感動を最大限に伝えたい厚岸・釧路の旅 3日目
3日目の朝がやってきた。前夜のように空腹やトイレで目覚めることはなく、ぐっすりと7時間眠った。
とっても優しい宿のお父さんお母さんに別れを告げ、同じく北口にあるニコニコレンタカーへ向かう。到着してみると、ここは出光石油のガソリンスタンドがレンタカー業務も行っている代理店方式なのだろう。
事前にアプリから予約をし、クレジットカード決済を済ませ、メールで説明を受けていたので、到着してからカギの受け渡し、すでに付いているキズの確認など、おおよそかかった時間は5分もなかったのではなかっただろうか。しかもガソリンスタンドなので、返却の際の給油も一緒に出来る。これほどまで時間のかからないレンタカーは経験したことがない。相棒は白のホンダフィットだ。
市街地を離れ港周辺を走る。沢山の水産加工施設が並ぶ。今回見学でお世話になる阿部商店に到着。私のような小さな居酒屋を営む者を受け入れてくれて、社長に感謝の意を伝える。
帽子、作業服、長靴をまとい見学スタートだ。社長自ら工場内を案内してくれ、まずは私が見たかったいくらの加工棟だ。時期的に残念ながら私の訪れたタイミングではいくらの加工はスタートしていなかったが、午後から少し入荷があり、稼働すると言うことだ。あと1、2週間遅く来ていたのなら本格的に見られたかも知れない。
筋子の状態からいくらへと、筋を取り除き選り分けるのは、人の手ではなく機械がやってくれるそうだ。その機械をガラス越しに見た後は、同じく鮭から筋子を含む内臓を取り出す機械。こちらも稼働していないが、そんなことまで機械が行えるとは驚きだ。
次に鮭の加工場。前年水揚げし冷凍してあった半身の鮭を切り身にして出荷するラインや、鮭とば(鮭のハラス)を乾燥させる機械。国産の鮭以外にも輸入したものもここでは加工している。
最後は大忙しのホタテ加工場だ。殻から身を外すのは、ずらっと並んだ人の手で。殻、内臓、貝柱とそれぞれベルトコンベアで分けられる。貝柱を洗浄し手作業で陳列させ、20分かけて急速冷凍させる。ゆっくりゆっくり動くベルトコンベアから出てきた貝柱からグレース(霜)を取り除く。ここからが見事だった。機械が一つ一つの貝柱の重量を瞬時に測り、大きさ別に選り分けていく。ものすごいスピードだ。中国需要が減った今だが、国内需要の増大や他の国への輸出で大忙しだと言う。
冷凍施設や冷凍保管後を見て回り、これにて工場見学は終了。私が仕込む自家製いくら醤油漬けに関する数々の疑問に答えて頂き、こんなに清々しい気持ちになるとは。あとは過去にない不漁となる今年の予想。生筋子が少しでも安く大量に入荷出来るのを祈るばかりだ。
阿部商店本社建屋から100メートル程離れたところにある直売所へ。
ここに併設の鮭番屋。海の幸てんこもりの各種丼や、好きな具材や焼き物を囲炉裏で炙って食べさせてくれる施設がある。私は小さなカップに盛られた石狩漬け(鮭といくら)、筋子、鮭ルイベ、いか明太の4種類をチョイスしてご飯と味噌汁をもらう。
おかずとしてご飯をパクパクしていくと、あっという間にご飯がなくなる。そこで小ライスをおかわりして、残った全てをご飯に乗せ、即席海鮮丼の完成だ。こういった楽しみ方が出来るのはとても魅力的だ。
釧路湿原を目指す。釧路湿原の周囲にはいくつかの展望台がある。阿部商店を訪れる前までの計画では午後に湿原の右側を中心にいくつか周り、戻ってこようと思っていた。しかし工場見学も朝食も順調にこなせ、約6時間を観光出来る事になったので、湿原を左側から時計回りにぐるっと一周回る計画に変更した。この計画変更が吉と出た。
まずは釧路市湿原展望台へ。
入場料がかかる展望台に登るより、より湿原近くまで歩いていける散策コースを選んだ。順路は反時計回りに回るコースだ。
しばらく密林を歩くと下り階段になっている。それもかなり長い。途中で「あれ?全然湿原に辿り着かないぞ!引き返そうか?これ、金比羅山よりも過酷なのではないか?!」とゆっくりゆっくり木製の階段を下る。
その階段が急なので脇にジグザグに進む緩い階段も併設されているが、遠回りが嫌いな私は真ん中を下る。ようやく下り切ると小さな吊橋があり、今度は登り階段が続く。「今降りてきたのにまた登るの?ってことは帰りは再びこんな感じで?」と息をハァハァ切らす。ようやく登りきり、少しなだらかな小路を行くと視界が開けてきた。
サテライト展望台。目の前に広がる釧路湿原。それはまさに別天地で、ここまでの道のりを歩いたご褒美だとも思った。ここまでやって来られて、この絶景を見られたことに喜びを感じ、暫し眺める。
THETAで撮影した360度写真は下記をタッチしてご覧下さい
すると小型のドローンを飛ばす方がいて、聞くと横浜市在住のユーチューバーだと言う。偶然の横浜市民同士の出会いにドローンで記念撮影をしてもらった。
「さてここから戻るにまたアップダウンが続くのかぁ。美しい景色を目に焼き付けたので頑張るか!」と歩き出す。
ん?行けども行けども階段が全く無い。あれ?車の音?とあっという間に駐車場に到着した。
つまりはこうだ。散策路を反時計回りに歩いた私。最初の3分の1は下り坂、次の3分の1は上り坂、釧路湿原の絶景を見下ろす展望台から3分の1は平坦な道。最初から時計回りに回ってたら良かったかな?いやいや、足腰に自信がない方なら平坦な道で行って平坦な道で帰ってこれる。私のように一周コースを望み、逆から回っていたら、絶景を見た後に地獄が待っていたのかと思う。頑張った先にご褒美がある方が嬉しいので、私の選んだ順路は正しかったと思った。
次に訪れたのは温根内ビジターセンター。
唯一湿原内に遊歩道がある場所だ。時間や体力に合わせ、小回り、中回り、大回りコースがある。オススメはやはり展望テラスまで行く大体60分の大回りコースだ。整備された木道を歩き始めて15分くらい。その辺りまでは背丈よりも高い木が多く、広大な大地を歩いている感じはしないが、ところどころ景色が開けてくると「あぁ、湿原を歩いているんだなぁ」と実感してくる。
9月初旬と言うことで湿原に咲く花々は本当に数が少ないが、緑の木や草たちが風に揺られて美しい。木立を抜け展望テラスに到着。目の前には果てしなく続くような湿原が広がる。釧路市湿原展望台からのサテライト展望台は見下ろす絶景。こちらは目の高さで湿原の広さを感じ取れ、どちらも感動ものだ。360度写真はこちら
ぐるっと回り、かつて馬車道として、小規模な鉄道賂として使われた木々の下の土の道は、かなり涼しく気持ちが良い。日向に於いてはとても暑く、かなり汗ばむ程だったので木陰はありがたい。
次の目的地は鶴見台。横浜市鶴見区から来た私にすると「鶴見」の文字に反応しまう。今はまだ越冬で飛来するタンチョウツルは来ていないとしても、やはりどんな場所なのか見ておきたい。
ビジターセンターでもらったパンフレットには、鶴見台の目の前にレストランがあると書いてあるので、ついでにそこで昼食を摂って次の展望台に向うことにとする。鶴見台はちょっとした広場と言う感じ。餌やりが行われ、沢山のタンチョウツルが飛来してくる様を想像してみる。
レストランに入ると店員さんから「ごめんなさい。これから団体さんのご予約が入っていてお食事の用意が出来ないのです」と。ここでの食事は諦めて店員さんに聞いてみる。野生で渡り鳥にならず定住しているタンチョウツルがいると言うが、どのあたりで見られるかと問う。するとここから北へ向かった鶴居村に行く途中の休耕地で見られるかも知れませんねと。
ここで食事を食べられないとすると、この先の展望台巡りの中で食事が出来る店はない。一旦鶴居村へ向かう。すると途中6羽のタンチョウツルに出会えた。家を出る時に迷ったのがカメラ。一眼レフ型のコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を持っていくべきか否か。スマホ、THETA。コンデジと3台を使い分けて撮影し、観光するのには荷物になると諦めた。しかしこのように野生動物との遭遇や素敵な夕焼けに出会うと後悔は大きい。
鶴居村役場目の前に見つけた「喫茶&焼肉さるるん」。そこに冷麺ののぼりを見つけ、入店を即決。暑い夏に冷麺は嬉しい。
早速入店して冷麺を注文する。店主は外へ出て営業中の看板をひっくり返す。午後1時半。ギリギリセーフで入店出来たようだ。そして冷麺が旨い。
隣のセイコーマートでここでしか買えないカップ麺やお菓子を買い込む。
来た道を鶴見台まで戻り、次のコッタロ湿原展望台を目指す。今回の旅で全く牛たちに会えていなかったが、やっと出会えた。競走馬を育てる農場の馬たちにも会えた。
コッタロ湿原展望台に到着すると、展望台へ向かう長い階段を降りてきた女性に、展望台からの眺めを伺う。ちょっと木が生い茂っていて、木の隙間から湿原を眺める感じですねと。私がスマホで撮影した釧路市湿原展望台のサテライト展望台からの眺めを見せると、「これに比べると・・・」と言葉を濁す。
ここは諦め、サルボ展望台へ向かうことにすると、ここからの道は未舗装であった。砂埃舞う砂利道をゆっくりゆっくり進む。スピードが出せない。いや出したら危ない。直線が多いのだが。
ちょっとしたカーブを切った先にの路上に現れたエゾ鹿。車を停める。こちらに気づき鹿は林へ。林の中にいる鹿の横に車を停めパシャリ。
湿原を流れる釧路川を楽しめるこの砂利道。車の乗り心地は悪いものの、自然の中を走られるこの道、良いなぁと思った。
砂利道と別れ舗装道舗、国道391号線に出た。見覚えのある交差点だ。と言うには3年前に厚岸から阿寒湖のホテルへ向かう時、カーナビが示した道はこの砂利道だったのだ。11月末、凍結を理由に閉鎖され、ここを通ることは出来ず、国道391号線を標茶町方面に北上せざるおえなかったのだが、閉鎖していてくれて助かったのだ。日も落ちて真っ暗な砂利道をガソリンの残量も気になりながら、鶴居村経由で阿寒湖へショートカットしていたと思うとゾッとした。
一旦車を停めて作戦を練り直す。サルボ展望台に登るか、前回真っ暗で見られなかったシラルトロ湖を望むかだ。すでに2時間以上ウォーキングしている身体には、展望台に登ることはキツイだろう。ここは諦めシラルトロ湖を眺めたあと、釧路市内へ戻ることに決めた。レンタカーの返却時間も気になるところだ。夏の日差しにキラキラ輝くシラルトロ湖。この豊かな水が釧路湿原を潤しているのだ。
本来なら工場見学後にシラルトロ湖、サルボ展望台、コッタロ湿原展望台と見て帰路へ。釧路市湿原展望台や温根内ビジターセンターでのウォーキングは予定になかったので、ここらを訪れる事が出来て嬉しい。しかも私にとってここ2箇所の絶景は、目に焼き付いたまま永遠に消えない思い出となるでだろう。釧路市まで戻る道のりでキタキツネにも会え、この上ないドライブとなったこと、つくづく自分は幸運の持ち主だと感じた。
レンタカー返却もガソリンスタンドの営業している店舗内なので、給油しながら傷の確認。サイン記入まであっという間に終了だ。
ここ釧路駅北口。ガソリンスタンドの斜め前に場外馬券場があった。丁度ばんえい競馬が開催されている。空港への高速バス乗車まで1時間あるので、ここは一勝負だ!
二階の発券所へ階段を登る。買い方やマークシートの記入を職員さんに聞きながら投票する。道産子(一般の競馬馬サラブレッドとは違い、足腰のしっかりとした体格が特徴)が、重いそりを引きながら傾斜のある障害を乗り越えゴールを目指す競馬だ。投票したのは帯広第4レース。4頭選んだ馬連のボックス買い。つまりは6通り600円だ。
画面に映し出されるレース。障害を乗り越えるために一旦止まり、息を整え勢いをつけて乗り越える姿に「行け〜〜〜!」と心の中で叫ぶ。
結果はハズレだ。でも私の旅は大当たり万馬券。一人旅でも沢山の方々との楽しい時間を過ごし、美味しい食べ物を食べまくり、最高のお天気恵まれ、そして全ての行程が見事にハマり、それは昇華した。
釧路駅から高速バスで釧路空港へ。送迎デッキで夕日の沈んた空を眺める。全ての行程が無事に終わった。あとは帰るのみだ。
飛行機が15分遅れとなったので急いで釧路ラーメン(醤油)をオーダー。釧路グルメの締めくくり。細麺で昆布出汁の効いたあっさりラーメンだ。
一路羽田空港へ。そして京急とバスに揺られ沢山の思い出とお土産を抱え無事に帰宅。
改めて思う。私は幸せ者だと。
出会えた方々、旅を支えてくれた家族。本当にありがとうございました。
旅の全編、写真と動画を合わせスライドショーを作成しました。
YouTubeに載せたリンクを貼りたいと思います。良かったらご覧下さい。
3日間分の長文をお読み頂きありがとうございました。