シャーロッシくんの事例簿その2
社労士会労働紛争解決センタ-は全国に46ヶ所あり、職場の個別紛争の解決のために、あっせんを行っています。
センタ-で受理したあっせん件数は平成30年3月には千件を超えました。あっせんがどのように行われ解決に至っているのかを具体的に知りたいとの声にお応えして、実際に社労士会労働紛争センタ-で解決してきた事例をご紹介して行くことになりました。(個人情報保護の観点から内容を一部変更しています。)
2回目は、固定残業代との説明がないまま支給されていた業務手当をめぐり、未払い残業代及び慰謝料の支払を求めて争った事例です
◆あっせんの概要
申立人の労働者は被申立人の経営する会社に勤務し、平均して月30時間の時間外労働を行っていたにもかかわらず残業代の支払が一切なかったため、申立人が被申立人にその支払を求めたところ、「業務手当として毎月2万円の残業代を支払っている」との回答があったのみで、支払を拒否された。
そこで、申立人は、2年分の残業代相当額および慰謝料計○○万円の支払を求めて、あっせんを申し立てた。
◆紛争の背景
被申立人は、申立人をはじめとする労働者に業務手当の名目で毎月2万円を支払っていた。しかし、申立人には業務手当が残業代である旨の説明がなされておらず、労働条件に関する通知書も交付されないままであり、また賃金規程があることも知らされていなかった。
◆申立人の主張
毎月2万円の業務手当は受け取っているが、残業代であるとの説明は一切受けていない。もしそうだとしても月2万円では平均月30時間の時間外労働に対する賃金には大きく不足している。
慰謝料の額については特に根拠はなく、支払にはこだわらない。
私をはじめ会社の従業員で賃金規程を見た人はいない。
今回の申立は、会社が「一銭も支払う必要はない」といったことが許せず行ったものである。そのため、会社が未払い残業代を認めて支払う意思を見せた場合には、金額にはこだわらない。
解決した後は、会社を退職するつもりである。
◆被申立人の主張
業務手当を残業代とすることは、賃金規程に明記してある。申立人には賃金規程を見せていないが、労働者は全員知っているはずである。
申立人の請求額には支払えないが、一部ならば支払う意向はあり、早期に解決を図りたい。
◆あっせんの内容
被申立人は、業務手当は残業代と定めた賃金規程を作成していたものの、それを労働者に見せたことはなく、採用時に書面による労働条件の通知も行っていないことを認めた。
あっせん委員は、賃金規程を含め就業規則の効力は原則として労働者への周知により初めて発生すること、固定残業代については原則として金額及び何時間分の残業代に当たるかを明記する必要があること等を説明したところ、被申立人は申立人の請求額の6割までなら支払い、当日の解決を希望する意思を示した。
あっせん委員が申立人に対して被申立人の意向を伝えたところ、申立人は「金額にはこだわらないつもりであったが、やはり請求額の8割の支払は絶対に譲れない。もし支払があれば、それで納得し退職する。ただし、退職理由は会社都合としてほしい。」と希望を述べた。
あっせん委員がその旨を被申立人に伝えたところ、被申立人は最終的に「請求額の8割を支払い、その他の希望も受け入れる」との意向を示し、申立人と和解することになった。
◆あっせんの結果
被申出人から本件解決金として申立人に対して金○○円(申立人請求額の8割)を支払う事等の内容で合意文書が交わされ、和解契約が成立した。
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