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出産経験を未来につなぐ

2024年8月、私たちは、全国各地の「出産環境を考える女性たちのグループ」の共同で、出産経験のアンケート調査をしました。
ここnoteでは、アンケートの自由記述欄に記入されていた言葉を、
分野別にゆるりとわけて掲載しています。 

(11/7現在、8月中記入された3940件のうち90%掲載完了、9~10月記入の204件分は未掲載で、これからです。)

■産む場所をみつける~出産場所について@15本 https://note.com/osanwomamorou/m/m13b1c60d4c8d

■帝王切開について @20本 https://note.com/osanwomamorou/m/mf77615940880

■妊婦健診について思うこと @24本https://note.com/osanwomamorou/m/m08867f1c856c

■陣痛促進剤をつかいましたか @11本 https://note.com/osanwomamorou/m/mcf5e761ea208

■誘発分娩をしましたか?@ 11本 https://note.com/osanwomamorou/m/mbef96c1c70f5

■保険適用化と無償化についての意見 @15本https://note.com/osanwomamorou/m/m4e4c9b35e941

■お産から得たこと/よかったこと/いやだったこと@ 21本https://note.com/osanwomamorou/m/m1fe9162594cd


長文で読むのも大変と思いますが、
あえて、一人一人の気持ちを、ありのままに掲載しています。
たとえそれが、身体的な事情、医療的判断、人手不足の事情、情報や説明不足で誤解があったとしても、女性がその時「そう感じていた」ということは事実です。

出産における「快・不快」を望むことは、わがままなことではありません。
そして、出産の在り方を決めるのは、医療者ではなく、本人です。
意思をおし殺したり、何もわからないまま流されたり、他力本願でいることと、医療者を「信頼してゆだねる」ことは別物です。
産む人の主体性と意思決定は、どう取り戻したらいいでしょうか。

■大人たちの課題

また、医師不足、助産師不足、技術不足、ジェンダーの問題、経営難、出産準備教育の不足、続々と産科閉鎖による産院・助産院の不足、医療連携、子育て支援者との連携、女性の不健康や体力の低下、他にも課題はさまざまあります。地域の問題もあります。
(*アンケート回答者の在住地名はあえて記載していません。)

出産環境の整えは大人たちの責任です。
黙っていることは、誰のためにもなりません。
各地・各所で話し合いが急務です。

■親になるのは怖い。そして希望。

出産の経験は何年経っても薄らぐことのない、特別な営みです。
身体的な痛みと疲労は、徐々に薄らぎ癒えることはあっても、不快感・不信感・惨めさ・孤独、心の傷は長いこと母親の奥底を苦しめていきます。
一方、自己決定ができるよう教えられ、寄り添われ、助けられ、安心感の中で出産できた女性は、人生に応用する根をもつことになります。

どんな出産も、起きたことを受け入れて、
泣きながら咀嚼しながら手をかけながら親になっていくしかありません。
すべての出来事は、親も子も人生の学びかもしれません。
それでも、「生き辛い」「愛し辛い」は、少ない方が絶対にいいはずです。
女たちの疲労は、社会の疲労につながります。
人として尊重され、生命力を無駄に削られることなく、愛が自然とわきたつような出産環境をつくることが、今、急ぐべきことです。

■経験を未来につなぐ

これは、女性たちから未来へ贈るメッセージです。
ここに思いを提供した女性たちが何を感じて、親としてのスタートラインに立ったのかをぜひ読んでください。
忘れてはいけないのは、出産とは「その人」のものです。
そして、逝く赤ちゃんにも、生まれくる赤ちゃんにも、
声なき声に心で耳をかたむける大人でありたいものです。
これから出産するかもしれない人たちと、未来の周産期医療を担う医学生・助産師看護師保健師の学生さんにも、参考となりますように。

▪️今後も女性たちの声を集めたい。

ここでは、今後も、ケースライブラリーとして形を変えつつ、女性たちの声をお届けしていきます。
いずれ、中絶、流産、死産、不妊治療、出生前診断、しょうがい、プライベート出産などのテーマも、第二段階で考えていきたいと思います。ご協力をよろしくお願いします。
(齋藤麻紀子) 

■アンケート集計データは、提言書と共にこちらに掲載しています。
https://sanka-teigen2024.hp.peraichi.com/

■アンケートは引き続き回答募集しています。
https://forms.gle/2BPqALZJ39y3i8cd7
forms.gle



アンケート記述の分類・掲載の
作業をしたメンバーより
「皆さんの言葉に触れて感じたこと」



■お産は社会にとって迷惑行為なのか?
三浦真奈美

分類と文字校正の担当をしました。
読んでいて感情を揺さぶられる場面が何度もありました。
自分の辛かった経験を追体験したり、知らない現実を知って怒りとやるせなさで涙が止まりませんでした。
なぜ、命を育むことがこんなにも雑に扱われるのだろう。
お産は社会にとって迷惑行為なのか?
一方で、助産院などで人生が変わるくらい至福の経験をしている人たちもいる。喜びにあふれた言葉を読めば読むほど、私ももう一度今度こそ愛に包まれた中で、出産を経験してみたいと思う自分がいました。
この差は何なのか。
お産に関わる人たちの、妊産婦や赤ちゃんへのまなざしが、温度感がまるで違う。 家族、助産師、医師などそのお産に関わる人皆から愛をもって接してもらったお母さんは、その愛を産まれてくる赤ちゃんへ自然に引き継げるのでしょう。だから、育児で何があってもしっかり自分の足で立てるのだと。 うらやましいと心底思います。
なぜ私は「理想のお産」を目指さなかったのか!
ぼーっとしてんじゃねェヨ!と過去の自分に言いたい。
だからこそ、これからお産を経験するだろう女性だけでなく、全ての人たちに「理想のお産」とは何かを考える機会を義務教育から初めてほしいと思います。
「産まれてきた」全ての人は全員「お産」に関わっているわけで、妊産婦だけでなく、実際その時お産に関わっていなくても、想いを寄せることはできるはず。そういう想いが社会を構成する基礎になってほしい。
自分は経験できなかったけど、せめて次の世代のために役に立ちたいという思いで、アンケート集計に少しだけですが関わらせてもらえました。
声をかけてくださったことに感謝します!たくさんの人がこの声に耳を傾けてくれますように。

■お産はわたしたちの始まりであり、関係性のはじまりです。
山本ちかこ

「お産から得たこと」の自由記述分類を担当しました。どれひとつとして同じがないお産体験を通して、大波に揉まれ続けるような感情の渦を体験させていただきました。そして、泣いた。
これほどに肯定された体験はない、こんなに大切にしてもらった、
それがその後の人生においても支えになっている、
子育ての指針になっている。この体験を今度は私がお返ししていきたい、
ただ嬉しかったを越えた体験がたくさんありました。
その一方で、ぞんざいに扱われたり、無機質な対応に、とても悲しい気持ちになったこと、それが未だ何年経っても残っている、との体験が、嬉しかったことの中に少なくありませんでした。
お産は、いのちが、いのちをかけて、いのちをうむこと、うまれてくること。
私たちのはじまりであり、関係性のはじまりです。
あたたかく、大事に、大切に、安心の中で迎えられること。
どんな場所で、方法で、結果どんなお産となっても、これを感じられるプロセスがあることが、最も重要なことと改めて感じました。
女性にとって、よりよいお産は、“いい思い出になるような体験”という話では全くありません。
人間らしく扱われ、そこにあたたかな寄り添いがあり、本来持つチカラが湧いてくるようなお産を私は望みます。そのために必要なことはもちろん、不要なことも、このたくさん寄せてくださった声が教えてくれています。
声を寄せてくださった方に感謝します。
自分と同じような体験、自分とは全く違うと感じられる体験、本当にこんなことが?という驚くような体験、貴重なひとりひとりの声を、ボリュームはありますが、社会をつくる全ての方に受け取り感じて欲しいです。
私は今いまから、繋いでいきたい未来をつくっていきます。

■お産で、成熟した市民・シチズンシップが醸成されていくのを感じました。
上村聡美

「出産費用無償化」の分類を担当した上村です。今回のアンケートには、ご自身のお産を振り返るたくさんの生きた言葉が届きました。
これから産む女性に、寄り添いのある、いいお産を体験してほしいという気持ち、寄り添いのお産は次世代に残すべき宝だ、という女性たちの熱い思いを感じました。
お産という人生最大のチャレンジを丁寧に支えてもらった女性は、子育てへの前向きな姿勢と、支え合おうという共助の精神を強く呼び起こされています。
お産という一大プロジェクトを通じて、親も生まれ直します。
心身に目を向け健康は自ら守り、子どもや社会のために自分ができることを考える。お産で、成熟した市民・シチズンシップが醸成されていくのを感じました。
人口減少期であるからこそ、ひとつひとつのお産を大事にしてほしい。
充実したお産は、思いやりのある子育てにつながり、それがこの国の次世代を形作ります。
他者を尊重するマインドは、自身の意思が尊重されてこそ。女性たちが納得のいくお産ができるよう、丁寧な継続ケアが広く実現しますように。ひとりでも多く、女性たちの声を知っていただきたいです。

■「安心して産む」から「安産」になるのです。
佐治愛

「出産経験を未来につなぐアンケート」の広報と、「出産場所について」の自由記述を担当しました。
自分自身が出産場所の選択で困った場面が度々あったため、この部分を担当させてもらいました。「お腹に宿った命を安心して育み産み出したい」母となる女性の願いはこの一点につきます。
そう、「安心して産む」から「安産」になるのです。
安産のためなら、自分自身の食事や運動に気をつけて暮らしていく覚悟はあります。
しかしながら「出産場所」の問題は、妊婦一人の努力でどうにもならない問題です。
自分の住んでいる地域に分娩施設がない、産める場所を見つけても家族の理解が得られない、 持病があって受け入れてもらえなかった・・・など。
一方で「たまたま近所の産める場所ということで見つけた助産院で、とことん寄り添ってもらえて安心して産めて幸せだった」という声もありました。 同じ時代に同じ国に住んでいるのに、辛い出産を経験をする人と、幸せな出産を経験をする人がいる。 それっておかしいです。
辛いが幸せになるためには、妊娠出産の当事者と産科医療に携わる人以外の「家族や地域の人の理解と協力」が必要です。
私自身がもう出産することはありませんが、自分の娘たちを含めて後に続く女性たちがひたすら「幸せな出産」ができる社会にするために。
引き続き周囲を巻き込みつつ楽しく動いていきます!
その動きの一つとして「お産音頭」を創りました。ぜひご視聴ください。https://youtu.be/1VMZoRxsNak?si=uIDoAHBkxtnCXjwP


■さみしかったね。大丈夫。ここから先、いくらでも挽回できるよ!
細田恭子

子育てを30年以上続けています。
その始まりは緊急帝王切開で出産した「あの日」でした。
最初の赤ちゃんの匂い、最初の声、最初の抱っこ、
・・何も覚えていません。
今回のアンケートで帝王切開で出産した女性の声を担当し、あの日の自分が何度も重なりました。
そして皆さんの言葉にこんな声をかけていました。
「さみしかったね。大丈夫。ここから先、いくらでも挽回できるよ!」
確かにあの日できなかった匂いも声も抱っこも、無事に出産できたらそのあと得ることはできます。 でも、そこには小さな小さな寂しさや無力感が存在したままなのです。
親になる最初の日に、誰かがそばにいてひとりでがんばらなくていいことを知り、 我が子に「可愛いね」と言ってくれた声で、可愛いが増えていく。 「いいうんちが出たね」と言ってもらえて、排泄物も愛おしくなる。
病院、助産院、自宅・・産むところはいろいろあって、そこにいる人もいろいろだけれど、間違いなく「始まりを一緒に迎えてくれた人」なのです。
その人たちの存在が、30年後も心に体に残ります。
命を産む側も他人任せではなく、自分事として学ばなくてはいけないし伝える言葉を持たなくてはいけない。
そうして双方がチームとして新しい命を迎えられたら、同じ帝王切開でも「温かいあの日」になるんだと、皆さんの声からあらためて気づくことができました。 声を届けてくださってありがとうございました。

■お産に良き思いを持ってくれるとホッとする。
小川たまみ

いろんな場所でそれぞれのお産があり、かつての経験を思い起して、たくさんの女性が経験をシェアしてくれた事が素晴らしい。
お産に良き思いを持ってくれるとホッとする。
2度と産まない、と思う人ももちろんいる。
妊婦さんがどこにいて何をしていても、その人に合ったサポートが得られたり、本当に必要なものを選んだり、無いなら作り出せたりするような環境を作っていきたいと思った。
お産を良くするには、社会全体で、妊娠や、出産が、良き経験であり、それが当たり前で普通になっていく必要があると感じる。

■自分にできること?無力感・・・いろいろ考えてしまうなー
久山敦子

わたしはお産とお母さんと赤ちゃんが大好きです。
お産とその周辺に携わる者として、お母さんと赤ちゃんが大切にされて、
お産が幸せだと感じられるように、仲間とがんばりたいと思います。

■皆様が得た嬉しい経験、悲しい経験から、たくさん学ぶことができました。
田平楓

「促進剤の使用」「産む場所」「ポジティブ出産経験」のグループの分類に関わらせていただきました、田平です。
私自身、まだ助産師6年目です。アンケートを分類する過程で、私はこれまで助産師として女性の声を聞いて背中を押してあげることができていたのだろうか、と頭の中をぐるぐる、心をドキドキとさせるご意見がたくさんありました。
私自身、臨床で経験する悔しい出来事(女性の知識不足、医療者の発言や施設による縛り等)もたくさんの女性が代弁してくださり、あるある、、、悲しいよね、、、悔しいな、と共感の嵐でした。
逆に、愛を受けてお産を経験できた方々のご意見からは私だけでなく他の方々の気持ちも温かくしてくれたのではないでしょうか。常に安全を優先してきたことは、世界に誇れる周産期死亡率の低さを導いてはいますが、女性の人権がおざなりにされている部分も感じます。
女性が自分のお産を選んで、納得してケアを受けられるように医療者と対等にいられるようにとまずは自分とまわりから変えていきたいなと思いました。同時に、こんなにもたくさんの女性が気持ちを伝えてくれたことに感謝です。皆様が得た嬉しい経験、悲しい経験から、たくさん学ぶことができました。ありがとうございます。


■この声に学び続けていくことで これからのお産のケアはきっともっと良くなると信じたいです。
福澤利江子

夏のお産の合宿の結果、アンケートをすることになったとお聞きし、 良い調査になるようにと微力ながらお手伝いさせていただきました。
日本で出産ケアの質についてのこんな大規模調査は初めてではと思います。 全国のお母さんたちのネットワークが発動して たったの半月で4000件の声が集まり、本当にびっくりしました。
その膨大な量の自由回答のすべてが丁寧に読まれ、 わかりやすく整理して公表されたことも本当にすごかったです。
データ分析はまだ始まったばかりですが、 コロナ禍の前後での出産立ち会い率の推移や、 出産直後の気持ちに影響する要因など、 やはり!と思う結果も、なぜ?と思う意外な結果もあります。
この声に学び続けていくことで これからのお産のケアはきっともっと良くなると信じたいです。 産む人と、すべての支援者が、同じ方向を見て 「もっと産みたい」と思える社会を作りたい、という一心で実現した、 今回の奇跡のような活動の成果が、 大切に受け入れられ活用されることを心から願っています。








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