落語の三題噺の小説版を友人と遊びました。 【ルール】 ☆三つ単語のお題を出して小説を書く ☆私から一題、友人から一題、適当な本を目隠しパラパラ指差しで一題 ☆三題はちょい出しでもガッツリ主軸でも可 ☆ジャンルはフィクションのみ、ノンフィクションは不可。フィクションであるならミステリーでも純文学でも何でも問わず。
共同作品
落語の三題噺の小説版を友人と遊びました。 【ルール】 ☆三つ単語のお題を出して小説を書く ☆私から一題、友人から一題、適当な本を目隠しパラパラ指差しで一題 ☆三題はちょい出しでもガッツリ主軸でも可 ☆ジャンルはフィクションのみ、ノンフィクションは不可。フィクションであるならミステリーでも純文学でも可。 ☆制限時間:約一日 古びた鍵は少し錆びついていて、鍵穴に差し込むのにも回すのにも工夫が必要だった。数分の格闘の末、ガチャリと音がして扉が開いた頃には圭は少し汗ばんでいたくら
落語の三題噺の小説版を友人と遊びました。 【ルール】 ☆三つ単語のお題を出して小説を書く ☆私から一題、友人から一題、適当な本を目隠しパラパラ指差しで一題 ☆三題はちょい出しでもガッツリ主軸でも可 ☆ジャンルはフィクションのみ、ノンフィクションは不可。フィクションであるならミステリーでも純文学でも可。 ☆制限時間:一週間 マナは自分の名前が嫌いだった。『愛』と書くからである。 マナの母親はシングルマザーであった。父親はわからない。「あの頃はすっごくモテてたから」と宣い、
落語の三題噺の小説版を友人と遊びました。 【ルール】 ☆三つ単語のお題を出して小説を書く ☆私から一題、友人から一題、適当な本を目隠しパラパラ指差しで一題 ☆三題はちょい出しでもガッツリ主軸でも可 ☆ジャンルはフィクションのみ、ノンフィクションは不可。フィクションであるならミステリーでも純文学でも可。 ☆制限時間6時間 前島が郵便祭について覚えている一番古い記憶は、小学校にも上がる前の幼い時分に祖父と手を繋いで書簡供養に初めて参加した時のものである。 前島が住む街は郵便
落語の三題噺の小説版を友人と遊びました。 【ルール】 ☆三つ単語のお題を出して小説を書く ☆私から一題、友人から一題、適当な本を目隠しパラパラ指差しで一題 ☆三題はちょい出しでもガッツリ主軸でも可 ☆ジャンルはフィクションのみ、ノンフィクションは不可。フィクションであるならミステリーでも純文学でも可。 ☆制限時間6時間 雨の音がしている。雨音がうるさいくせに世界がいつもより静寂に感じる。矛盾している。雨雲で日が差さないせいで部屋が薄暗い。うるさくて、静かで、暗いのに、何
あの日、曾祖母のお見舞いに行って、写真を撮った。まだ買ったばかりと言ってもいいほどの時間しか一緒にいなかったカメラを持って。あの頃はまだ、何故撮るのかとか、どう撮りたいのかとか、そういうことを気にせずにただなんとなくシャッターを切っていた。 私の実家はその頃、祖父母と祖父の母である曾祖母の三人で暮らしていた。私は高校卒業と同時に家を出て、そのまま就職して一人暮らしをしている。私の母もその家に住んでいたが、私が家を出た後に再婚し、やはり家を出て再婚相手と暮らしていた。
浜の砂は踏みしめるとキュッキュッと不思議な音がした。アキは首にかけたお守り袋を弄びながら浜辺を歩んでいた。海は青にほんの少し緑を混ぜたような色で透き通っている。砂浜も白く輝くようだ。アキがこの間まで住んでいたところも海岸が近くてこうして遊べる浜があったけれど、この浜の方がずっと綺麗だった。しかしアキは音を立てて砂の上を歩きながらずっと浮かない顔をしていた。 先日この街に引っ越してきたばかりで、アキにはまだ一緒に遊ぶ友達もいない。浜で遊ぶときはコトちゃんといつも一緒だったか
Twitterに投稿した140字小説のまとめ投稿です。 『救援要請』 「しっかりしてるとか、大人びてるとか、そういうふうに言われるのが嫌だ。そうしないと生きられなくてなったのだから、なりたくてなったわけじゃない」 彼女は助けて欲しいときにひとりぼっちでいた子供時代を送ってきたのだろうか。 「僕は今、君に何をしてあげられる?」 彼女は泣き出した。 『再会』 久しぶりに会った君は、昔とは違う表情をしている。僕も、君と合わなかった間に過ごした時間のせいで、あの頃のようには笑
Twitterに投稿していた140字小説のまとめ投稿です。 『竹の音』 風が木々を揺らして、梢が鳴る。その合間に竹の打ち合う高い音が聞こえてこないかと無意識に探してしまう。林の中で裏手に竹林がある家に生まれたからそれが子守唄だったのだ。 雑踏の中、君が語ったそんな話を思い出している。人々の話す幾千の言葉の中に君の声を探しながら。 『写真撮影』 シャッターを押す。レンズ越しの風景が時間から切り離されて四角く残る。風景を見て感じた、懐かしい、美しい、寂しい、安堵、不安、会
【看護記録】****年**月**日 病日2日目 記載者:〇〇 (翻訳機使用しての会話にて) 「僕は囚人なんかじゃなかったんだね。昨日の看護師に謝りたい」 彼の母国語で挨拶すると驚いたような顔の後、嬉しそうに笑った。翻訳機を使用して発音が間違ってなかったか尋ねると「惜しい」とのこと。正しい発音を教えてもらう。少し肩の力が抜けて安心できた様子。会話の中で当看護師と患者が同じ歳である話題になる。検温や検査のときは看護師と患者という立場であるが、こうして雑談するときには異国の同じ歳の
夜の寮内は静かだった。昼間のように誰かが歩き回る音や誰かが料理している音、姦しく響くお喋りの声は聞こえない。だが、みんなが寝静まっているという静寂ではなかった。耳を澄ますと、紙の擦る音や音量を落とした音楽、備え付けの古い椅子が小さく軋む音が漏れ聞こえて来る。 看護学校はこの時期、どの学年も忙しかった。一年生は学年末のテストが頻回にあり、二年生は臨床実習の期間、三年生は国家試験を間近に控えている。寮内のほとんどの生徒が夜中まで試験勉強や実習記録のために起きていた。昼間は寮生同士
青白い小さな光が瞬いている。顔の横に置いていた折り畳み式の携帯電話が着信を知らせている。着信音やバイブレーションは鳴らない。万が一にもそれで眠っている父親を起こそうものなら携帯電話は壊され、アオイ自身も殴られるだろうことは想像に難くなかった。だからいつも携帯電話は家ではマナーモードのままだった。 父親は隣の居間で眠っているようだった。テレビの音といびきが聞こえる。また酒を飲んでそのままテレビもつけっぱなしに眠ってしまったらしい。居間とは襖で隔たれてはいたが、アオイは携帯電話を
そのクジラの声は”透明”でした。 クジラは歌を歌う生きものです。彼らは自分の感情を歌にして伝え合います。 母から子へ、兄から弟へ、友へ、愛する者へ。彼らは大切な感情を美しい旋律にして表現しました。 ある年に、一頭のクジラの子が生まれました。母クジラは子の誕生を喜んで、歌を歌いました。子守歌です。子クジラは、自分のために歌われる歌に喜び、嬉しそうな様子で声を出すしぐさをしましたが、母クジラにその声は聞こえませんでした。他の仲間のクジラにも聞こえません。子クジラは「おか
懐かしい少女が立っていた。ずっと会いたかった少女だった。二度と会えないと分かっていても、それでも願ってしまっていた。心の奥底で、ずっと。もう一度会いたいと。 これまで何度も嗅いだ匂いだ。この匂いによかった思い出は、今まで一つもなかった。いつも、涙と、後悔と、悲しみを運んでくる。それでも、今回ばかりは少しだけ待ち望んでいたような気がする。悲しくて寂しい思いももちろんあるが、会えるような気がするのである。 だって、こんなにも、会いたいと思っているのだから。 ノックの音が