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うしやの肉旅日記 石垣島編 〜南ぬ豚(アグー豚)と石垣牛〜

こんにくは!うしや精肉店・4代目です。

うしやの肉旅日記と称して、私たちがお肉の勉強で訪れた土地や場所、お店に関する記録を日記的に残していきたいと思います。

私達だけでなくお肉が好きな方の何かの役に立てれば幸いです。なお、日記という形式になりますのでお話を伺う方、及び私たちの主観も多分に入っているので、すべてのことにエビデンスや根拠を求めることはご容赦いただければ幸いです。

この旅の背景

ご縁があって『やえやまファーム』さんの南ぬ豚(アグーF1種)を取り扱わせていただくことになりました。

その過程でオンラインでその取り組みを説明いただいたのですが、それが“これからの畜産業の方向性の1つ"として素晴らしいと感銘を受け、これは実際に訪れて自分達が体感しなければと思いたちました。

キーワードとしては“循環型農業”。

また、お肉に関わらずいわゆる“地球にやさしい“系のものってまだまだクォリティが追いついていないものも多いと思うのですが、実際に試食してみて“美味しい!”と素直に思える、偉そうなことを言うと当店の求めている基準を超えるものでした。

それなら販売開始する前に!と言うことで、急遽石垣行きを決めたのでした。

また、以前に食肉学校の講習会で知り合い「いつか行きます!」と話していた石垣牛の繁殖農家であるぼーのファームさんにもこの機会で伺うことにしました♪

快く受け入れていただいた、やえやまファームさん、ぼーのファームさんありがとうございます!

では、行きましょうーーー!

家族経営で若き代表が事業を拡大中。ぼーのファーム

島バナナと豆乳だけのスムージー美味しすぎました

石垣に着いて、ぼーのファームさんへ。今年は異常なほど雨が降り続く梅雨の中、到着と共に雨が止むというラッキーでスタート。

宮良さんが迎えに来てくれ、まずは知り合いの島バナナを使ったスムージー屋さんで再会のご挨拶。うしや4代目と同い年だということが分かり、一気に距離が縮まります。

その後地元のヤギ汁が美味しいお店『ぐーしゅーあん』で初めてのヤギを。少しクセがありましたが、たっぷり盛られたよもぎと食べるとバランスよく食べられました。でも苦手な人は苦手だろうな。。。笑

宮良さんはお肉のサブスク『うしやMEAT BOX』の最南端の参加者でもあり、美味しく食べていただいているということでホッと一安心。同じ業界の人に認めていただけるのはとても嬉しいことです♪

前置きはこれくらいにして早速農場へ。

今年の石垣島の天候に関して

と、その前に、餌となる牧草を栽培している土地の見回りをしながら牧場に向かいます。

牛たちの餌にするには3日程度の天日干しが必要なのですが、今年は雨が続き3日間雨が降らないことが滅多になく、農家さんたちが牧草不足に悩んでいるとのこと。

石垣滞在中、皆さんが仕切りに「今年は異常」とおっしゃっていたのが印象でした。最近は台風も直撃することも少ないようで、良い悪いは諸説あると思いますが、少なくとも“変化”はあるようです。。。

繁殖に加え肥育にも注力し始めた

元々は繁殖農家としてやられていたぼーのファームさんですが近年は肥育も始め、牛舎も大きくし、今後は精肉販売も始めて6次産業化していきたいとのこと。

このところの石垣島では、肥育してもあまり高値で買われない時期が続いたことから肥育をやめて繁殖に専念する農家さんが増えたそうで、そんな中、ぼーのファームさんでは「減っているなら、勝機があるのでは?」ということで肥育にも取り組み始めたそう。

お商売なのでこういうチャンスを捉える嗅覚も大事ですね。

種付けの現場を見せていただく

この日はたまたま獣医さんも来られていたので、診察の様子も見ることが出来ました。しかもこの獣医さんは私の友人のお母様。不思議なご縁です。

母牛のお腹の中を超音波で見ながら受精卵がしっかり育っているかのチェック。残念なことにこの日の母牛は流産してしまっていた様子。

そして、この日は発情を確認していた母牛に種付けをするタイミングでもあったので見せていただくことに。

家畜人工受精師という種付け専門の国家資格も持つ宮良さんは、その作業を自分でこなします。

専用のタンク?に液体窒素で凍結された種牛の精液がストローのような容器に保管されおり、それを手順に沿って解凍して、注射器のような器具に詰めて母牛の子宮に注入します。

精液を注入する場所を超音波で確認

その作業は牛の体内に腕を突っ込んで行われるので、初めて見た私はただただ圧倒されました。が、それも束の間。あっという間に終了します。

「なるほどこれが私達が食べるお肉の一番始めなのか」と理解します。精肉店という仕事でもなかなか見られない作業を見せていただいて感謝です。

最後に、少しだけお手伝い。餌やりを一緒にさせていただきました!

「思った量の3倍あげてください」と指示をもらい、やっているとその訳に気付きます。牛1頭がだいたい1日7キロほど牧草を食べるようで、めっちゃ多い!!笑

子牛たちはより餌を食べて成長できるように“腹づくり"、肥育牛たちはより良いお肉になるよう、それぞれに合わせた飼料を与えていきます。

「肥育は楽しいですよ。時間をかけて自分の理想に近づけていけるので」と宮良さん。

新しいことに楽しみながらチャレンジする様子に、同業界の同級生としてとても刺激を受けました!

次回は、反対に当店に視察に来てくれるとのことで、楽しみがひとつ増えました♪夜の宴会までご一緒いただいてありがとうございました!!

循環型農業に取り組むやえやまファームへ

2日目はやえやまファームさんへ。豚と牛の農場の他にも、さまざまアテンドしていただけるとのことで、両親も石垣に到着しみんなで勉強します。

奇跡的に晴れました!!

腹ごしらえで名物B級グルメ・知念商会のオニササをいただきます。鶏のササミフライの上にふりかけおにぎりを乗せて、ギュッと押さえつけて食べるのですが、これが軽食にとてもいい!笑

ペロリと食べてしましました♪

セリが行われる八重山食肉センターへ

こちらは美崎牛の枝肉

石垣牛に関しても気になっていたので石垣牛に関する施設も見学。こちらの施設には石垣島で生産される食肉(牛、馬、豚、山羊など)が集まってきます。

施設の方、やえやまファームのみなさんと昨今の石垣牛の値段高騰のお話も伺います。

簡単にいうと、前述の通り石垣島では肥育農家で減ったので、石垣牛の供給が減ったものの、観光客の消費・海外への輸出など需要が高まり、価格が上がっているという状態とのこと。

たしかに石垣島を移動していると焼肉屋さんがとっても多いことに驚きます。急に肥育農家さんが増えるとも思えないので、しばらくは高止まりが続きそうですね。

やえやまファームの食肉加工場へ

こちらではやえやまファームで生産された南ぬ豚や石垣牛の枝肉の加工、加工品の製造などが行われていました。

残念ながら加工場に直接入ることは叶いませんでしたが、窓越しに見学。マツコの知らない世界で”キングオブ肉汁”の称号得て、大人気の南ぬ豚 網脂ハンバーグの製造は、丸一日室温10℃の中で作り続けるというなかなかハードな現場とのこと。

当店も店頭でハンバーグを販売しておりますが販売量、製造設備の違いを痛感しました。当店もいつかは絶品のハンバーグを。。。

南ぬ豚も食べるパイナップルの農園へ

画像提供:やえやまファーム

南ぬ豚(および、やえやまファームで肥育される石垣牛)の特徴であるアッサリとした脂は、餌に石垣産のパイナップルの搾りかすを使用した飼料を食べるからなのではないかと言われております。
※脂の融点の低さ、オレイン酸・鉄分・ビタミンB1の含有量の多さはエビデンスあり

その飼料に使われるパイナップルは、やえやまファーム直営のパイナップル農園のものも含まれます。その農園にはやえやまファームで飼育される豚や牛の糞尿を利用した肥料が撒かれており、まさに循環しているという形です。

やえやまファーム・島田さん

パイナップル農園はまだまだ小規模で、今後うまくこの循環を活用して大きくしていきたいとのこと。夏頃に食べ頃を迎えるパイナップルもぜひ送っていただきたいですね🍍

パイナップルの加工場へ

こちらは写真には収められていないのですが、パイナップルジュースなどの加工品を生産する現場を見せていただきました。

お忙しい中、短時間ながら丁寧にご説明いただきました。ありがとうございました!!

最後にお目当ての石垣牛の牛舎と南ぬ豚の豚舎へ

まずは豚舎へ案内いただきます。通常、豚は神経質で感染症などの心配もあるのであまり近くで見せていただけないことが多いのですが、やえやまファームさんでは責任者の方のご意向もあり、できる限りは近くで見学できる体制にされていました。ですので、当然豚舎もとてもきれいにされています

南ぬ豚は純血アグーの雄×西洋豚(二元豚)の雌の掛け合わせの豚です。アグーはもともと体が小さな個体で、成長も遅く、お商売という観点ですと経済性の低い種類となります。

豚肉は肉質は雄の血、個体の大きさや成長速度は雌の血を引き継ぐそうで、南ぬ豚は肉質はアグーそのままで、西洋豚と掛け合わせることで経済合理性が高まった豚と言えますね。

母豚の西洋豚LW

純血アグーの血が1/2(つまりF1)まではアグー豚と呼べるのですが、アグーの血が入っているだけでアグーと名付けたり、純血アグーと呼んでいるものがきちんと証明書がなかったりするのが問題にもなっているそうです。

そこで重要になってくるのは純血のアグー豚の確保。やえやまファームではきちんと証明書のあるアグー豚の血統を自社牧場で守っているとのこと。

純血アグー。豚は人懐っこくて覗いていると寄ってきます
生後1週間のアグーの子豚ちゃん。キュートすぎます

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続いて、牛舎に向かいます。漂ってくるお酒の匂い…

理由は奥に見える島内の泡盛メーカーさんから回収した泡盛カス。

メーカーはこれまで石垣島から沖縄本島まで持っていって処理しなければならずコストになっていました。それをやえやまファームが全て回収し、畜産に使用しているとのことです。

他にも前述のパイナップルの搾りかすも、島内で生産されるパインジュースの搾りかすを回収しており、島の中で資源を循環させています。

お出迎えしてくれたギャル(若い母牛)のみなさま

やえやまファームさんも子牛を出荷する繁殖農家でありながら、肥育もしているという形態。経験の浅い若い母牛と、経験豊富な母牛では飼い方も違うとのことで、こちらは若い母牛たちでまだ完全放牧はできないようです。

こちらは肥育牛たち。肥育期間毎にグループで飼育されています。柵にはスタンチョンという首を固定する設備がついているのですが、こちらは全ての牛が均等に餌を食べられるようにするもの。牛も上下関係が激しく、この設備がないと強い牛が全部餌を食べてしまうそうです。もちろん餌を食べ終わったらこの柵から牛が自分から出て行きます。

やえやまファームオリジナルの発酵飼料

ここではこれからの畜産業に関する大事な2つの話をいただきました。

・牛のメタンガスに関して
・牛の白血病に関して

みなさんもご存知の通り昨今、環境問題の1つとして牛の排出するメタンガスが温暖化に影響していると言われています。

しかし、なんとやえやまファームさんが独自に開発しているパイナップルなどを利用した飼料を食べた牛は、排出するメタンガスが減るというデータが取れたとのことなのです。

世界的に見ると日本の家畜の頭数の割合は微々たるものかもしれませんが、これが世界に広まればいま劣勢に立たされている畜産業界がひっくり返るかもしれないといいます。

これまでも同じような取り組みをされている農家さんはあるようなのですが、きちんとしたデータが取れていなかったようなので、これは!ということで近々大々的に発表するかもしれないとのこと。

我々ももちろんですが、この記事を読んでいただいた方もぜひ楽しみにしておきましょう。

また、牛の白血病に関しては恥ずかしながら私たちも知らなかったです。が、人間と同じように牛にもあるようです。

虫を媒介として感染するウイルス性の病気で、発症しなければ食べるのにも問題はないようですが、やえやまファームではこの検査を定期的に行い、ゼロを目指しているとのことです。

このように一般的に世間の表に出ないところまで真摯に向き合い、エビデンスを以って取り組まれている姿勢がとても印象的で、最終的にお客様にお肉をお届けする立場として、見習わないといけないと強く思うお話でした。

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以上、大変長くなりましたが石垣島への視察、肉旅日記となります。

今後も、私たちだからこそ訪れることができたり、お話しできる方からの一次情報をまとめて行きたいと思いますので、楽しみにしていてくださいね♪

あくまで伺ったお話、私たちの解釈なのですべての話がエビデンスがあるかと言われるとそうではないので、”確実に”正しいとは言い切れません。

あくまでこういう考えがある、たしかかもしれない情報としてご理解いただけますと幸いです。

お世話になったぼーのファーム、やえやまファームの皆様本当にありがとうございました!

これからもどうぞよろしくお願いします!!

やえやまファーム・島田さん(右)とうしや4代目・3代目


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