たしかな縫製と上質な革。質の高い革製品を誇る「ふく江」が次にめざすもの
バッグをはじめ革製品のOEM専門工房でありながら、オリジナルブランド「+81 artigiano(アルティジャーノ)」も持つ株式会社ふく江。こだわり抜いた革を用い、一つひとつ丁寧に作られる革製品の数々は、上質さと豊かな触り心地を実現します。そんなふく江で、若手のホープとして期待されている松浦知生さんに、革製品について、また新商品についておうかがいしました。
タンナーと直接取引し、上質な革を仕入れる
ふく江の松浦知生さん
ふく江の始まりは、先代社長が1974年に爬虫類素材のバッグメーカーを立ち上げたことに遡ります。そこからOEM専門工房へと移行し、2007年に株式会社ふく江を設立。扱う素材は爬虫類から合皮、そして革へと変化し、今ではそのほとんどが革製品です。
「うちで使っている革は、革加工の本場、姫路のタンナーさんから直接仕入れたものです。普通OEM専門工房だと、メーカーさんから送られた革で裁断、縫製して作り上げるのですが、そうすると在庫がたくさん出てしまう。無駄な在庫をなくしたいという想いと、自分たちが納得できる革で製品作りをしたいという想いを叶えるには、直接タンナーさんと繋がることが必要でした」。
工房にはこだわりの革がずらりと並ぶ
ふく江のように、工房が直接タンナーと繋がるケースは関西ではあまり見られません。というのも一般的な工房では裁断専門、縫製専門、検品専門などの一つひとつが分業化しているため、工房の規模が小さくならざるを得ないからです。一方ふく江はバッグメーカーから始まっていることもあって、工房の規模が比較的大きく、革選びから仕上げまで一貫して生産できるのが特長。受注するだけでなく、メーカーに提案できる環境もあり、現在のスタイルが確立できたといいます。
「在庫がなくなることや、納得できる革が手に入るほかにも、問屋さんを介さないのでコストが抑えられたり、直接話せるのでこちらの想いも伝わりやすかったりと、いろんなメリットがあります」と松浦さん。
オリジナルブランド「+81 artigiano」のものづくり
2009年に立ち上げた「+81 artigiano」は、そんなこだわりの革を贅沢に使い、デザイン・縫製・仕上げ・流通まですべて自分たちで手がけるオリジナルブランド。イタリア語で職人という意味の「aritgiano」と、日本の国番号「+81」を組み合わせたブランド名からは、日本の職人技への意地と誇りが覗きます。
「革加工の本場として、常に進化し続けている姫路のタンナーさんとお取引させていただき、上質で滑らかで美しい革を仕入れています。その上で百貨店やセレクトショップなどで取り扱われる商品を作り続けてきた技術力を生かし、細部まで隙がなく、上質で、使い勝手も良い製品を展開しています」。
たしかにお財布の縫製ひとつとっても、ほつれが一切なく、返し縫いも丁寧で、繊細な技術がしっかりと投入されていることが伝わります。こういった技術力の高さが仕上がりの美しさや使い勝手の良さに繋がっていくのです。
歪みの一切ない美しい仕上がり
「社長はaritgiano においては“シンプルかどうか”をかなり意識的に実践しています。例えばショルダーの伸び縮みでも、どれだけシンプルにできるかが大事だと。僕もまだデザインを始めたばかりなので社長にダメ出しされることも多いですが(笑)、aritgianoのコンセプトに沿うものづくりができればと、日々頑張っています」。
「職人が尊敬される世の中」をバッグでカタチにする
ふく江が取り組む大阪商品計画の新プロダクトは、これまで工房で製品作りに邁進していた松浦さんが中心となって進行中。一昨年結婚し、子どもも生まれた松浦さんが「職人の楽しさを子どもにも知ってもらいたい」「そのためにはどんな商品がいいか」と試行錯誤し、新たなデザインを練っています。
「自分が子どもを持ってみて改めて思ったのは『家族からも応援してもらえるような仕事をしていきたい』ということでした。職人って裏方のイメージで、あまり表には出てこないと思うんですが、そんな職人に陽が当たって尊敬されるような世の中になれば、そんな想いが伝わればいいなと思っています」。
新商品では革にこだわり、質の高いオリジナルの馬革を惜しみなく使う予定。職人らしい無骨さをデザインに取り入れつつ、使い勝手の良さにもとことんこだわっていくのだそう。
福江社長夫妻からの信頼も厚い松浦さん
「ふく江はなんでもチャレンジさせてくれる環境ですし、社長からのアドバイスもいただきながら、いいものづくりができていると感じています。社長の胸を借りるつもりで、精一杯チャレンジしたいと思います!」。
革製品の若き職人が作り上げる、タフで実直で上質なバッグ。職人の未来を明るく照らす、そんな製品が待ち遠しいです。
株式会社ふく江
大阪府和泉市唐国町3-1-20
0725-53-2281