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「マスクを外せない」で失われる世界

マスクを外せない人が増えています。コロナがきっかけに始まった「マスク生活」ですが、それが長引いた結果、コロナとは無関係のまったく新しい問題が出現しました。
マスクがあるとコミュニケーションは大きく制限されます。「マスクを外せない」ということで、何がどのように変わってしまうのかを考えました。

マスクは「顔パンツ」、人前では外せない

「マスクは顔のパンツ」と言われるようになりました。陰部を隠す下着を人前で脱がないのと同じように、マスクを人前で外すのは恥ずかし過ぎる──そんな風に感じる人が増えているからです。

もちろん、マスクを着けるも外すも個人の自由です。でも、「外せない」というのは自由さではなく、不自由さの表れです。

中でも子どもたちの様子は心配です。学校生活の中でマスク着用に慣れきってしまった結果、熱中症の恐れがあるような場面で、教員から「外していい」と言われても、「外せない」という子が増えています(たくさん報道されているので、ご存知の方も多いはず)。

この問題が複雑なのは、教員の側が「外しなさい」と指導しにくい点です。だって、「顔パンツ」ですからね。脱げ、とは言えませんよね。

自分を隠すと相手も隠れてしまう

マスクをしていると、自分を隠せます。容姿(顔)の大部分を隠せますし、表情も隠せます。でも、目は見えていますから、「マスクはしていても相手は見える」と考えられがちです。でも、本当にそうでしょうか…?

身体レベルでコミュニケーション(やりとり)を分析すると、話がそう簡単ではないことが分かります。

  1. AさんがBさんに話しかけます

  2. BさんはAさんの言葉・表情・身体から情報を受け取ります

  3. その結果、Bさんの内側が変化し、表情や身体に表れます

  4. 次にBさんがAさんに話しかけます

  5. AさんもBさんの言葉だけでなく、表情・身体から情報を受け取ります

コミュニケーションというのは、「言葉のやりとり」だけではありません。表情や身体の様子からも多くを受け取っています。それは自覚されにくいだけで、相手の印象やコミュニケーションの行方を大きく左右します。マスクが介在することで表情が見えにくくなる──この影響は、非常に大きいと僕自身は考えています。

こちらが晒すから相手も応えてくれる

監視カメラで相手を眺めていても、相手のことは分かりません。人格というのは、周囲の人から完全に切り離されてスタンドアロンで成り立つものではなく、相手へのリアクションの集積でもあるからです。

もし「感じが悪い人」がいた場合、その人が「誰の前でも等しく同じように感じが悪い」とは限りません。もしかしてもしかすると、あなたの前でだけ感じが悪くなるのかもしれません。そうなると、その「感じの悪さ」は相手に属しているというよりも、あなたと相手の関係性に属していると考えられます。

そういう意味では、マスクでこちらを隠せば、相手も隠れてしまうことにつながります。こちらが本音を話すから、相手も応えてくれる。必ず応えてくれるとは限りませんが、相手をコントロール出来ない以上、出来ることは自分を晒して語ることだけです。

マスクを外せない問題、子どもも大人も、早急に考えなければいけませんね。身近な人と、話し合う機会をつくろうと思います。


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長田英史(おさだてるちか) / NOT SHIP
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