【創作】コインランドリー【ホラー】
※本投稿は普段のエッセイとは異なり、筆者の実体験を元に脚色を加えて書き記した投稿となります。ホラー、心霊表現など苦手な方はご注意ください。また、本作品読了後に生じたあらゆる事象、事件につきましても当方は一切の責任を負いません。予めご了承下さい。この度は本投稿を見つけて頂き有難う御座いました。
大したことじゃないんですけど、聞いて欲しくて。
一人暮らし始めたての頃です。
連日の雨で洗濯物が乾かなくって。近くのランドリーに行ったんですよ、でも皆考えることは同じで。笑
乾燥機は全部埋まってて、人が取り出すのを待つのも何だか気が引けて。近くのランドリーってスマホで調べたら、100mくらい離れたところにあるって出て、少し位歩いて行こうかなと。
で、着いたんですけど、今思えば外観から変だったかなあって。ほんと、今思えば程度ですけど。
コインランドリーって、夜でも明るいイメージありません?夜の散歩で、ここらへんちょっと怖いかもって思っても、ランドリー見つけるとあの看板の大きさと室内の明るさに安心するというか。
でも
そこはなんか違って。
一階は屋根付き、車一台置けるかな位のアスファルト、その奥にランドリーはありました。カラカラと横に引くタイプの引き戸のガラスに小さく 〇☓ランドリー って書いてあって。横には2階の、恐らく居住スペース?に繋がる階段があって。
あー、ここの経営者は二階で暮らして、一階をランドリーとして運営してるのかなって思いました。
あまりにもこじんまりしてたから、最初は間違えたと思いましたよ。でもランドリーって書いてあるし、中には乾燥機が4台あって、まあ入ってみるかって。
でもね、
1台も稼働していないんです。
この連日の雨、
他のランドリーは埋まってるのに1台もですよ。
まあ、こんな奥まったところで、大きな看板もないなら当然か~なんて思いながら、乾燥機に濡れた衣類を入れようとしたところで、机の上にボックスがあることに気付きました。
透明で小さめな衣装ケースで、側面には
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【お願い】
ご自由にお持ち帰りください
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と 手書きで。
覗くと中には絵本、タオル、子供服、ぬいぐるみとか、恐らく子供がもう使わなくなったあれこれが入っていました。捨てるよりは、という思いからの箱なのかなとほっこりして。
その中の一つ、茶色いくまのぬいぐるみは、目立った汚れもなく、肌触りも良くて、安物ではない高級感?みたいなものがあって。
特別可愛いものが好きというわけでは無いけれど、こんなに状態の良いぬいぐるみなら無料だし貰って帰っちゃってもいいかなって思ったんです。
でも、怖いのはここからなんですけど、
お尻の部分、尻尾の付け根辺りにタグ?みたいなのがついてたんです。メーカーの名前かなと思ってよく見てみたら
ありがとう。
ごめんなさいごめんなさい
って。小さな文字で。
何だか、気持ち悪くないですか?
私はすぐぬいぐるみを箱に戻して、
さっさと乾燥してこんなところ出よう と。
足元に置いていた洗濯かごに向き直って。
そうしたら、横目に外が見えるんです、
入り口がガラス戸だから。
そこにね、50代くらいかな。男性と女性が立ってるんです。ガラス戸の向こうから、にやにやしながらこっちを見ていた。ああ、ちゃんと思い出しちゃったな、気持ち悪いな。もう本当に、普通の人なんですよ。でもなんか、気持ち悪かったです。あのにやけた顔。
私もう心臓が止まりそうで。
そうしたら、男の口が動いて、
もらってくれますか、そうですか
って。ガラス越しに聞いたはずなのに耳元で言われてるような感覚になりました。ひっっ、とか、ひゅっっみたいな、声にならない声 が出たとおもいます、多分。
もう本当に気味が悪くなって怖かったけど、火事場のなんとやらっていうのかな、動かなきゃ!逃げなきゃ!って思って、濡れた洗濯物入れたままのカゴ 両手で抱えるように持って、そのランドリーを出ました。
二人組?
多分入り口付近にいたはずなんですけどね、追ってくる様子もなかったし、必死でしたから。もしかしたから幽霊だったのかも。笑
その後は、当初使う予定だったランドリーに戻って。したらちょうど一つだけ乾燥機が空いてたから、それ使って、家に帰りました。
あれからそのランドリー近くに意識的に行かなくなったし、引っ越した今、そのランドリーやぬいぐるみがどうなったのか、知る由もありません。
どうして今になって
この話をしようと思ったのか、ですか、
いやなんかね、最近姪っ子がくまのぬいぐるみを買ってもらったみたいで。あのとき見たぬいぐるみとは違うんですけどね。 でも、なんか思い出しちゃって。
いや、
はい、
そうですね。
やっぱりちゃんと話します。すみません。
最近、天気安定しなくて、よくランドリー行くんですけど。勿論そのいわくつきのところじゃないですよ。引っ越したし、行けるはずないので。普通に今住んでるところの近く。
乾燥一回30分くらい。
家に帰るにもどこか行くにも微妙な時間だから、ランドリー内とか、車内で暇潰しする様にしてて。
いるんです。
行く先々、私を見てる。
誰って、あいつらですよ。
あいつら。男と女。にやけ面の。
帰るとき、追いかけては来ないのに。
必ずガラス越しに私を見て、口を動かすんです。
そして耳元で必ず聞こえる。イヤホンしててもお構いなしに。
もらってくれますか、そうですか
って。
分かりますよ、妄想だって言いたいんでしょ。頭おかしいって言われても仕方ないですよ。でも居るんだもんしょうがないじゃんだって。
だっておかしいよ。そんなはずないのに。
姪っ子が持ってるくまのぬいぐるみ、最初は全然違ったはずなんです。白いくまだった。でもだんだん似てきてる気がします。本当になんか、ああ、もう、わかんない。私がおかしいのかあいつらのせいなのか。ぬいぐるみを触るのすら怖くて、だからタグのとことか見れてないんだけど、違うかなって、思い過ごしかなって思うことにしたの。したのに。だから見ないようにしてたのに。
この間ランドリー言ったらまたあいつらがいて。
またにやにやしてて、何だよって思って たら
女の声がしたんです。耳元で
貰ってくれましたね、
ありがとう、ごめんなさいごめんなさい
よくあるじゃないですか。考えた時点で負け、ってやつ。
お風呂場で髪を洗ってる時、〇〇と唱えてはいけません、考えた時点でおしまいです、みたいな。
だからね、"これ"は、考えた時点で負けなんですよ。
考えたらもうそこに居るんだ、そいつら。
幽霊の正体見たり枯れ尾花、ってあるでしょう?
それって、勘違いだったねって意味じゃなく、そのことを考えれば考えるほど、無関係なものが"そう"見えだして、何を見るにもそれを思い出さずにはいられない状態になるってことじゃないのかな。恐怖した時点で、囚われているんですよ。逃げられない。ぬいぐるみの受け取りとか、そんな創作じみた分かりやすい呪いじゃなくって。興味とか好奇心とか恐怖心とか、そういうのをもらってしまったら、もうだめで
あのくまのぬいぐるみに興味を持って、あの文字を見て、あいつらを怖がった時点で、私はもう駄目だった。
これ、どうしたらいいですかね。
誰か他に、私以外に恐怖してくれる人ができたら、逃れられるんじゃないかな。どうでしょう。だってほら、考えてないときは現れなかったし。
だからね、皆さんに 考えてほしかった。
いや、ごめんなさいね。騙すつもりとかじゃなかったんだけど、沢山の人に見て欲しいって思ったんです。ホラーとか創作とかみんな好きでしょう?こういう所でみんなに見てもらって、そうしたら興味を持った人が、ある時ランドリーにいって、この話を思い出しますよね。そうして、あいつらに気に入ってもらえたら、わたしはもうお役御免ですよね。だって代わりができたから私のとこには来ないはずだし。どうしよう、
ごめんなさい、代わりなんて、ふふ、最低ですよね、ははは。でも読んでくれて有難う。私より恐怖してくれたらわたしは大丈夫になりますから、あは。みんなランドリーいきますもんね。ランドリーにぬいぐるみはありますか?おもちゃでもいいし。なくてもいいです。買い物に行ったとき、子どもが抱えているぬいぐるみとかでもいい。全部全部、"そう"なれるのだから。あなたが考えてくれるおかげで。だからね、おねがいします。このお話を思い出しながら生活してください。たくさんおもいだして、みたものぜんぶ"そう"おもえるように。まずはランドリーにいきましょう。ぜひそうしてほしい。思いだしやすいから。ねえ、ほんと、助けてください。必ずこのはなしをおもいだしていってください。きっともうわすれられませんよ。わすれようとしてる時点で、ほら。無意しきでいい。もうこころのなかに恐れがある。だからだいじょうぶ。みんならんどりーいくでしょう?だってだって、ほら
もうすぐ梅雨がきますもんね。
最後まで読んでくれましたね。
ありがとう。
ごめんなさいごめんなさい
ーー。