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口の中に神を祀り、街の人々を厄災から守る獅子。その大口見てみたい?

●難波八阪神社


ウワサを確かめに行く

『難波にドデカい獅子のモニュメントを祭った神社がある』
そんな噂を、SNS経由で聞いた。
難波の街をうろうろ、大通りから少し奥にはいると、海外旅行者がキャリーケース片手に境内を盛んに出入りしている。
どうやらここらしい。

大阪ミナミの騒がしい街並みから、一歩敷地に足を踏み入れれば、神社特有の凛とした空気感が漂う。まるで神様の結界に入った感覚だ。


異世界の入口

さっそく小ぶりの獅子が、口から水をちょろちょろ吐き出し、手水舎で迎えてくれた。
シンガポールのマーライオンきどりか、と突っ込みたくなるような可愛らしさに、思わず笑ってしまう。

ほのぼのした景色もつかのま、カメラのシャッター音がカシャカシャうるさい。スマフォを向けた外国人観光客たちの向こうに、それはいた。


口を開けた獅子が鎮座している。

それも、戦車を丸呑みするほどの大口だ。

しかも口の中にはステージのような神殿が見える。
なぜこんなに大きな獅子の顏が、大口をあけているのか?!

この神殿は『獅子殿』と呼ばれている。
「仁徳天皇の御代、ここらは湿地帯で、疫病が流行っていたのです」
宮司の粟辻さんが、詳しく話を聞かせてくださった。

疫病の流行を止めるために牛頭天王(ごずてんのう)を祀ったところ、終息。それがこの神社の始まりだ。
しかし一度、戦時中に焼けてしまう。

「再建するなら、ナニワの人々が驚くような神社のシンボル的なものを作りたい」
そんな想いを抱いた関係者は、インドや台湾などへ赴き、現地で見た石像を参考に、魔よけの獅子殿を作った。それが、この大口の獅子なのだ。


綱引き神事

ご神徳は疫病退散のみならず、商売繁盛、縁結び、農耕殖産など多岐にわたる。節分祭には壇上へ豆をまいたり、正月には神楽や居合の奉納演舞も行ったりしている。

中でも毎年1月の第3日曜日に行われる「綱引き神事」は有名。2001年には大阪市の無形民俗文化財第一号として登録されている。
綱の長さは30メートル、太さ45センチ、重さ約300キロ。縄を何本も編んで作られた極太縄だ。これを引き合うのだから圧巻だ。実際、大の大人が数十人かかって取り組む、大規模な神事だ。

縄のモチーフは八つの頭と八つの尾をもつ神話のヤマタノオロチ。
実は神社の御祭神は出雲の「素盞鳴尊(すさのおのみこと)」。みことが倒した大蛇ヤマタノオロチを象るようになったのだ。
綱を引いた後、太鼓に合わせて「難波の綱引き、ヨーイヨイ」と掛け声を合わせながら街を練り歩く様子もなかなかの見もの。


恋(鯉)占いも人気!

恋と鯉をかけた「鯉占い(恋占い)」も人気だ。ここでは鯉や鯛、ダルマなどを模した人形型おみくじも有名。鯛は一家安泰(鯛)を占い、ダルマは勝負運を占う。海外からの参拝客にはお土産アイテムだ。

ストリート系ファッションや、食べ歩きのメッカ、大阪のミナミ。
そんなにぎやかな街の一角にある神社。
長い間、ふりかかる厄災から街の人々を守ってきた巨大な獅子。
ちょっと足を伸ばして恋占いでもしてみようか。

(DATA)
● アクセス:大阪metro御堂筋線・四つ橋線 なんば駅より徒歩約6分、大国町駅より徒歩約7分
● 住所:556‐0016 大阪市浪速区元町2丁目9番19号
● TEL:06‐6641‐1149
● 開閉門:6:00~17:00


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