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シャーロッシくんの事例簿 その14 「解雇」

社労士会労働紛争解決センタ-は全国に46ヶ所あり、職場の個別紛争の解決のために、あっせんを行っています。
センターで受理したあっせん件数は令和2年4月には1,200件を超えています。あっせんがどのように行われ解決に至っているのかを具体的に知りたいとの声にお応えして、実際に社労士会労働紛争センターで解決してきた事例をご紹介して行くことになりました。(個人情報保護の観点から内容を一部変更しています。)
14回目は、能力不足による解雇に対して損害賠償を求め、また解雇日の前倒しによる解雇予告手当もあわせて求めた事例です。

◆あっせんの概要

 申立人(労働者)X(以下、「X」という)。は、被申立人(事業主)Y(以下、「Y」という。)の運営する団体に勤務していた。当該団体には就業規則がなく、採用の際に労働契約書または労働条件通知書による労働条件の明示もされなかった。
 Xが経理事務として勤務して1か月ほど経ったころ、30日後の11月末付の解雇を言い渡された。しかし、後日郵送されてきた離職証明書には、11月20日退職となっていた。
 また、XがYに対して送付してきた解雇理由証明書の解雇理由は、「今後、当団体にて仕事を続けていく事が、Xにとっても良い結果とならないと考えられるため。」との内容のみであった。
 解雇理由に納得のいかないXは、書面で解雇撤回を求めたものの、Yからの回答は一切なかった。
 そこでXは、不当解雇による経済的及び精神的損害の賠償として金○○万円を、また解雇日が11月末日から20日に変更されたことによる不足分の解雇予告手当の支払いをYに求めるべく、あっせんを申し立てた。

◆紛争の背景

Xは、退職後2回にわたり書面で交渉を申し込んだもののYからの返答がなく、損害賠償及び解雇予告手当等の支払いをYに求めるべく、あっせんを申し立てた。

◆申立人の主張

  • Yは就業規則あるいは労働条件通知書等において解雇事由を定めておらず、解雇を行う明確な根拠はない。また、解雇を行いうるような重大な問題がX自身にあるとは言えない。

  • 「今後、当団体にて仕事を続けていく事が、Xにとっても良い結果とならないと考えられるため。」という理由は漠然としており、解雇には正当な理由がない。

  • 解雇日付の一方的な変更、退職後の交渉要求に対する無回答など、Yの対応は不誠実である。そもそも労務管理の不誠実さが本件の一因となっている。

  • 解雇予告手当は労基法で定められているものであり、Yに支払い義務がある。

◆被申立人の主張

  • Xは経理事務の経験があるということで、即戦力として採用したものの、入社当初より「書類の整理が苦手。」と話したり、残金が帳簿と合わない等ミスが多く、経理事務としての適性が全くなかった。また、無駄な残業が多く、注意すると反抗し、改善しようという態度が全く見られなかった。

  • 経理を始めて2週間ほどたったころ、改善を求める内容を文書で本人に渡した。しかし、その後も改善しようという意識や態度が見られなかった。

  • 本件は、試用期間中にXの本採用を行わないと決めたものであり、解雇理由としては相当である。

  • 不足分の解雇予告手当については支払う。

◆あっせんの内容

  • Xは現場復帰を求めてはおらず、不当解雇による損害賠償を求めていた。

  • YはXに試用期間について説明しておらず、試用期間中とはいえない状態があった。さらに、Yの団体(常時10人以上の労働者あり。)では法律上必要な就業規則の作成・届出をしておらず、また労働条件通知書を交付していない等の法違反もあった。Yは、これらが紛争を引き起こした要因であるとの認識が深まり、解決金の一部支払いに応じる姿勢に転じ、その内容をXが受け入れるに至った。

◆あっせんの結果

以下の内容で、和解契約が成立した。

  • XとYは、それぞれの間の労働契約が平成〇年〇月〇日限りで終了したことを相互に確認する。

  • Yは、本件解決金及び解雇予告手当として、Xに対し金○○万円を支払う。

  • XとYとの間には、本和解契約に定める他に何らの債権債務がないことを相互に確認する。

  • XとYは、本和解契約の存在及び内容について第三者に口外しないことを相互に確認する。

社労士会労働紛争解決センター大阪からのお願い

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