シャーロッシくんの事例簿その8
社労士会労働紛争解決センタ-は全国に46ヶ所あり、職場の個別紛争の解決のために、あっせんを行っています。
センタ-で受理したあっせん件数は平成30年3月には千件を超えました。あっせんがどのように行われ解決に至っているのかを具体的に知りたいとの声にお応えして、実際に社労士会労働紛争センタ-で解決してきた事例をご紹介して行くことになりました。(個人情報保護の観点から内容を一部変更しています。)
8回目は、整理解雇を解雇の4要件を満たしていないとして、損害賠償や本来受けるべき退職金を請求した事例です。
◆あっせんの概要
申立人は、被申立人の経営する会社に勤務していた。申立人は、当初は契約社員であったが、その後正社員となった。しかし、申立人が所属する部署が取引先との業務提携契約終了により閉鎖されることになり、これに伴い申立人は、被申立人から解雇を通告された。そして、退職理由は「自己都合退職」とされ、そのため退職金の金額は会社都合退職の場合の金額に比べて低い金額になると告知された。また、今回の被申立人が行った解雇は整理解雇にあたるものの、必要な4要件を満たしておらず明かに不当解雇であると申立人は考えるようになった。そのため、申立人は、就業規則(退職金規程)に定められた退職金と経済的及び精神的損害に対する慰謝料として年収〇年分相当額の支払と、「会社都合」での退職理由を求め、あっせんを申立てた。
◆紛争の背景
申立人は、被申立人から解雇を申し渡され、理由を取引先との業務提携契約終了により解雇するとの簡単な説明を受けただけであった。
被申立人から申立人に対して、解雇の代替え措置として、配置転換先として出向先であるA社への移籍が内示されたものの、申立人にとっては受け入れられる条件等ではなかった。
退職理由は、被申立人からの解雇であるが、一方的に「自己都合退職」とされ、また退職金額が本来より低くなると通告されており、不当といえると申立人は考えた。
◆申立人の主張
申立人が、被申立人から解雇の理由として説明を受けたのは、私が所属する部署と取引先との業務提携契約終了により閉鎖されるためという事だけで、説明として不十分である。
申立人の配置転換先としてA社の内示はあったが、労働条件は大きく低下することになり、受け入れられるものではなかった。
当該会社は、他の部署へ配置転換することは充分に可能であり、整理解雇の4要件を満たしておらず、明らかに不当解雇であると考える。
退職理由は、解雇を通告されたことにあるにも拘わらず、「自己都合退職」となるとされ、退職金額が本来の「会社都合による退職」の金額よりかなり低いものとなり、受け入れられない。
◆被申立人の主張
申立人に対しては、説明会や面談で会社の現状説明、再就職先のあっせん等を行った。これらは、あくまでも申立人が判断する条件を提示しただけで、会社から解雇通知は行っていない。
解雇回避努力として、取引先関連会社への再就職、グループ会社を含めた転属先の検討等、誠実な対応を行っている。申立人には、配置転換先としてA社を探し、実際に申立人は、A社の役員との面接にも応じており、その後に申立人の判断でA社への入社を拒んだものである。
上記のように、当社の整理解雇は正当であり、また申立人は自ら退職を選択しており、申立人の請求する賠償等の必要はない。
◆あっせんの内容
被申立人は、申立人への整理解雇に際し、再就職先として出向先A社を探す等、十分誠意を尽くして対応していると認識していた。
あっせん委員は、被申立人に、整理解雇の4要件の内、人員削減の必要性については具体的に数値等をもって必要性を説明すべきであるのに、単に担当部署の閉鎖というだけでは説明不足であるとの見解を伝えた。解雇回避努力は、配転・出向、希望退職の募集等があるものの、申立人に示した移籍先が正当であるかどうか疑問が生じる可能性がある等の見解も伝えた。
被申立人は、見解は変わらないものの、早期解決を図る点から、会社都合退職とし、更に退職金に上乗せ金をプラスした金額を支払う用意はあるとの意向を示した。
◆あっせんの結果
被申立人は、本件解決のための退職金として、申立人に対し金〇〇万円を支払うことで合意し和解が成立した。
あっせんによる解決をご希望の方は!
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