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大阪市が「ヒマラヤスギの全数撤去」の根拠の一つとして出した論文・ブログ等
大阪市は、どんなに健全な状態でもヒマラヤスギであるというだけで伐採するという方針を取っています。
私たちが、「(その措置は)科学的合理性を欠く」と指摘する樹木医の鑑定書を大阪市議会に提出してから、大阪市は「公園樹・街路樹の安全対策事業」のHPに「 Q4 ヒマラヤスギの植え替えを行う理由は」という文章を掲載しています。
ヒマラヤスギはマツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹で、公園などで広く植栽されてきました。
大阪市では、早期に緑化を進めるため、ヒマラヤスギのような生長が早い樹木を、市民に身近な公園にも植栽してきました。
その後、ヒマラヤスギの大木化が進行するとともに、台風などの際に倒木が発生するようになり、根を深くまで張ることができていない実態も確認されるようになりました。そのため、大阪市では、従来より、ヒマラヤスギを別の樹種へ植え替える対象としておりました。
甚大な被害をもたらした平成30年の台風21号により、根系基盤が周囲の土壌から引きはがされるように倒木する「根返り倒伏」の状態でヒマラヤスギが倒れており、根を深くまで張ることができていなかったことが複数確認されております。
市民に身近な公園に植えられた、大木化したヒマラヤスギが倒木すれば、家屋や車両など市民の財産への影響や、道路封鎖など道路交通への支障、また、公園利用者に危険を及ぼすおそれも想定されるため、倒木による市民への影響は大きいと考えます。
ヒマラヤスギを保全する方法としまして、風の影響を受けないよう、樹木の上部を切断するといった手法が考えられますが、それを行ったとしても根を深くまで張れていないことによる将来的な倒木のリスクは残ってしまいます。
そういったことから、近年の自然災害の激甚化に備えることはもとより、健全な樹木でさえ倒木するような、市民生活を脅かす自然災害にも備え、市民の安全安心を最優先に確保するため、令和2年度より実施している公園樹の安全対策事業において、将来的な倒木のリスクのあるヒマラヤスギ全数を植え替えの対象としてきました。
平成30年に発生しました台風21号や台風24号による被害の状況等をまとめた研究論文等においても、国内の各所でヒマラヤスギの倒木事例が多数見られ、根が深くまで張れていないことが確認されています。また、他都市においても将来的な倒木の危険性があるとして撤去している事例などもあり、そのようなことからも、ヒマラヤスギの全数撤去は、市民の安全安心を確保するうえで、やむを得ないと判断しています。
大阪市としましては、引き続き、市民の皆様に丁寧に説明を行い、ご理解を得ながら、ヒマラヤスギの植え替えを進めてまいります。
私たちはこの文章の最後の部分にある「平成30年に発生しました台風21号や台風24号による被害の状況等をまとめた研究論文等」「他都市においても将来的な倒木の危険性があるとして撤去している事例など」に注目し、大阪市がどういう論文や事例をもとにこの部分を書いているのか情報公開請求を行いました。このたびようやく情報提供を受けたので、広く公開したいと思います。
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これらの論文などが「ヒマラヤスギの全数撤去」という大阪市の特異な方針を根拠づけるのか、みなさまにもぜひとも検証していただきたいと思います。
情報提供されたのは、5つの資料です。
すべてインターネットで読むことができます。
▽資料①
台風被害をうけた都市緑化樹木の幹被害と材の曲げ強度との関係
(大阪府立大学 中村彰宏 著 · 2021)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsrt/47/1/47_75/_pdf
▽資料②
「台風21,24号による樹木の倒伏、幹折れ等の被害について」
(日本ビオトープ協会 協会技術委員長 直木哲 2018)
▽資料③
台風24号による倒木等被害の対応について
(及川美奈 国営昭和記念公園事務所工務課)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000747812.pdf
▽資料④ヒマラヤスギの伐採について(戸田市公式サイト)
▽資料⑤
台風23号 過去25年で最悪の被害~街路樹、公園樹倒木相次ぐ~
(樹木医トピックス)
これらの資料に、私たちは目を通しましたが、個別のヒマラスギの倒木事例が解説されているだけです。
東京新聞(2024年3月10日)の記事にある<地域緑花技術普及協会(東京)の細野哲央代表理事は「ヒマラヤスギは確かに倒れやすいが、それだけで切るのも聞いたことがない」と非難する>という専門家のコメントをくつがすほどの資料とはとても思えません。
※去年9月(2,023年)に大阪市議会に出した「ヒマラヤスギの扱いの見直しを求める陳情書」ですが、年度末の委員会で、維新と自民によって「不採択」となりました。9月の委員会では「引き続き審査」だったにもかかわらずです。2023年度中に、大阪市内の公園からヒマラヤスギをすべて撤去したので、陳情も葬り去ろうという強い意志、悪意を感じました。
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