歩道橋と夜と約束
片側3車線の国道は夜なのに関係なく車がびゅんびゅん走っていて、夜の方が車はちょっと速く走っているように見える。
これ見よがしにエンジンを吹かす車がいれば、のっそのっそと走る長いトラックがいたり、ヘッドライトが黄色がかっていたり真白なLEDだったりする。
車が走るための道だから、自分の足で歩くには信号も横断歩道も少ない。
その分歩道橋が架かっていて、「徒歩の方はどうぞ交通の妨げにならないようにこちらをお通りください」といった具合に、鉄とコンクリートの塊がどんとある。
いっぱい歩いて、疲れて、視力1.5の私をもってしても横断歩道が見当たらなくて、でも目の前には歩道橋があって、ここを渡ればわりとすぐ家に帰れる。
頭で考えるより先に脚は歩道橋に向かっていたのに、階段を登る1歩手前でピタリと動けなくなった。
私は、歩道橋が、こわい。
気づいていなかったけど、どうやらそうらしい。
そういえば、もう何年もひとりで歩道橋を渡っていない。
渡っていない理由は、友人からの言いつけを守っているからで、大雑把に言えば、歩道橋を渡ると死んじゃいそうだから。
友人からの言いつけはこちらに。
意外だったことがふたつあって。
ひとつは、歩道橋を怖いと思ったこと。
最近ちょっと元気だから、もう大丈夫だと思ってた。
もうひとつは、ちゃんと死ぬのが怖いと思ったこと。
別に死にたいと思うこともないんだけど、強く生きたいと日々思ってるわけでもなくて、それなのに怖かった。
多分それは、この歳でもまだ友達と旅行に行けてそれがすごく楽しかったり、好きなアイドルのライブを観て元気が湧いてきたり、そういう日がちゃんとあって、またそういう日が来たら嬉しくて、それが何ヶ月後か何年後か分からないけど、きっと来ると思えているから。
好きな人との約束はちゃんと守りたいから、またねって言ったら、また会いたいからね。
次にエッセイを書くときに自分が楽しいか苦しいか分からないけど、これで終わるのもちょっと勿体無いから、だから、最後まで読んでくれたあなたとは、またね。