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運命とか立命とか宿命とか⑤

「口頭分離手術」によって、息子の体内でどんな形になっているのか、今でも分かりません。最近(現在9歳です)、口からだいぶいろんな物を食べられるようになったのですが、なぜか鼻から食べ物が大量に出てくる(吸引器で吸うと・・・)ことが多くて、私は、「この食べ物は口から喉を通って、どこにとどまっているのか?」「私たちも牛乳を飲んで鼻から出してしまうことがあるが、そういうのと同じなのか?」「この吸引器のカテーテルはどこまで入っているのか?」疑問だらけです。でもそんな疑問を主人にぶつけると、生物を得意としている彼にとって、私の質問は愚問らしく、、、「何回も聞いてくるよね」と言われます。でも優しいので、その都度、丁寧に説明をしてくれるのですが、何度聞いても、理解できません(><;)
ついに、先日主人が息子に「たぶんお母さんは一生、お前の体の中のこと分からないかもな~」と呟いていました、、、。

この手術をしてから、入退院が物凄く減りました。体調を崩すことも少なくなり、肺炎を気にせず食事を食べさせることができるので、安心して生活ができるようになりました。外科の先生によると、「気管切開をすると、今まで食べられていた子が食べられなくなることもあります」と言われていました。「違和感を感じて、積極的に物を飲み込むことが出来なくなる」と。でも、本人が好きそうな物を食べさせ(うちは喉越しの良いものを好んでいました。ゼリーとかヨーグルトとか果実をペーストにしたものとか)食べることが楽しいと感じられるようにしてあげたかったのです。そこからいずれ、赤ちゃん用の離乳食を試してみたり、おかゆをあげてみたり、色々試しながら、食べることを習慣化していくようにしていきました。

それまで、嚥下食【えんげしょく】という言葉を聞いたことがありませんでした。介護食というと何となく高齢者が噛むことや飲み込むことが難しくなり、食事を細かく刻んだり、軟らかく煮たりして食べている印象です。
まあそんなことなのかもと思っていました。
嚥下食とは、飲み込みや咀嚼といった嚥下機能の低下がみられる場合に、嚥下機能のレベルに合わせて、飲み込みやすいように形態やとろみ、食塊のまとまりやすさなどを調整した食事のことだそうです。そして、段階があるようです。
1、ペースト状
2、つぶつぶ状
3、刻み状
4、普通
息子の学校ではこんな感じで給食を分けて生徒一人ひとりに合わせてカスタマイズしてくれます。息子の給食は1の食材もあれば、2の食材もあり、その時その時に応じて担任の先生が食べられそうなおかずをピックアップしてくれているそうです。(ありがたい~~~)
家では、おかゆを1合炊いて、小さなパックにだいたい20~30個くらいに小分けして冷凍します。おかずは大人が食べるおかずでやわらかめのものをミキサーにしたり、ベビーフードの離乳食12か月のものを買ってきて、それをペーストになるまでミキサーにしたり、介護食用のおかずを買ってみたり、
毎日、色々試しています。
例えば、りんごでも、すりおろし器ですり下ろすのと、ミキサーにかけるのとでも食感は変わるし、肉や魚も煮たり焼いたりしてあれば、意外とミキサーで潰しやすかったりと、、、研究している気分で楽しいです。

息子も少しずつ意思表示するようになり、段々と、好き嫌いがはっきりしてきて、嫌いなものは口に運んでも、全然飲み込もうとしないし、好きなものはどんどん食べるし、舌が肥えているのか?!コンビニで買ってきたスープや、脂っこいものは食べようとしないし、逆にお婆ちゃんが作ってくれる煮物や豆のつぶしたものなんかは食べたりして、、、

息子の好きなものを見つけることが私の役目です。意思表示ができない分、生きている間にどれだけ好きなものを提供できるか分かりません。ですので、できるだけチャンスを逃さないようにしようと思います。
食事もその一つ。口から食べられることで、風邪をひきにくくなったり、体の成長も良く、何より、本人にとって、食べることとは、訓練で、毎日大変なことだとは思いますが、それでも、もし災害があれば、医療物品がすぐに届くとは限りません。本来、栄養剤を胃ろうから入れることで、口から食べなくても体は成長できるのですが、少しでも口から食べられるだけで、困難の乗り切り方は違うと思っています。そして、旅行や外食をした時にその土地のものを食べられる喜びや、家では出せない味を楽しむことができるようになったらきっと、息子の世界もまた少し広がるのでは、、、と思うのです。

手術をしたことで、声を出すことはできなくなりましたが、生活が以前より充実したものになりました。親として「手術したことで、良かった」という思いにさせてもらえて良かったと思っています。これが後悔する結果となっていたら、、、それは辛いことだと思います。でもそういう思いを持っている親御さんもいることは確かです。障がい児に限らず、どの親も子供の一生を考え、何かを決断をしなければならないという場面があると思います。その時に、何を一番に考えるか。それは、一番に子供の幸せを考えるはずです。だからきっと悩み苦しんで出した答えは間違いではないはずです。だから後悔せずに、子供と一緒にどうやったらこれから楽しい未来が作れるかを考えていけば良いのだと思います。

「運命とか立命とか宿命とか⑥」に続きます。


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