読んだよ「ハルタVol.119」

面白かったところを列挙していくよ

掲載読切「沼姫と呆太郎」が面白かった

ハルタVol.119より

暗示のこもった異界譚

今月号は「食にまつわるエピソード」を集めた読切企画が収録されている
そのなかでも「沼姫と呆太郎」が面白かった
沼の神である沼姫と、かつて利発だったがいつしか呆太郎と呼ばれるようになった孤児
水底の美しい光と優美な線が綺麗で、さらに異界譚を暗示させる描写が面白かった
その象徴となるのが、沼姫が呆太郎に差し出す料理だ
なんと色とりどりの「石」なのだ
しかも呆太郎はなんなくそれを平らげている


ハルタVol.119より

この描写の意味するところはなんであろうか
沼姫が「ヒトならざる存在」であること?
もちろんそれもある

しかしこれは「ヨモツヘグイ」と「バナナ型神話」の二種を暗示する演出になっているのではないだろうか

明らかに異質な「異界の食事」をとったことで、呆太郎が沼姫と同じ異界の存在になったこと
さらに不滅性を暗示する「石」を食したことで、呆太郎が不死性を得たこと

場面こそコミカルに描いているが、狙ってこれを描いたのであれば、この物語の意味するところをいちどに暗示していることになる
すごいことだ

「濃さ」が魅せるシリアスな笑いが光る連載陣

ハルタVol.119より
「殺し屋の推し」
アイドルフェス予選突破組のお目見え
メンバーがとにかく濃い
シリアスな笑いがさらに加速している
ハルタVol.119より
少女漫画と少年漫画の世界が交錯する「キラキラとギラギラ」
衣替えで冬服に変えたルルちゃんだったが……
少女漫画世界から転校してきたルルちゃん
衣装を変えてしまえば画風も「こちら側」染まってしまうのではないか……!?
禅君の懸念は真実か否か
画風ラブコメに「世界そのものの謎」を盛り込んできてますます目が離せない

新人による完成度の高い8ページ

キャラクターの魅せ方が抜群に上手い

今月号はとりわけ初登場の新人作家が粒揃いになっている
先に挙げた「沼姫と呆太郎」の大峯鶴次先生もそうだが「青春スクラップ&ビルド」の出倉ナオ先生も完成度の高い短編を発表している

「青春スクラップ&ビルド」の登場人物はふたりだけだ
受験をひかえた真っ只中にある幼馴染
かたや論理的で常識的な男子
かたや型破りで衝動的な女子
振り回される形での友情コメディだ

本作の凄いところは「わずかなページ数でキャラクターを明快に立たせて魅力的に演出しているところ」だ
キャラクターの見せ方と魅せ方が抜群に上手い
たった8ページでありながら、ふたりのキャラクターがどんなものかをはっきりと伝え、さらには化学反応させている

本当に短いページ数で登場人物を説明し、さらには親しみを持たせている
凄いことだ

ハルタVol.119より
衝動的で思いついたことをすく実行する型破りな女子、椎名
ハルタVol.119より
論理的、かつ常識的で付き合いのよい男子、矢沢
衝動と手綱のかけ合いが面白く、ふたりの関係性を魅力的に描いている


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