大崎清夏 / Sayaka Osaki

言葉・生活・自由 https://osakisayaka.com/

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マガジン

  • 《 往復書簡:不安な言葉 》金川晋吾×大崎清夏

    • 10本

    写真家・金川晋吾と詩人・大崎清夏が、書くことの困難や面白さや、自分の制作中の思考/思考中の制作についてや、その方法や、うまく方法化できないことなどについて、つらつらと交感する不定期の往復書簡です。 何も言わないために、何かを言えたらいいのに。

最近の記事

《往復書簡》 大崎清夏より⑤

金川晋吾さま  こんにちは!  もう4月です。金川さんに往復書簡をいただいたのは1月で、1月に比べて世界がすっかり様変わりしてしまったことに、唖然としています。  前回「壁ぎわの記憶」の取材でご一緒したのは3月初旬で、金川さんはすでにインドでのお仕事が危ぶまれていて(その後、延期になっていましたね)、私も札幌で3月に開催されるはずだった合唱曲の発表会が5月に延期になった後、無期限延期になってしまいました。  経済最優先の世界では、わかりやすい第三次世界大戦は起こらないん

    • 《往復書簡》大崎清夏より④

      金川晋吾さま  こんにちは。台風19号が去って、突然の深い秋ですね。私は季節のなかで秋がいちばん好きです。空気が冷えてきて、汗をかかなくなった自分の肌の状態が好きで、この肌の上にどんな服を着たいかとか、どんな化粧品を使いたいかとか、そんなことばかり考えてしまいます。(それで散財しがちです。)  性やセックスについての個人的な話を話したいという気持ちを、私も自分のどこかに実はかなり強く持っている気がします。金川さんと話していると、その気持ちが引き出されてきます。金川さんの

      • 《往復書簡》 金川晋吾より②

        大崎清夏さま  こんにちは。  大崎さんが書いていた「泥棒的なものが入ってくる可能性は想像力を活用すれば十分ある」っていうところ、すごくいいなと思いました。自分はこういう文章が、もしくはこういうことを言う人が出てくるような文章が書きたいのだと思います  なぜ写真なのかということですが、僕はいろいろある表現のなかで写真にもっとも魅力を感じてやろうと思ったわけではなかったと思います。いくつか試したなかで、これなら自分にもできるかもしれないと最初に思えたのが写真でした。  自

        • 《往復書簡》 大崎清夏より②

          金川晋吾さま  先日は真鶴での取材、お疲れさまでした!  私のいま住んでいる部屋には1階と2階があります。寝室は2階ですが、泥棒的なものが入ってくる可能性は想像力を活用すれば十分あるし、つい先日も昼間の仕事中に大きなむかでが2階の書斎に侵入してきて、難儀しました。  物撮りのお仕事のこと。  ある「物」を「正しく」「写す」というとき、何が「正しさ」なのか、がまず難しそうです。自分の内側でも刻々と正しさというものは変化していそうだし、陶器なんて、どこから見るかによって

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        • 《 往復書簡:不安な言葉 》金川晋吾×大崎清夏
          10本

        記事

          《往復書簡》 金川晋吾より①

          大崎清夏さま  こんにちは。  お手紙ありがとうございます! 僕は窓を開けて眠ることについて何かをそんなに思ったことがなかったので、窓を開けて眠ることに焦がれている人がいるというのがなんだかおもしろかったです。大崎さんが住んでる部屋は1階ですか?僕は2階に住んでいて窓から人や動物が入りこんでくることはなさそうなので、窓を開けたままで寝てしまうこともあります。泥棒が窓から入って来ることは考えたことがありましたが、動物が入って来ることは考えたことがありませんでした。大崎さんのな

          《往復書簡》 金川晋吾より①

          《往復書簡》 大崎清夏より①

          金川晋吾さま  こんにちは!  こんなふうに金川さんとぽーんと往復書簡を始めることができて、とても嬉しいです。  今日、リルケの『マルテの手記』という小説を読みはじめました。  最初のページに「窓をあけたまま眠るのが、僕にはどうしてもやめられぬ。」(大山定一訳)と書いてあります。この小説の主人公は、窓の外から聞こえてくる犬の鳴き声に喜び、鶏の鳴き声に安心して、眠りに落ちるそうです。ほんとうは私も、いまくらいの季節には窓をあけたまま眠りたいけど、誰か、人間でも、動物でも

          《往復書簡》 大崎清夏より①

          《往復書簡》 大崎清夏より③

          金川晋吾さま  こんにちは。  これを書いている今日は梅雨の晴れ間です。  だんだん本格的な夏が始まってきた感じがします。  昨日、池袋で「プラータナー 憑依のポートレイト」という演劇を観ました。4時間の大作だったのですが、前半と後半の間に休憩があって、どちらも2時間ずつだったのに、後半は前半に比べてすごくあっという間に過ぎました。  主人公はタイの芸術家の男でした。権力を握ること(男を演じること、見る側に立つこと)とその支配下に置かれること(女を演じること、見られる

          《往復書簡》 大崎清夏より③

          《往復書簡》 金川晋吾より③

          大崎さま  こんにちは。ものすごく暑い日が続いていましたがだいぶ落ち着いてきましたね。夏は体にはなかなかこたえるのですが、でも気持ちは開放的になってやっぱりいいですね。今年は夏はいいものだと改めて思いなおしています。  以前のお便りからもう1ヶ月以上が過ぎてしまいました。プラータナーは僕も観ました。上演時間も4時間以上と長いものだったので観ながら感じたことはたくさんあったのですが、あのときまず強く感じたことは、性やセックスにまつわるいろんなことが語られるのを聞くのがとてもよ

          《往復書簡》 金川晋吾より③

          ことばとともに気分よく生きていくために

           12歳だった頃、私は何を考えていただろう。どんなことで悩み、どんなことが嬉しかったのだろう。  小学4年生にあがる時、私は親の離婚を機に転校した。転校先の小学校では、登下校時にぺらぺらのスクールコートを着てヘルメットを被らなければならなかった。寒くてださいこの格好が私は心底嫌だった。デニムジーンズを履いていくと「長ズボンは風邪のときしか履かないんだよ」と同じクラスの子に釘を刺された。それは校則外の不文律だった。  大学を出て最初に就職した会社にも、たくさんの不文律があった。

          ことばとともに気分よく生きていくために