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幸せを手に入れる最後の方法 ~2年間のカウンセリング実録~ 22.維持費①

「数年後も生きている気がしません。

保険のCMを見て不思議な気持ちになりました。
みんな生きる気がとってもあるんだなぁ、と。

バロンがいるから不用意には死ねませんが、自殺をしないとしても、生き長らえるという概念に『?』です。


ほんとに治療しないといけないのかな?

自分にお金をかけたくないです。
どうせかけるなら美容に使いたいです。

でもバロンの虚勢手術をするために、すごくすごく節約しています。」



「保険はね、やっぱり守るものがある人が入るんだと思う。

独身で保険に入る人<結婚して保険に入る人<子供が生まれて保険に入る人、って感じで加入割合は高くなるかな。

もう少し突っ込んで言うと、死を意識するから保険に入るって人もいるかもしれない。」



「そっか。やっぱり私は自分の命を軽くみている。
私が死んで困る人、というのがバロン以外ピンとこない。

両親は悲しむだろうけど、またひとつ自分達にのし掛かる不幸が増えたと自分たちの運命を悔やむのだろうな、と。」



「治療、ね。
これは咲笑ちゃんの気持ち次第だと思うな。

治療を受ける人にも、前向きな人もいれば、自分に向き合わずに逃げで治療を受ける人もいる。

咲笑ちゃんは自己分析ができて、自分でとるべき道が分かってる。と思う。

お金を使う優先順位がしっかりしてる時点で、僕は大丈夫だと思うな。」



「疲れています。とても。
甘えられなくなって、随分経ちました。

両親にはもちろん、(もう諦めています)自分に愛着障害があるとわかってから、友達のところにも行けなくなりました。


からくりの内訳が分かってしまったら、もう自分が友達を『使っている』という罪悪感が強くて、全ての気力をなくしました。

きっと友達は気にしないのですが。

愚痴ばかりごめんなさい。」



「その友達、きっと良い人達なんだろうね。

でも、咲笑ちゃん自身が罪悪感を感じるなら、近くにいるのもつらい事なんだろうね。

心を許して一緒に居られる人がいると、本当はいいんだけどね。

僕に愚痴は構わないよ。僕は咲笑ちゃんのカウンセラーだから。どんな時も味方だよ。」


「ありがとう。

からくりの内訳が分かって白けてしまって。

私は父親的存在かペット的存在(これはバロンがいるので解決)を求める気持ちを恋だと勘違いしてきたから普通に恋愛なんてできないんだよな、と卑屈になって、それがまた悲しいです。

相手が遊び人なら、責任がないなら、まだ気が楽です。」


「多分そうなんだろうね。

でも、分かった今だからこそ乗り越えられることって絶対あると思う。頭で分かってるから、後は心がついてくるのを待とう。」





 なかなか浮上できない日が続いていた。

僕は言葉に気を付けながら、その時の咲笑ちゃんの気持ちに寄り添えるように努めていた。

だが、咲笑ちゃんの言葉はさらに悪い方に傾いていった。



「まだ生きてますが、もう死んでもいいと思います。
私に生きている価値はありません。

お金を十分に作れません。
生きているだけで維持費がかかります。


なぜこんなことになったのか悔しいです。

天真爛漫だった子供時代を思い返しますが、その時既に私は養子で、始末に困った子供だったのです。

バロンをどうしたらいいか…。

楽しみだったことが楽しめなくなりました。」



「咲笑ちゃん、苦しいんだね。
でも生きよう。バロンのためにもね。

楽しめない時は無理に楽しもうとしなくていいよ。
大丈夫。いつかまた楽しめる時が来るから。」



「生きてるだけでお金がかかります。

効率が悪いです。
私の生産性はとても低いので。」



「生きるって、お金がかかることだよね。

何をもって生産性とするのかは人によると思うけど、生産性なんて気にしなくてもいいんじゃないかな?

そもそも生きることは生産性が低いことだし。」



「『私は社会の害虫』と言う感覚がとれません。

バロンが来てくれて、緩和された筈なのに、これを治すにはまた治療費がかかります。

もう嫌です。」



「そんな感覚を覚えるんだ…つらいね。

バロンには咲笑ちゃんが必要なのに、なんでそんな風に思ってしまうんだろう?」



「生きる価値がないのが、私の標準だからです。」


「咲笑ちゃんはずっとそう思って生きてきたから、それが標準になっちゃってるんだね。

でもうまく言えないけど、人は何かの役に立つために生まれてきた訳でないし、害虫だって人間の都合でそう言われてるだけで、しっかり生きている。

むしろ人間の方が害虫かもしれないし。

だから害虫だと思ってしまうことは仕方ないことなのかもしれないけど、生きてはいけない理由にはならないと思うよ。

何より、咲笑ちゃんの生を願っている人はたくさんいるんだから。」











幸せを手に入れる最後の方法
~2年間のカウンセリング実録~



最後までお読みくださり、ありがとうございました。




生きていくって、とても非効率なことなんだろうなって思います。


みなさんは毎月の生活費、どれくらいかかっていますか?


住宅費、食費、光熱費、通信費、交通費、被服費、交際費、…

何をしてもお金がかかります。


自己肯定感が低いと、ここでマイナスな捉え方をしてしまうんだろうと思います。


そして難しいのは、自己肯定感は自分で高めるのが難しいっていうことです。


だって、他人の評価を抜きにして、『私、すごい✨』とか『俺って最高❗』とか思うのは、ただの自惚れになっちゃいますから。




続きは明日更新します。

よろしければ是非おつきあいください。

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