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『勝利の予感』

有り金全てを一点張り、自分の(贔屓の)著作(馬)につぎ込んだ。

オッズは1.0としか思えない。勝利の予感しかない。アイデアは申し分ない。オレは間違いなくトップの馬主(ベストセラー作家)になるはずだった。

オレは馬主(著者)でもあったし、馬(著作)にかけた諸々の諸経費、おおよそのオレの年収にあたる300万円は、巡り巡って、ゆうに一億は超える予定であった。

信じて、信じて、信じ抜いて一年間を過ごしてきた。勝利の後の余韻を想像し、悦に入っていた。

ある時、オレはJRA(出版社)にぼったくられている事に気付いた。それでも馬券が外れることは無いのだから、オレは鷹揚に構えていた。

ある時オレは、自分の馬(著作)が全く人気じゃあない事を知った。能力も知れていた。実はオッズは、1000万倍くらいあった。

オレは人並みに焦ったし、怯えた。しかし元々の収入が少ないし、ふて寝しようが飲んだくれようが、生活レベルはそんなには変わらなかった。

開き治った、と言うより、もうどん底にいた。金もないんだし、オレの生活レベルなんて知れているから、1000万倍の馬券に人生を委ねてみようと思った。

勝利の景色は見えない。全額1000万馬券(贔屓の自分の著書)に突っ込んだオレに明日は見えない。

「運命に体ごと突っ込んでいけよ。」悪魔の囁きをいつもオレは真に受ける。

そしてその後、身をやつして、汗かいてその日暮らしをしてきた。

運命に体ごと飛び込んで生きていく。 

明日もオレは引越屋だ。


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