
宣伝会議 ブレーン 【C-1グランプリ】グランプリを受賞しました
宣伝会議から毎月発刊されている広告・クリエイティブの専門誌『ブレーン』、毎月キャッチコピーのお題が出題される『C-1グランプリ』にて第204回【レコードを買ってもらうためのコピー】というお題で応募させていただいたコピーがグランプリを受賞しました。※宣伝会議 ブレーン 2024年 6月号掲載

コピーは「ファンです。サブスクで聴いてます。」というコピー。審査員の電通コピーチームの皆さん満場一致でグランプリ選出というのがこれまた嬉しいところです。今回はこのコピーが生まれるに至るまでの背景なりをお話しできればと思います。
コピーを思いつくまでのフロー
「ファンです。サブスクで聴いてます。」というコピーですが、もちろん単なる思いつきや、空からアイデアが降ってきた、ということではなくこのコピーに至るまでにはいくつかのフローのようなものがありました。
あくまで今回僕自身が辿った考え方ですが参考までに。
①お題について、「他人」はどんなコピーを出すのか考える
まずは、「レコードを買ってもらうためのコピー」というお題について考えまました。レコードの魅力やポイントについてネットで検索してリサーチ。
大抵はこのお題について考えると頭の中がレコードのことでいっぱいになり「やっぱりレコードで聴く音は違う」、「レコードこそ至高の音を奏でる」といったレコードの表面的な魅力に着目したり、いわば商品そのもの説明になってしまうコピーを思いつく方が多数なのではないかと考えました。
そのため、むしろ間接的に別角度や別視点からレコードのことを「買いたい」と思わせることが差別化できるコピーになるポイントと考えました。
②お題について、「自分」だったらどう感じるか考える
次に自分だったらどうすればレコードを買うだろうかと考えてみました。
実際今までレコードプレイヤーを購入しようと思ったことは何度かありました。ただその度に自分を踏みとどまらせていたのが「サブスク」の存在。今の時代SpotifyやApple Musicといったサブスクで、ほとんど音楽消費は事足ります。かくいう自分もSpotifyのヘビーユーザーです。一昔前はTSUTAYAでCDをレンタルして視聴していましたが、今やサブスクで配信日当日に聴けますし、インターネット環境があればどこでも好きな曲を好き放題聴くことができます。
趣こそ無いかもしれませんが、コスパや利便性はサブスクに圧倒的に軍配が上がると思います。
③別の視点から考えてみる、 比較対象を作る
レコードから見ればサブスクはド対極です。結論、僕自身もレコードプレイヤーの購入を踏みとどまっている以上、レコードがサブスクに勝てるとは思えないよな、と正直思いました。
では、どうすればレコードを良いものであると見せられるのか考えた末、
「サブスクって悪だよね」という提案となるコピーを考えるのが良いと考えました。サブスクの悪い点を見つけて指摘してあげれば逆説的にレコードの魅力を主張できそうです。
サブスク、ストリーミングの悪いところは?ズバリ、「アーティストに入る収益が微々たるもの」ということです。アーティストからすればなるべく自身の音楽活動を収益に繋げたいはず。そう考えるレコードには「グッズ性」があり、それが「アーティストへの愛の証明」になるのではないかと考えます。サブスクで聴く音楽は部屋に飾れませんが、レコードは部屋に飾れます。サブスクで聴いていることよりもレコードで聴いていることの方がアーティストへの愛を感じられますし、推し活やオタク文化というものにおいてグッズは一種の愛の証明になります。
④誰かに言わせてみる
ということでまず思いついたのが「お前、ファンなのにサブスクで聴いてるの?」という言葉です。発言する人物を「友達→自分」にしてみました。ただ「説教くさい言葉は使わずに表現したいな」と思い言い換えることにしました。例えば「宿題しなさい」というより、「周りは宿題やってるよ?」と言い換えるように。
⑤誰が誰に言うのかを変えてみた
そこで今度は「誰から誰に言うか」という視点を変えてみることにしました。そこで思いついたのが「ファンです。サブスクで聴いてます。」と言うコピー。これは「ファン→アーティスト本人」への言葉です。
ファンが意図せずアーティスト傷つけることを言ってしまっているという、なんとも皮肉を効かせることができたなと思いました。このようなフローを経て本コピーは完成しました。
宣伝会議コピーライター養成講座(基礎コース)の受講について
学生こそ受けるべし
当時大学4年の3月頃からコピーライター講座を受講し始めました。広告代理店に勤める先輩へのOB訪問で受講を薦めていただいたことがきっかけです。コピーの基礎を学べることはもちろん、大まかに広告業界の入り口を知れる良い機会になったと思います。
ただ座学的にコピーの知識をインプットしたり講評してもらうだけということだけではなく、講師の方が講座の後に飲み会を開いてくれたり、同時に受講している他の同期と繋がりができたりと学生の自分にとってはとても有意義でした。特に僕が受講していた平日コースでの話になりますが、学生の受講生は全体の1-2割程度ということもあり、特に周りから可愛がってもらえたり、就活相談に乗ってもらえるというのも良いポイントだったかなと思います。
そんなコピーライター講座を修了後、初めてのC-1グランプリへの応募でグランプリをいただけたのはとても光栄でした。しっかり学んだことを活かせたのだと嬉しく思います。
もし広告業界やクリエイティブな仕事に将来就きたいと考えられている学生さんであれば早急に受講されることをお勧めします。思い立ったが吉日とは言いますが、せっかく元から広告業界に興味があったのならもう少し低学年のうちに受けておいても良かったなとは思っています。また僕自身は基礎コース修了後は他の講座を続けて受講することはなかったのですが、同期の中では上級コースや叩き上げコース、特定の講師の方の専門コースなどを受講されている方も何人か見かけました。社会人になると仕事の片手間に受講することが多くなるので学生のうちに別の講座も受けておいても良かったかもしれません。
C-1グランプリ、終わるらしい
そんなC-1グランプリなのですが、2025年3月号のブレーンで今後は休載するとのこと。毎月どんな課題が出題されるのかワクワクしながら発売を楽しみにしていたのでとても悲しい思いです。ただ、希望が多ければ再度復活する可能性もあるとのこと。毎月出せるようなアワードもなかなか希少なので何らかの形で復活するといいなと思っております。