ラノベ作家生活10周年
2012年9月24日に最初の本が出版されたので、ラノベ作家生活が10年になった。それもこれもすべて皆々様のお陰である。ありがたい。この場を借りて感謝の意を表したい。
受賞してデビューした作家は受賞した日がデビュー日になり、
そうではない作家は発売日がデビュー日になる、と思う。思うというのは統計を取ったわけではないので、あくまでも想像である。
少なくとも「書きはじめた日」をデビュー日に設定する作家を管見の限りでは見たことがないので、世に知られた日がデビュー日とする、と考えるのが適当であろう。
デビュー日には「世に知られた日」という推定ができるとして、廃業する日というのはどうなのだろうか。
かつて言葉狩りに抵抗するために筒井康隆が擱筆宣言したことがあった。
宣言して筆を擱くなら、それは廃業と見做してもいいだろう。
当然、実存としての作家が儚くなるのも廃業である。
だが、当然、人が忘れ、本を出せなくなってしまう廃業もまた、存在するはずだ。当人はまだ作家のつもりであっても、本が出ず、企画も通らず、誰からも忘れ去られてしまえば、作家ではなくなってしまうのではないか。
私は、そうなるのが一番怖い。
私は佳作で、運と縁と恩でここまでやって来られた人間である。
他力でここまで来たのであるから、自力を尽くしても抗い難く作家でなくなるときが来るかもしれない。
今は、その時を少しでも先に延ばしたいと思う。
そのためには、そんな余計なことを考えずに、ただ一意専心して面白い話を書くことに全てを費やすべきだとも思う。
何とも情けない十周年であるが、それでも生きていかねばならない。
風立ちぬ、いざ生きめやも。