シャーロッシくんの事例簿その3

 社労士会労働紛争解決センタ-は全国に46ヶ所あり、職場の個別紛争の解決のために、あっせんを行っています。
 あっせんがどのように行われ解決に至っているのかを具体的に知りたいとの声にお応えして、社労士会労働紛争解決センタ-で解決してきた事例をご紹介して行くことになりました。あっせん申立人の9割が労働者で事業主側からの申し立ては1割と少なく、事業主側からの利用も望まれます。
 3回目は、その数少ない事業主側が申立人となり、上司のパワハラでうつ病となり、退職に追い込まれたとして慰謝料の支払を求めた労働者と争った事例です。(個人情報保護の観点から内容を一部変更しています。)

◆あっせんの概要
 申立人(事業主側)は、自己都合退職として退職願の提出をし、すでに退職した被申立人の労働者より、「退職の理由は上司のパワハラが原因でうつ病にて退職。慰謝料等として賃金6か月を請求する」という内容証明郵便を、退職後半年してから受け取った。
 申立人は、被申立人と話し合いで解決しようと連絡を試みたが「もう会社の人とは話したくない」と拒否され、その後連絡が取れなくなったことから、何とか被申立人とのトラブルを解決したいと考え、顧問社労士に相談した所、社労士会労働紛争解決センターを紹介され、あっせんを申し立てた。
 
◆申立人の主張(事業主側)
①被申立人は営業成績もよく、真面目で頑張っており、そのことを申立人は評価していた。
 しかし、被申立人は半年ほど前からミスを連発して営業成績が落ち込み、大きなミスが原因で関係者に迷惑をかけた後、会社を休みがちになり、約2か月後には自己都合退職として退職願を提出したもので、被申立人の主張に大変驚いている。

②退職前の上司に、パワハラの事実について確認したら「つい乱暴な言葉遣いで接したかもしれないが、業務上の注意であり、パワハラと言われるのは心外だ」とパワハラは否定している。同僚達も同様に述べており、パワハラの事実はない。
 
◆被申立人の主張(労働者側) 
①申立人へ慰謝料等の請求はしたが、接触したくないと思い、話し合いには応じなかったけれども、「あっせんでは相手方とは一切会わず、あっせん委員が間に入って解決を図る」とセンターから説明を受けたので応じることとした。
  
②退職する数か月前に新規プロジェクトへ配置転換され身体的・精神的疲労の蓄積が重なった。さらに上司からパワハラと言える厳しい言葉を受け続け、精神的ショックでうつ病を発症した。しかし申立人はこの状態を放置し、何の対応もしなかった。

③上司からのパワハラ等により出勤できなくなり退職せざるを得なかったと被申立人は考え、代表者である申立人の管理責任等を問い、賠償を求める。
 
◆あっせんの内容
①急な退職やその後の賠償請求には戸惑うものの、パワハラによる損害賠償ではなく、申立人はトラブルの早期解決のための解決金として申立人(事業主側)は賃金1か月分相当額を支払う意向を示した。

②あっせん委員が、被申立人(労働者側)の仕事ぶりを申立人が評価していたことを伝えると、自身の在職中の仕事への姿勢が申立人に評価されていたことを初めて知り、驚きと喜びを示した。そして前向きに解決したいと考えるが、今後の生活のためにも、賃金3か月分相当額は支払って欲しいと回答。
 
◆あっせんの結果
 あっせん委員が、被申立人の意向を申立人に伝えると、早期解決のため、賃金2.5か月分相当額を支払う意思を示した。
 あっせん委員から、申立人が解決に向けて誠意ある対応をしていること等を聞いた被申立人はこれを受け入れ、和解するに至った。  
 

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