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Vol.18「日蓮宗」

『法華経』だけが唯一正しい教えである。

そう説いた日蓮は他宗を激しく批判して、他宗からも幕府からも迫害を受けます。二度も流罪を受け、斬首寸前になりながらも、来世ではなく今を生きることの大切さを説き、法華経への信仰に生涯を捧げた日蓮。

日蓮宗の宗祖・日蓮聖人は、末法の世には『法華経』のみが必要であって、「南無妙法蓮華経」の題目を称えるだけで仏になることができると説きました。
密教や禅宗、とくに浄土教の教えを否定する日蓮は、あの世ではなくこの世、つまり、現世における救済を主張したのです。
また、救われるのは個人ばかりではなく、社会も国家も救済されなければならないとし、『法華経』を信仰しなければ国は危機に瀕すると訴えました。

日蓮が晩年を過ごした久遠寺には日蓮の魂が宿っていると信じられ、「棲神(せいしん)の地」と呼ばれています。日蓮の教えは、永遠に存在して救い続ける「久遠実成(くおんじつじょう)」のお釈迦様を信じ、現世での救済を願うことに集約されます。

日蓮が亡くなった後、法華宗日蓮正宗本門仏立宗などの多くの分派が生まれ、創価学会立正佼成会霊友会など多くの在家教団も誕生しました。

日蓮聖人

日蓮は1222(承久4)年2月16日、千葉県の漁民の子として生まれます。
その時、浜辺ではハスの花が咲き、海には鯛の群れが集まったと伝えられています。

16歳で出家し、鎌倉で禅を、比叡山や高野山で諸宗を学び、お釈迦様の真意は『法華経』にあると確信します。

1253年、「日蓮」と名乗り立教開宗を宣言。念仏や禅を間違った仏法とし、正法である『法華経』の信心を説きます。鎌倉で辻説法をはじめ、末法の世を救う教えを追求します。日蓮はすべてのお経を調べなおし、『立正安国論』を著します。

『立正安国論』(りっしょうあんこくろん)

この頃、鎌倉を中心に地震など天災が相次ぎ、人々の間に不安が広がっていました。日蓮は、政治や信仰のあるべき姿を『立正安国論』としてまとめ、鎌倉幕府の前執権・北条時頼に献上しました。

「災いの原因は人々の信仰の誤りにある」
「このまま念仏などの邪宗がはびこっていては国内に戦乱が起こり、外国の侵略がある」
「法華経に帰依すれば国家は安泰となる」

しかし、臨済宗を保護する幕府はこれを無視。日蓮は念仏信者らの焼き討ちに遭いますが、めげずに折伏(しゃくぶく)を続けます。

破折調伏(はしゃくちょうぶく)

折伏とは「破折調伏」の略で、自分の宗教の長所を述べて布教するのではなく、他宗の欠点を徹底的に論破することで人々を正しい信仰に導くことを言います。日蓮宗では『法華経』の教えを広めることを「広宣流布(こうせんるふ)」と言います。日蓮はその方法として、折伏という過激な布教スタイルをとりました。その批判は容赦なく、次の四箇格言が有名です。

「念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊」

他宗を批判して布教する日蓮は、度々迫害を受け、命を脅かされます。特に、二度の流罪を含む四つの大きな迫害を「四大法難」と呼び、日蓮宗のお寺では現在でもその日に法要を行います。

なぜ日蓮は迫害を受けても布教を続けたのか。

それは、『法華経』に次のように記されているからです。

『法華経』を広める者は迫害されるであろう。
しかし、その一方で仏の加護があり、
未来には最高の悟りに到達できる。
(『法華経』法師品第十)

日蓮は『法華経』の布教にあたって、命に関わる法難を覚悟していました。そして、法難に遭うことによって、自分がお釈迦様に布教を託された者であると強く確信が持てたのです。

身延山久遠寺

1274年と1281年、蒙古を統一し、西アジアを制したチンギス・ハンの孫フビライが建国した元が九州博多湾に攻め込みます。“神風”でおなじみの元寇(蒙古襲来)です。日蓮が『立正安国論』の中で予言していた出来事が的中し、一躍脚光を浴びます。
しかし、三度の諫言も幕府には相手にされず、日蓮は身延山(山梨県)にこもり法華経の読誦と門弟の育成に専念します。身延山に久遠寺を建立した日蓮は、入滅後、この地に埋葬されました。享年61。

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日蓮宗

日蓮宗」と呼ばれるようになったのは、実は明治時代になってからのことです。それまでは「法華宗(ほっけしゅう)」と呼ばれていました。
日蓮が亡くなった後、六人の後継者による対立や分立が起こります。

さらに『法華経』の解釈をめぐって論争が起こります。
『法華経』二十八品全体を扱う一致派と、『法華経』の後半部分を重視する勝劣派に分かれて対立し、教義においても分裂します。

明治維新に行われた廃仏毀釈運動で仏教は大打撃を被り、再編を余儀なく
されます。この時に一本化するよう迫られた法華宗の分派は、宗祖日蓮の名を冠した『日蓮宗』その名のもとに、一つになりました。

日蓮宗の分派

しかし、すぐにまた分裂します。身延山久遠寺を総本山とする日蓮宗は、『法華経』全体を扱う一致派です。

『法華経』の前半を「迹門(しゃくもん)」、後半を「本門(ほんもん)」と言います。迹門より本門に価値があるとしたのが勝劣(しょうれつ)派で、こちらがめまぐるしく分派と独立を繰り返します。
その中で法華宗、法華宗(本門流)、法華宗(陣門流)、顕本法華宗、日蓮本宗、日蓮真宗、日蓮法華宗、本門法華宗、本門佛立(ぶつりゅう)宗、大石(たいせき)寺を総本山とする日蓮正宗などが誕生します。

日蓮正宗の信者団体が創価学会で、現在は日蓮正宗から独立しています。

在家教団には他にも霊友会立正佼成会など約20教団あります。

お題目

南無」とは、帰依する(教えを信じ、従う)ことを意味します。
「妙法蓮華経」は、『法華経』の正式名称。
『法華経』は、お釈迦様が自ら永遠不滅の仏であることを明かし、人々を永遠に救い続けることを説いたお経です。

「南無妙法蓮華経」は、「私は『法華経』の教えを信じ、よりどころとします」という意味です。この言葉を「題目(だいもく)」と言い、題目を繰り返し唱えることを「唱題(しょうだい)」と言います。

浄土教の念仏「南無阿弥陀仏」は、阿弥陀仏に帰依してこの世で命を終えたのち、極楽浄土への生まれ変わりを願う言葉です。

対して日蓮は、題目を唱えれば、あの世はもちろん、この世でも救われると説きます。いま生きている世の中で幸せに暮らせるというのが大きな特徴です。

日蓮宗の葬儀

日蓮宗の葬儀の中心となるのは「引導」の儀式です。
故人が霊山浄土(りょうぜんじょうど)へ赴くことを導師がお釈迦様と日蓮に報告し、安心して旅立てるように心構えを説きます。

霊山(りょうぜん)とは『法華経』の中でお釈迦様が説法をした場所、古代インドの霊鷲山(りょうじゅせん)にちなみます。永遠の救いを示すお釈迦様が、 常に説法をしている場所と言われ、大曼荼羅本尊は霊山浄土を表しています。

大曼荼羅(まんだら)本尊

日蓮宗で飾るご本尊を大曼荼羅と言います。
大曼荼羅は『法華経』の真理を文字で表したものです。南無妙法蓮華経の題目を中心に、『法華経』に出てくる仏、菩薩や『法華経』を守護している神々の名が記されています。

脇侍は、向かって右側に鬼子母神、向かって左側に大黒天を祀ります。
鬼子母神(きしぼじん)も大黒天ももともとはインドの神様で、『法華経』の守護神として祀られています。

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日蓮宗の葬儀では、木魚の代わりに木柾(もくしょう)を叩きます。日蓮宗はお経のスピードが速く、特殊なリズムを刻むことが多いため、歯切れのいい音がする木柾が選ばたようです。

日蓮宗の焼香回数

焼香の回数ですが、日蓮宗の公式サイトでは「導師は3回、一般参列者は1回」としています。額にはおしいただきません。

線香の本数は3本、または1本です。
仏・法・僧の三宝への帰依を意味します。

法号と日号

日蓮宗の戒名は「法号(ほうごう)」と呼び、日蓮聖人の教えに導かれ、法華経を信仰する証として授与されます。日蓮の「日」の字を法号に付けます。これを「日号(にちごう)」と呼びます。

本門佛立宗の葬儀

本門佛立宗では、僧侶のことを「講師(こうし)」と呼びます。
お寺からご本尊と棺覆いを持参されます。ご本尊のサイズが大きいので、事前にポールなどで飾る準備をしておきましょう。
また、本骨と仏着をお寺に預けます。納棺時には納棺経をあげられます。

祭壇で使用するローソクには「佛丸(ぶつまる)」と呼ばれる宗紋を貼ります。

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信者は南無妙法蓮華経の題目に合わせて太鼓や拍子木、あるいはひざを叩きます。

日蓮正宗の葬儀

日蓮正宗では、日蓮聖人を崇拝の対象としています。

日蓮正宗のお葬式は、「日蓮大聖人に故人を迎えに来ていただいて、無事に三途の川を渡る儀式」であり、正しい作法で行わなければ成仏できない重要な儀式として考えています。

祭壇は華美に飾らず、色花ではなく樒で飾ります(樒祭壇)。
ご本尊はお寺が持参されます。
僧侶を「ご尊師(そんし)」と呼びます。
死に装束は着せません。
焼香は3回と決まっています。
線香は長香炉で寝かせて供えます。
日蓮正宗のお布施はご本尊へのお供えです。『御供養』と呼び、紅白ののし袋で渡すことがあります。
棺覆いは白を使用します。

創価学会友人葬

創価学会の葬儀は「友人葬」と呼ばれます。
創価学会は日蓮正宗から分離独立した信者集団で、僧侶は呼ばずに
学会の儀典(ぎてん)部に所属する信者の代表が導師儀典長)を勤めます。僧侶ではないのでお布施も必要ありません。
戒名はなく、俗名で葬儀を行います。

以前は樒祭壇でしたが、現在は色花で差し支えありません。

ご本尊は自宅、又は会館から借ります。ご本尊を祭壇に飾る時は樒を口にくわえます。

創価学会より故人の学会内での役職に応じ、名誉称号が贈られます。

お題目三唱で開式します。
焼香は三回です。
三回とも額に押しいただきます。
線香は長香炉で寝かせて供えます。

ちなみに、聖教新聞は創価学会の機関紙です。
創価学会を支援団体とする政党が公明党です。
基礎知識として覚えておきましょう。

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