西国三十三所第27番 圓教寺 ロケ地で有名なお寺
西国三十三所のうち、東が第三十三番 谷汲山 華厳寺(たにぐみさん けごんじ)なら、最も西にあるのが第二十七番 書写山 圓教寺(しょしゃざん えんぎょうじ)である。西の比叡山(ひえいざん)とも呼ばれている。
書写山へは、姫路駅から神姫(しんき)バスが出ている。
一番から十八番まである姫路駅北口の大きなバスターミナルの十番乗り場から、書写山ロープウェイ行きのバスに三十分程度乗る。一時間に三本程度ある。
続いてロープウェイに乗る。一時間に四本の頻度で運行しており、混雑時は増便もある。山麓から山上まで四分程度の空中散歩である。
車で入山できず、書写山ロープウェイ山麓駅近くに駐車場がある。カーナビで検索するとき「圓教寺」では辿り着けないから「書写山ロープウェイ」と設定するようにとの注意書きをどこかの納経所で見たことがある。
ロープウェイは運休期間があり、令和二年一月二十日から三月十七日まで整備点検のため運休との貼り紙があった。
第二十七番の圓教寺と第二十六番の一乗寺、西国三十三所札所巡りではこの二箇寺に行かれることが多いが、セットで行く場合、「姫路観光周遊ワイドフリーきっぷ」を買うとよい。バスターミナル近くの神姫バス案内所にて販売されている。その券でバスに乗り、ロープウェイの往復券は現地で別途購入する。圓教寺のバスの便は比較的があるが、一乗寺は本数に限りがあるため、午前中は一乗寺に行き、姫路駅か姫路城の周辺で昼食を摂り、午後から圓教寺を目指すのが一般的である。
圓教寺行きのみをお考えならば、「書写山ロープウェイセット券」を買うとよい。姫路駅北口から書写山ロープウェイのバスと、ロープウェイの往復が含まれている。こちらも神姫バス案内所にて購入できる。
案内標識の「Mt. Shosha」の文字に「書写山。マウント ショシャ。その通りや。"Todaiji-Temple(トーダイジテンポー)"のテラテラ具合や"Jishu-Jinja-Shrine(ジシュジンジャシュライン)"のシャラシャラ具合とはワケが違う」とよくわからない同意をしながらバスに揺られた。
圓教寺は、映画やドラマのロケ地で知られている。
ラストサムライ、軍師官兵衛、関ヶ原、本能寺ホテル、駆け込み女と駆け出し男、武蔵 MUSASHI、黒衣の刺客、天地明察、源氏物語 千年の謎、3月のライオンなど、多数にのぼる。
姫路市内はロケーションの宝庫と言われており、映画ドラマ好きならば、姫路城や好古園(こうこえん)も併せて押さえておくとよい。るろうに剣心、大奥、水戸黄門、暴れん坊将軍、のみとり侍、超高速!参勤交代リターンズ、TAJOMARU、憑神、隠し剣 鬼の爪、幕末高校生、007は二度死ぬなど枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がない。
初観音日にあたる一月十八日、年に一度の御本尊開帳日である。
この日は無料で入山できた。通常は入山料が五百円である。
入山受付から如意輪観音様のいる摩尼殿(まにでん)まで上ったり下りたりの一キロの道のりで、志納金五百円、入山料と合わせて千円でバスの往復利用ができる。
私は趣味や言動がババくさくても比較的若いのでバスは使わず当然歩くわけだが、結構しんどい道のりである。摩尼殿よりさらに奥、大講堂・食堂(じきどう)・常行堂(じょうぎょうどう)まではさらに歩く。ロケ地巡りならなおさら、ロケに使われた展示物などを見に、ここまで行かねばなるまい。
食堂は長さ四十メートル、二階建ての巨大建築である。ここ一年で相当な数の神社仏閣を見たが、この大きさは、他でお目にかかったことがない。
景観は見事である。摩尼殿に向かう参道にビュースポットがある。麓(ふもと)の菜の花畑、連なる山々。姫路港、淡路島や明石海峡大橋、天気が良ければ大鳴門橋まで一望できる。
さて、摩尼殿に馳せ参じた正午頃、午後一時より行われる鬼追会のため、すでに参拝者が集結していた。ご年配の方だけでなく、意外なことに、若い親御さんと子どもが大勢いた。子どもたち曰く、「あかおにさんと、あおおにさん!」を見に来たらしい。
この日が土曜日であったこと、昨今の御朱印ブームや寺社参拝ブームの影響で、近くに居合わせた毎年来ているという地元の方の話では、例年にないほどの混雑だったようである。
扉が閉まると予告されている摩尼殿の出入り口付近で、締め出されるかもしれない不安を抱え、逆光のなか立ち見客が不満を漏らし、あまりの人手に多少の脱落者を出しながらも、皆我慢強く待っていた。
御本尊開帳も摩尼殿で行われており、すでに見ることができない状態であった。
お坊さんたちが、外の階段から来て摩尼殿に上がり、お経を上げる。これが約一時間。般若心経やご真言など知っている節は一緒に唱えた。
午後二時から三時頃までの約一時間、摩尼殿は閉じられ、真っ暗になる。閉まるなり「出ーたーいぃー」と子どもの切ない声が聞こえたが、儀式の間、問答無用で誰も出入りができない。何もしてやれない不甲斐ない大人ですまない。
赤鬼と青鬼(緑色の青鬼であった)が松明(たいまつ)を持って登場。鈴を鳴らし、独特のリズムで足を踏み鳴らしながら内陣(ないじん)を歩く。
最初に写真撮影可の案内があった。
儀式が終わってから、混雑が落ち着くのを見計らって内陣に行き、御本尊・如意輪観音を拝見した。
何とも優美なお姿であった。俗世と離れたところから、我々を穏やかに見ているような、そんな様子であった。
納経印をいただき、祈祷済み有り難い令和の金ピカ薫製味玉(キンのアジタマ)を購入し、ぞろぞろ歩き、大行列に並び、必死にピストン運行する大混雑のロープウェイで下山した。
姫路駅に到着したのは午後五時で、真っ白な姫路城下も店じまいの真っ只中であった。
お土産には杵屋の「書写 千年杉」、クリーム入りバウムクーヘンがおすすめである。ラストサムライのときトム・クルーズがお土産に爆買いしたとの言い伝えがある。スイーツ巡礼の菓子にもなっている。小倉とゆず、季節の味の三種類出ており、圓教寺境内のはづき茶屋で購入できる。
前回平成三十一年に訪れたとき、限定の抹茶味を購入している。甘いクリームが入ったバウムクーヘンの年輪の周りに香ばしくアーモンドスライスが散りばめられ、杉の幹のようになっている。見た目も味も兼ね備えた菓子である。
私が鬼追会後、はづき茶屋に辿り着いたとき、店員さんは閉店時間後にもかかわらずソフトクリームを求める地元の子どもたちの行列を捌いている最中で、残念ながらとてもお土産を買える状況ではなかった。
争いは何も生まない。
皆の頑張りと辛抱により、平和でちょっぴり贅沢な週末が保たれた。
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第二十七番札所 書寫山 圓教寺
読み:しょしゃざん えんぎょうじ
住所:兵庫県 姫路市(ひめじし) 書写(しょしゃ)2968
公共交通機関でのアクセス:
山陽新幹線 JR神戸線 播但線 姫路(ひめじ)駅
もしくは 山陽電鉄本線 山陽姫路(さんようひめじ)駅より
神姫バス 8系統 書写山ロープウェイ(しょしゃざんろーぷうぇい)行き
姫路駅(ひめじえき)北口 10番のりば→書写山ロープウェイ(しょしゃざんろーぷうぇい)(所要時間28分・280円)
書写山ロープウェイ 山麓駅→山上駅 所要時間4分・片道600円(往復1000円)
入山料:500円
山内往復バス志納金:500円
参拝時間:8:30〜17:00
宗派:天台宗
本尊:六臂如意輪観音菩薩(1月18日開帳)
主な行事:1月18日 修正会(しゅしょうえ) 鬼追い会式
創建:966年(康保3年)
開基:性空
札所:
西国三十三所第27番
播磨西国三十三箇所第1番
播州薬師霊場第16番
神仏霊場巡拝の道第75番
御詠歌:
はるばると 登れば 書写の山おろし
松の響きも 御法(みのり)なるらむ
※上記は2020年1月時点の情報です。