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モノにエンターテインメントとは何か
今日は、金型屋の息子が目指す『モノにエンターテインメントを』とは何か?という自分自身の話をします。(※投稿しようと思ってだいぶ時間が経ってしまったため若干時系列がおかしい部分がありますが内容として間違いではないためご了承ください🙇♂️)
はじめに
内容に入る前に、自分が経営しているMGNETという会社では以下のような理念を掲げています。
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そもそもなぜこの「エンターテインメント」という言葉を使うようになったのかを今日は話していきたいと思っています。
いきさつ
2004年、大病を患い大手自動車メーカーを退職後、家業である金型工場(武田金型製作所)に入った時から早くも20年が経ちます。一度は父と別の道を歩みながらもその父に救いの手を差し伸べてもらう形で家業へ。一度外に出たことが功を奏したのかは実感がないものの異なる視野を持ち同じ道を歩むことで課題に感じたのは、父や職人たちの魅せる”伝わりにくい凄み(潜在的価値)“でした。
「どうしたらもっとこの価値は大勢の人に伝わるのか。」
既にその価値を知っている業界の人や知識人、父の会社を知っている人にとって全く必要のない知らない人の価値観の存在は、到底父や職人たちにも受け入れられるものではなくバカ息子に拍車がかかったものです。悶々とそんな葛藤を続ける中、突如として自分の前に現れた とあるモノが運命を変えていく。
それはどうやら常にそこにあったらしい。でも全く気づかなかった。なので教えてもらった時は驚愕しました。その様子を見た職人たちから「金型屋の倅がこんげんで驚くなてば(こんなことで驚くなよな)」と苦笑されたことで、一瞬戸惑ったもののそれが確信に変わるのも一瞬でした。自分は間違いなくものづくりに心躍った瞬間。あの打ち震えるような留まっていられないような「これは凄い…」と武者震いのような感覚は二度と忘れません。
金型屋で生まれた何も知らないド素人の自分は、ここから一切止まれず「恥ずかしいっけやめれいや(恥ずかしいからやめてね)」という職人たちの猛攻を押し切り、自分の感覚を信じてYoutubeに掲載しました。
今日はマジックメタルのサクセスストーリーを書く予定ではないため割愛しますが、時は経ち、製造技術を伝える手法としてはそこそこ有名になったように思います。
ただし、効果はあれど直接利益につながるわけではありません。自分はその後、広報業務を継続しつながら自分の会社(MGNET)を立ち上げ、地域にフィールドを広げ、技術を知らない人に価値を届けるという周りくどいやり方で長期戦に挑んでいます。一方で父は着実に、金型を知っている人に価値を届けることで金型工場を成長させています。
経営方針も事業体質があまりにも違う経営者同士であり、世間からの評価も対極的な親子。感情的になることは減りましたが今でも喧嘩は絶えません笑
継承の形
進んだ道は、父とはまた別の道。
故に「お前のやることも振ってくる仕事も時間も手間もかかる割に全く儲からん」と言われ続ける日々。毎回のことながらぐうの音も出ません。自分はスタートからバカ息子、どう考えても自分が変なのだと素直に受け入れ、軌道修正も事業改善も日常茶飯事。プライドゼロで歩む日々。
とはいえ悠長なことも言っていられません。金型工場は家業ですので、目の前のこと(今後や継承など)を考えない日もありません。父の姿を見ていればその姿に憧れもあります。ただ、例え業績を伸ばしている父の工場でもプレス金型専業メーカーとしてのこの先を考えると「業界の未来は明るい」とは正直いえない自分がいます。自分がそう思うくらいなので父は父で余計(息子もこんななので)継承の形は今も模索する毎日なのだと思います。
後継ぎや担い手の話は巷でもよく聞かれる地域課題の一つであり、そこには本当に様々な考え方や方法がひしめき合い、その渦中にいる自分たち親子にとっても一長一短では決めきれない話になっていました。
自分自身としては、ただ闇雲に「周りもそうしているから」とか「息子なら継ぐべき」と言った思考停止しないよう考え続けたいですし、かつ現場経験がほぼない自分はスキルやノウハウも乏しいため、自分にしかできない立ち位置は必要です。でもやはり時間は待ってくれない。お互いが現役経営者である間に、当初から感じていた価値の確立が必要でした。
そして今年2024年、13回目の創立日に合わせて一つ決意をしました。
工芸としての一歩
『工芸を、金型屋の新しい表現とする』
いきなりなんだ?と思われたはずです。すみません。結論から話すと良いそうなので結論から書きました。なぜまた急に工芸なのかは後半で語っていきます。
これは父(作り手)と子(伝え手)が現役だからできる答えです。学術的に捉えるとグッズドミナントロジックからサービスドミナントロジックへ移行する中で語られるオペランド資源とオペラント資源の関係です。冒頭の話題に戻しますが、自分は父の工場で とあるモノと出会い衝撃を受けました。その出会いこそが日本のものづくり業界にとっての新しい価値創造となり得ると自分を強く奮い立たせる体験となりました。
そのモノは、多くの人が「何に使うの?」と聞いてしまうほど機能性も利便性もないモノであり、注文が入ると話せば大抵の人は「買う人なんているの?」とその動機を疑い、購買行動に驚くほど相場感も市場性も思いあたらない、一見価値が見出しにくいモノ。
ゆえに、使い道はない。
なのに、既に世界中にオーナーはいる。
世代や言語の壁を超えて届けられる驚きと笑顔。業界では当たり前の製造技術も業界外に飛び出せば、世界中で人だかりができる。
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なのに長い間、発信者であり事業当事者でもある自分こそが固定概念を捨てきれず傲慢に「結局使うものじゃないし、ましてや買うようなものじゃない」とどこかで決めつけてました。あの頃「恥ずかしいからやめてくれ」と言っていた過去の職人たちと同じ経路依存性を発揮していました。今でも葛藤はあるものの大切なのはプライドではなく、私たち親子に、日本のものづくりに必要な決断をすることが重要。
ちゃんと販売していこう。
工芸品として世の中に送り出そう。
小さな町工場の大量生産の現場から生まれ、国際産業観光都市となりつつある、燕三条の歴史と文化が育む『令和の工芸品 マジックメタル』が直営店やオンラインショップで購入できるようにしました。
展示品からの昇華
詳細は公式プレスリリースより抜粋します。
プレス金型は、製品を大量生産するための精密な道具であることがその鍵を握っています。金型技術は高度な職人技と長年の経験が求められる分野であり、その技術力が日本の製造業を支えてきました。しかし、職人たちの優れた技術やその「凄み」が伝わりにくいという課題もあります。マジックメタルは、この技術力を形にし、世界に伝える新しい試みとして誕生しました。※「マジックメタル」は株式会社武田金型製作所の登録商標です(第6151471号)
マジックメタルは、当初は技術サンプルとして開発され、その高度な製造技術を体現するものでした。しかし、その独自の美しさとデザイン性が人々を魅了し、技術サンプルの枠を超えて工芸品へと進化しました。
国内外での展示を通じて多くの反響を得ており、展示会では老若男女を問わず人だかりができるほどの注目を集め、多くの来場者がその技術と美しさに感嘆の声を上げています。また近年では現代アーティストや国際的な建築家から興味を注がれており、今後は、この技術と芸術性が融合した作品を展示のみならず、広く一般に販売し、新たなマーケットを切り拓いていきます。
今回プロダクト「マジックメタル」を「令和の工芸品」として位置づけた背景には、伝統技術と最先端技術の融合があります。燕三条地域で培われた高度な金型技術を、現代の感性に合わせて再解釈し、次世代へと進化させるというコンセプトです。令和という新時代の中で、過去の技術をただ受け継ぐだけでなく、新たな価値を創出することが重要です。
マジックメタルは、その象徴として、従来の工芸品が持つ美的価値に加え、機能を超えた驚きと感動を提供します。また、「工芸品」という言葉が持つクラフトマンシップの精神を尊重しつつ、量産技術とアート的要素を融合させることで、唯一無二の作品として昇華させています。この新たな挑戦により、「令和の工芸品」としての新しい価値を打ち出し、時代の先端を走るプロダクトを目指します。
<以上、公式プレスリリースより抜粋>
モノにエンターテインメントとは
そしてようやくタイトルにもなっている「モノにエンターテインメント」について触れていきます。まずは上記で触れている自分が工場で出会った とあるモノ『マジックメタル』がまさにこの言葉を体現してくれたこともあり、この言葉に行き着きました。
では結局、モノにエンターテインメントは一体なんなのか。
簡単にいうと付加価値の話です。
それだけでは話にならないと思うので何にどんな付加価値が必要で、そしてそれは何のためなのかを詳しく説明します。
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