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1勝9敗

このタイトルの著書が最初に発売されたのは2003年秋・・・今から丁度20年前です

著者は「柳井正」・・・誰もが知るユニクロ(ファストリテーリング)の社長です

その頃の同社の売上や約3000億円、経常利益は400億超でしたのでもう既に大企業かつ優良企業の部類だったわけですが、当時掲げた2010年の目標は売上1兆円経常利益1500億円でした

私、当時この本を手に取り読んだのでよく覚えています

時の人は、丁度フリースがブレイクし、その流れもあったのか、野菜の事業を始めては即撤退したり、バーニーズNYの買収に乗り出したり、わりとイケイケで地に足がついていないんじゃないか・・・挙句に7年後に1兆円(3倍超の売上)掲げるなんで面白いけどなかなか無謀な経営者なのかな・・・という印象を持った記憶があります

しかし・・・そして今、2022年度は2兆5000億円超 経常利益が3500億円

日本では平成の30年間は経済成長せず、物価は停滞し、低金利状態が続き、しかも同社の業態であるアパレル業は全業種の中でも極めて厳しい産業だったわけですが、その中で惚れ惚れするくらいに成長を遂げています

この本を改めて今読み返してみますと、柳井氏の志向や思考そのものが、既に20年後のこの状態を築いていくことが想像できる・・・つまり「既に起こった未来」のごとくはっきりと本質突いていたことがよくわかります

書かれているニュアンスを読んでも、なんら今と言っていることと変わっていない一貫性、というか普遍性を感じます。まさにバックキャスト思考そのもの・・・

ここで書かれていることはタイトルにあるように、「負け」の羅列です

しかし、その「負け」が「負け」としてとどまらず、うまくいかなかった事象を省みて、活かしていく姿勢とその行動がひしひしと、そして何よりも、具体的に書かれています

まさに「ファイティングスピリッツ」の塊みたいな人です!

「成功の反対は失敗」でなく「なにもやらないこと」ということは誰が言ったのかわかりませんが、まさしく「成功する(失敗しない)ためには成功するまでやり続けること」を地を這うようにやってきたことがわかります

つまり「諦めない粘りと信念」が成功を誘っているのではないかと・・・

成功者の本は、大概、賞賛される成功秘話が書かれていることがほとんどですが、この著書にはこれまたタイトル通り、1割くらいしかそれが書かれていません

しかも、当時でも起業家として十分成功した人物だったわけですが、現在から振り返ってみるとまだまだ発展途上だったいうことです

柳井氏が経営をする中で「よい会社とはどんな会社か?」「よい会社にするためには何が必要か?」を真剣に考え問いてきたそうです

その中で「経営者十戒」を掲げています

1 経営者は何がなんでも結果を出せ

2 経営者が明確な方針を示し首尾一貫せよ

3 経営者は高い理想を持ち、現実を直視せよ

4 経営者は常識に囚われず柔軟に対処せよ

5 経営者は誰よりも熱心に、自分の仕事をせよ

6 経営者は鬼にも仏にもなり部下を徹底的に鍛え勇気づけよ

7 経営者はハエタタキにならず、本質的な問題解決せよ

8 経営者はリスクを読み切り、果敢に挑戦せよ

9 経営者はビジョンを示し、将来をつかみ取れ

10経営者は素直な気持ちで即実行せよ


これよく見てみると、これ、近年大リーグ大谷選手で話題になった「二刀流!」そのものです

一見二律背反したような思考や行動を同時多発的に行っていく・・・

この人に「仕方ない」という言い訳は一切ないのだと感じます

シンプルに書かれていますがひとつひとつが原理原則に即した経営者に必要な資質、そしてこれは20年前のものですが、今も(昔も!)全く褪せない普遍的な言葉だと実感します

そして、今の私に響いたことのひとつは

「商品そのものよりも企業姿勢を買ってもらう、感受性の鋭い、物事の表面よりも本質を追求する経営」

ユニクロは、衣料品メーカーであり小売まで行うアパレル業ですが、業界的にはこの近年、モノ余り、つまり欲しいものがない・・・と言われる時代に洋服、しかも流行を追うわけではない日用衣料が売れ続け、拡大し続ける意味はにわかに信じがたい・・・と思いませんでしょうか?

柳井氏曰く「我々が提供しているサービスでは他社との本質的な差別化は難しい、我々が「できる」ことは競合他社でも「できる」と思わなくてはいけない、売る側に立つと他社と大きな差があるような気がしているが、買う側からすれば大した違いはない」

では何が差を生じるのかというと

「企業姿勢」

企業姿勢とは「経営方針」「取引姿勢」「社員のものの考え方」など会社の全ての「基本姿勢」が含まれ、それが全て一貫しているのが望ましい・・・と言われていました

私たちのホテルや物販等のサービス業においても、まさに差別性、競争優位性などは「スペック」に偏りがち(語りがち?、思い込みがち?)です

しかし、それは本質的でも本来的でもない、いわゆる外面的なものです

大事なのはその外面に出てくる、すなわち内面から醸し出してくるそのマインドやスピリッツ・・・日本語で言えば「想い」や「こだわり」といった内面性!・・・もっと言えば人格、会社でいえば社格

これがお客様と寄り添えているかどうか・・・それが企業姿勢なのではないかと思うのです

企業姿勢は物体ではないので目に見えない(物理的には・・・)、まさに「感じる(感じられる)もの」だと思います

嘘はバレますが、真実は伝わります・・・企業姿勢は会社の真実です

それを磨き続けることが経営なのかもしれません

柳井氏は少なくてもこの著書を書いた2003年頃にはそこに到達していたようにこの本を読みながら感じることが出来ます

だからこそ、その盤石な土台を踏み台に、いわゆる成長停滞しているその後の20年においても安定、というか垂直成長の如く遂げているのだと思います

わが身を振り返り、改めて経営者としての脆弱さを痛感します

が、「1勝9敗」の本質を学ぶことで自ら奮い立たせ前進させていきたいと強く思っています!

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