小説『ダブル・ジョーカー』を読んだ
ある日、おすすめされたジョカゲ(『ジョーカー・ゲーム』の通称)のアニメ観たら実井ちゃんにハマって、転がり落ちるように原作小説のシリーズ二弾まで手を出していた。
アニメジョカゲ、顔のいい男がわんさか出てきてスパイ物とくりゃ、さぞわたしのような腐女子の格好の餌食なんだろうな、さてどのカプが覇権かな、と思いながら観ていたのだけど、結果、顔と名前を一致させることに集中していたら12話終わっていた。まじかよ、これで終わりだなんて勿体ない、もっと続きが観たい……なにより森島くん、君の眼鏡の書生姿には一目惚れであった。もっと森島くん、もとい実井ちゃんのことが知りたい。その想いが募り、原作小説にあたれば新規の情報も得られるのではないかという発想に至った。あわよくば、実井ちゃんのカレシも見つけたい。
小説を読んでみて、まず実井ちゃんのカレシに関する目論見は見事に外れた、というか結城中佐あるいは白幡と妙なフラグが立ってしまった…と思うのはたぶん実井ちゃんのオタクなら共感してもらえると思うんだけど…そのへんの詳細は流石に割愛する。小説も、アニメに負けず劣らずD機関の皆がストイックに単独任務に励んでいてフラグの立つ隙がねえ!しかも、アニメと同じエピソードであっても登場人物の名前がアニメとは異なっている。実井、という名前のスパイは小説には登場しないのだ。まさに正体不明、雲のようにつかみどころのないD機関の登場人物たち。
だが、少なくともこの「ダブル・ジョーカー」に登場する森島は、あの実井ちゃんのモデルに違いない、というわけで読み進め、「いや、外見描写からして実井ちゃん美形公式じゃね?」ということに小躍り、完全勝利宣言。色白細面、唇が朱を引いたように紅い。これはもう美形の男の代名詞のオンパレード。しかも、アニメとは違って京城生まれの庶子設定。母親はさぞ美人だったに違いない。そして、旅館の女中の心を掴み、白幡の懐に入り込むうえで今回の任務は美形でなければ務まらないものだったことがなによりの実井ちゃんお顔綺麗公式設定の証拠だ。しかもあの結城をして、色白でなかなか美形の彼、と言わしめた実井ちゃん、、その顔でこれまで数多のハニートラップを仕掛けてきたのかと思うと私は……!!(妄想でしかない) 実井ちゃんの綺麗な顔面を使い倒す結城中佐と、その顔面からは想像もつかない、エゲツないまでの実力と冷酷さで功績をあげる実井ちゃんの小説がもっと読みたい。
さて、アニメ第十二話は、飛崎が自分の過去にとらわれ任務に失敗し、D機関を去るところで終了する。それがちょうど、佐久間がD機関と出会うエピソードと重ねられるように語られるところが構成の妙なのだが、小説「ダブル・ジョーカー」の終わり方もまた、面白い構成になっているなと感じた。アニメがいうなればハッピーエンドだとしたら、たぶん小説はバッドエンド。アニメではひとりの機関員が、自分は過去に囚われてしまうからスパイには向いていないと悟り、去っていくが、小説「ダブル・ジョーカー」のラストを飾る短篇「ブラックバード」では、ひとりの機関員が過去に囚われたために任務に失敗する話となっている。しかも、真珠湾攻撃という歴史的な事件を彼は阻止することができなかった。よって日本は、敗北へとひたすら突き進む戦争を始めることになってしまう。スパイである意味をすべて喪った男の末路は、実にあっけないものだと思ったのだった。