「お産が変われば世界が変わる」
私は産婦人科医です。医学生の時に愛知県の吉村医院に見学に行き、その時に見せていただいたお産に感動して、「こんなお産に関わりたい!」と産婦人科医を目指しました。自然なお産に憧れ、自分の出産のときも当然のように自宅分娩を選びました。
(あつみようこ)
日常の延長にお産がある風景
私には4人子どもがいますが、上の子3人は自宅分娩。陣痛が始まったときも、助産師さんに自宅に来てもらえたので、家族と離れることもなく、日常の延長にお産がある風景はとても素敵でした。
2人目と3人目は、一番上のお姉ちゃんが臍の緒を切ってくれました。産後も助産師さんが家に来てくれるので、パジャマのままで赤ちゃんと家で待っていることができてとてもありがたかったです。
自宅出産からの、初めての分娩台
4人目を妊娠した時、どこでお産をしようか迷いましたが、産婦人科医として一度は分娩台を経験してみたいと思い、自分の働いていた病院での出産を選びました。
37週で羊水が少なく誘導分娩になり、生まれた子どもは小さくてGCUへ入院。医療にお世話になりっぱなしの分娩・産後でしたが、私が尊敬している大好きな助産師さんにお産を取り上げてもらい、人生初の入院、初めての分娩台の体験ができたので満足しています。ただ、モニターにしばられ、ベッドからほとんど動けない2日間は精神的にとてもきつかったです。
幸せなお産かどうかを決めるのは自分の心の持ちよう
自宅分娩と病院での出産を両方経験してみて、お産にはいいも悪いもなく、お産の良しあし、幸せなお産かどうかを決めるのは自分の心の持ちようだと思いました。
以前は自然分娩にこだわりすぎていた傾向がありましたが、今では誘導分娩であっても、帝王切開であっても、ご本人とご家族が納得し、赤ちゃんが元気であればそれは全て幸せなお産なのだと思っています。ただ、不必要な医療介入はしたくないという気持ちは今も変わりません。
私は、お産は究極の予防医療だと思っていて、妊娠中の過ごし方と心の持ちよう次第でお産がスムーズにいくかどうかがほとんど決まると信じています。
妊娠・出産は奇跡的で神秘的な現象
今、私が勤めているクリニックでは、無痛分娩希望の方がたくさんいます。心臓疾患の方やパニック障害の方など、医学的に必要な方は無痛分娩によって大きな恩恵を得ることは間違いありません。ただ、やみくもにお産の痛みを「辛いもの、怖いもの、できれば避けたいもの」と感じて、無痛分娩を選択することはとても残念だと思っています。
妊娠・出産は奇跡的で神秘的な現象で、太古の昔から女性のみが持つ、素晴らしい能力です。自分にも必ず備わっているその力を十分に発揮し、妊娠・出産を通してさらに素晴らしい女性へと進化する。そんなお産のお手伝いをしたいと思っていますし、そんなお産をもっともっと広めていきたいと心から思っています。
そのためにできることを日々模索中ではありますが、故吉村正先生がおっしゃっていた「お産が変われば世界が変わる」という言葉を胸に、目の前のことからコツコツと、お産から世界を変えるために一歩ずつ進んでいきたいと思います。
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