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シャ-ロッシくんの事例簿  その17 「退職勧奨」  特定社労士特別部会

社労士会労働紛争解決センタ-は全国に46ヶ所あり、職場の個別紛争の解決のために、あっせんを行っています。
センターで受理したあっせん件数は令和2年4月には1,200件を超えています。あっせんがどのように行われ解決に至っているのかを具体的に知りたいとの声にお応えして、実際に社労士会労働紛争センターで解決してきた事例をご紹介して行くことになりました。(個人情報保護の観点から内容を一部変更しています。)

17回目は、不当な退職勧奨に対する逸失利益等の請求、ならびに離職証明書について離職理由の訂正を求めた事例です。


◆あっせんの概要
 申立人(労働者)(以下「X」という。)は、被申立人(事業主)(以下「Y」という。)の経営する障害者就労支援施設に勤務していた。ある時、Yは、全労働者に向けて、「経営悪化により会社の存続が難しく、再来月以降賃金の保障はできない」ことを告げた。その一方で、Yが同僚と問題を起こして退職した元労働者を経営コンサルタントとして再び入社させるという噂があった。
 Xは、Yから「会社都合退職にして、雇用保険の基本手当がすぐ受給できるようにする」と退職勧奨を受け、それを了承した。しかし、後日Yから「会社都合とは言っていない」と告げられた。Xは、会社都合退職ならと退職勧奨に応じたのであり、自己都合退職であれば退職するつもりはなかった。以上のことから、Xは、Yに対して不当な退職勧奨で辞めざるを得なくなった逸失利益と嫌がらせに対する慰謝料として計〇〇万円の支払い、ならびに離職証明書の離職理由を会社都合に訂正することを求めてあっせんを申立てた。
 
◆紛争の背景
・Xは、Yが離職理由を会社都合に訂正しなかったこと、及び逸失利益等の支払いに応じなかったことからあっせんを申立てた。
 
◆申立人の主張
・Yが復職させようとしたコンサルタントは、労働者だったころ、勤務中に昼寝をする等勤務態度が不適切であり、また同人は、同僚社員としばしば問題を起こしていた。撤回はしたものの、既存の労働者には退職勧奨をおこない、その一方で問題のある人物を復職させようとしたこと自体問題がある。
・退職願を提出したのは会社都合で取扱うという約束があったためであり、Xは念のため、退職願にも会社都合によって退職する旨を記載した。その約束を反故にしたYの行為は不当である。しかし、Yとの信頼関係はすでに崩れており、復職することは考えていないため金銭による解決を求める。
 
 
 
◆被申立人の主張 
・賃金の支払いが保障できないとした発言については、撤回し謝罪もしている。
・Xは、自ら退職願を提出したものであり、こちらから会社都合にするといった事実はない。
・離職理由は、事実に基づいて決められるものである。したがって、それを変更することはできない。
・Yは、退職願を提出したものの復職を希望する者に対して誠実に対応する旨の書面を労働者に配布した。しかし、Xからその申出はなかった。
・Xは、本件紛争以降、連日インターネットにYの誹謗中傷を書き込んでいる。その差し止めを求めたいので、金銭を支払う意思はある。
 
◆あっせんの内容
・Xがインターネット上にYを誹謗する書き込みを止め、そして今後も情報漏洩をしないこと等を約束する旨を和解条項に記載する。
・Xの離職理由を変更することは認められない。
・Xは、解決金の支払いにより自己都合退職を受け入れた。
 
◆あっせんの結果
以下の内容で、和解契約が成立した。
・Yは、本件解決金としてXに対し金〇〇万円支払う。
・Xは、本和解契約成立後、在職中に知り得たYの情報を第三者に開示又は漏えいしないことを相互に確認する。
・Xが、本和解契約に違反した場合、Yに対し違約金として〇〇万円を直ちに支払う。
・XとYは、Xが一身上の都合により退職したことを相互に確認する。
・XとYの間には、和解契約に定める他に何らの債権債務がないことを相互に確認する。
・XとYは、本和解契約の存在及び内容について第三者に口外しないことを相互に確認する。
 
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