起き抜けにミルクティーを
深夜に目が覚めてしまう。一晩中熟睡できたことは、もうしばらくない。
最近変わったことと言えば、深夜に目を覚ますことから、早朝に目を覚ますようになったこと。
それは絶対的な時間軸で目を覚ます時間帯が変わったのではなく、陽が昇るのが早くなったから。
平日に目を覚まして、外が薄明るいのは少しガッカリするけど、土日の早朝に目が覚めるのは嫌いではない。
おはよう世界。この空気を独り占め。
甘くないミルクティーをグラスに注ぐ。加熱式タバコに電源をつけ、一息つく。
このまま起きておくことも、また眠りにつくことも、体の思うままに。この文章を綴ることもまた然り。
私の住む部屋は、マンションの1階の角部屋。エントランスと呼ぶには簡易的すぎる入口を抜けた、一番奥の部屋。
私の部屋の隣の隣の戸には、玄関用虫コナーズが掛けられている。また、通気口には網戸が貼られている。
おそらく、とても虫の侵入を嫌がる人が住んでいるのだろう。考えるでもなく、そう思っていた。
昨晩、エントランスを抜け自分の部屋に向かうと同時に、その玄関が開いた。
住人は私よりおそらく少し歳下の女性だった。ゴキジェットを右手に、とてもとても小さな虫を玄関から外へ追い出していた。
あまりに想像通りな姿に、少し嬉しくなった。
ただ一瞬だけ、「部屋に虫がいて、助けてくれませんか?」なんて声をかけられる、漫画の世界観を期待した自分が恥ずかしかった。
彼女はおそらく今、眠りについている。彼女だけではない。日本で同じ時間を過ごしている大半の人がそうである。
反対に、この時間に誰かの為に働いている人には最大限の敬意を。私の明日のパンが当たり前にあるのは、あなたの運送のおかげ。私が飲むミルクティーがこの時間でも当たり前に冷えているのは、あなたの発電のおかげ。ありがとうございます。
誰の為にもならないこんな文章を書いていたら、朝は更に朝になっていた。
"今日は明日昨日になる"なんて尾崎世界観は言ったけど、今まさに今日が昨日になり、明日が今日になっている。
これを読んだあなたは、今日にいますか?
今日が明日か、昨日かなんて悩まない健やかな時間に読んでいてくれたら嬉しい。だってそれが健康なのだから。
でも、もしこんな悩ましい時間にこの文章に辿り着いた人がいたなら、それもまた嬉しい。あなたの存在が、私を独りではないと肯定してくれるから。
読んでくれてありがとう。あなたに何も産まないこの文章を。さあ、スマホの画面を閉じて、外を歩いて。もしくは、目を閉じて横になって。
それが何より嬉しいことだから。