時間が必要です)。免疫の話って難しいんです。

コロナだけでも世界が変わってしまったのに、複数の感染症が流行すれば、対策だって大変です。増え続ける感染症に向き合うためには、感染症に対する正しい知識だけでなく、死生観のアップデートが必要です。

(*)こちらの記事は、メンバーシップ向けに執筆したものですが、感染症が広がるご時世なので、今回に限り全文を無料公開しています。


「アルコール消毒」が無意味なケースも

あなたは、手足口病に罹患したことがありますか? たくさんの口内炎が口の中や喉にできて、手足には発疹が広がります。「子どもの病気」という印象がありますが、大人にも感染しますし、症状が重くなる場合もあります。足の裏の発疹が痛くて歩けなくなることも。原因はウイルス。人から人へと感染が広がります。

われわれがパンデミックで身につけた感染対策は、呼吸器系のウイルスに対するそれなので、接触感染もある手足口病のウイルスにはマッチしません。飛沫感染もありますが、コロナのようにエアロゾル化して空気感染しないので、直接・間接に接触しないことが重要になります。

それならアルコール消毒!となるわけですが、あいにく手足口病のウイルスにはアルコールが効きません。手指は石鹸による手洗い、物品や食器などには次亜塩素酸ナトリウムの使用が推奨されています(でも、薄めたり拭き取ったり扱いがちょっと複雑です)。

別に平気じゃない?と思いたいところですが、なんと家庭内の感染確率はおよそ25%。感染力が高い上に、コロナ同様に無症状のまま感染を広げる場合もあるのです。嫌になっちゃいますよね…。

新型コロナの後遺症は10〜20%の発生率

新型コロナについては、後遺症も深刻です。まだデータに揺らぎはありますが、罹患した成人10人に対して1名〜2名が後遺症を患います。

疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下が代表的な症状と言われていて、 QOLの低下はもちろん、働けなくなる場合もあります。

報道が減ったことで意識することが減りましたが、こうした事実にちゃんと直面すれば「別にいいや」とスルーするのが難しくなります。

回避しきれないリスクにどう向き合うのか

そもそも、日本社会は「リスク」が苦手です。「このサービスなら安心ですよ」「この商品なら安全ですよ」と、そんな話ばかり。でも、「安心・安全」などというものは本当は存在しないのだということを、私たちはコロナ禍に学んだはずです。

特に深く考えず、感染症みたいな嫌な情報には触れないようにしている、という人もいます。ある意味での"感染症対策"ですよね。でも、自分や身近な人が感染症に罹患すれば、こうした小手先の対策は役に立ちません。直面しなければ、深まらない領域というのがあるからです。

先ほどの手足口病のように、家族が罹患すれば、正しい知識がなければ感染を広げてしまいます。調べるのは大変です。デマだって多い。でも、正しい知識を得ることが重要です。

死生観のアップデートを

人は、死因と死期を選べません。自殺、尊厳死、安楽死などの死のプロセスを「自分で選んだ」ということは可能かもしれませんが、そうした状況に至る一人ひとりのプロセスは人智を超えています。

どんなに感染症対策を重ねても、死因と死期を選べないのなら、ある意味では「感染症対策など無意味」ともいえます。徹底した感染症対策をした人の死因が「交通事故」だとしても不思議じゃないからです。同時に、「手足口病の感染症対策にアルコール消毒は無意味」とも言えます(厳密には、わずかながら効果があるそうです)。一体、どこに「意味」を見出せばいいのでしょう?

「ちょっと哲学的だね」とか「宗教みたいな話だね」と言う人もいるでしょう。そうなのです。増え続ける感染症に自分らしく向き合うためには、そういう深い話が必要なのです。

「アンシンアンゼン」と念仏のように唱えて、「死」そのものを扱うことをやめていた日本社会は、死生観と呼べるほどの死生観が共有されていません。アフターコロナを生きるには、アップデートされた死生観、よりよく生きるための死生観が必要です。身近な人と、死ということについて、死があることを計算に入れて生きるということについて、話し合ってみませんか。

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