ゾイサイトとクンツァイト様がヤバイ話を聞いてくれ
まさかセーラームーンで男二人に気を狂わすとは思わなかった。
幼女の頃にSSを観ていたがあまり記憶がなく、そういえばセーラームーンってどんな敵と戦ってたんだっけ?と気になって無料配信を観始めたのが運の尽きだった。ろくに記憶に残っていなかったまさにその敵の男達の人間模様に、こんなにも心を掴まれている。幼女の人格のわたしはまこちゃんにドキドキしながらうさぎちゃん達をがんばれーーっ!と応援しているが、すっかり腐り果てた大人のわたしの人格は、「美貌で一途な美少年と大人の色気と余裕のある美青年のカプ最高じゃね?あまりにもわたし向きでは」と画面にかじりついてもえ散らかしている。
実は今日、35話を見届けて、放心状態になったところである。予想の百万倍性癖を貫かれたので、ここで心の整理のためにいかにしてクンツァイト様とゾイサイトにズブっていったのかを記しておこうと思う。
●ゾイサイト初登場回(14話)
ネフライトとともにチラリと現れたゾイサイトのビジュアルだけで、なんかもう、ピピンと来ちゃった。
「この子可愛い……!絶対好きなやつだ」
昔っから、中性的な雰囲気の綺麗な男キャラというのにとことん弱い。
14話観賞後。ゾイサイトを検索して、どうやら公式彼氏がいるらしいことが発覚。思わずガッツポーズ!!やっぱこんな綺麗な子は素敵なカレシと番じゃなきゃ嘘だわ!!
その時のわたしのツイート。
"ダークキングダムの男たちの人間関係が気になるダメな大人のオタクのわたしと、
タキシード仮面様に普通にメロってるょぅじょのわたし"
ただこの時のわたしは、まだこの二人の関係が一種のネタ、制作陣がふざけて男二人をイチャイチャさせてた、くらいで済まされるものだと油断していた。甘い!甘すぎる!!
●クンツァイト初登場回(22話)
これがWikipediaに載っていたゾイサイトの彼氏!!!!!と、むちゃくちゃテンションあがっちゃった回。甘えたなネコみたいな綺麗なゾイサイトに古のBLみたいな(まあ90年の作品だし)スパダリの彼氏の組み合わせ…クンツァイト様の膝で泣き崩れるゾイサイトの、あまりにも濃厚な絵柄に狼狽る。
いやだいたいね!!!??受けの頭撫でる攻め!!!自カプで百万回書いたやつだよ!!!!何百万回でも読みたいやつだよ!!!公式ありがとう!!!クンツァイトとゾイサイトは自カプです!!!!
●23話〜34話
当初の油断しまくりのわたしは、せいぜい22話のワンシーンくらいで公式カレシだとクンツァイトが持ち上げられてるんだろうな、制作陣の方もこれ以上ふざけて男二人を女児アニメで絡ませないんだろうなと踏んでいた。
ところが23話以降もクンゾイの直接的な絡みが止まらない。
あくどく、高飛車で、妖魔を使役する時には低い声だって出せるゾイサイトが、クンツァイト様の前では完全に乙女!!!恋するセーラー戦士達も、恋するゾイサイトの乙女ぶりには敵わないんじゃないかとすら思ってしまう。
とはいえ、とはいえだよ。ダークキングダムは敵なのだ。彼らに愛情とか優しさといった感情が備わっているとは思えない…その証拠に、ネフライトは愛を知らず、なるちゃんへの未知の感情に狼狽ているではないか。
クンツァイト様の手に頬擦りするゾイサイトというカロリーの高すぎる描写を摂取した上でのわたしのツイートはやけに冷静だ。
"そしてゾイサイトがいよいよカレシとイチャイチャしてて可愛いんだけど、
ゾイサイトはたぶんクンツァイトに心酔してそのために彼の目となり手足となって働いているんじゃないかと…ゾイサイトの気持ちをあのクンツァイトはどう受け止めてるのか気になるな…"
"クンツァイトが本当はゾイサイトのことちょっと遊んでやってるだけで切り捨てちゃうパターンが王道のような気もするが(ダークキングダムにはひとの心のようなものがなく、だからこそネフライトは未知の愛という感情に出会ってうろたえた)
それではゾイサイトが可哀想すぎる…"
ネフライトがなるちゃんへの愛に目覚め、なるちゃんのために死ぬフラグが立ったからこそ、ダークキングダムサイドには心がない、愛のためにゾイサイトが死ぬことはない(ネタ被りになる)という可能性も高まった。それにクンツァイト様、ちょっと心が読みづらいというか、喋り方も表情も決して豊かではないから、疑心暗鬼になったわたしには、「この人、裏があるのでは?」という気持ちにさせられたんだよな。だからゾイサイトは美しい顔と身体だけ愛されてて、その忠心は使い捨てられるのではないか…セーラームーンとタキシード仮面が愛を育むのと対照的に、そんな悲劇が用意されてるのではないか…と恐ろしくなってしまった。
と、言いつつ、こんなツイートもしている腐女子のダブルスタンダード。
"百回抱かれてるんだよなぁ…でも抱かれてないのも可愛いよなぁ…"
仮にそこに愛がないとしてもですよ、あのパーソナルスペースの狭さは百パー、クンツァイト様、ゾイサイト抱いてるでしょ?!?そこだけは譲れん!!!!という想いと、
いや、クンツァイト様はスパダリだからゾイサイトのことめちゃくちゃ大事にしてて、抱いてくださいって身体を差し出すゾイサイトに、今はまだダメだよ、この戦いが終わったら必ずおまえを幸せにするからなって優しく頬を撫でてやる(本当はすごく抱きたい)のもええやん〜〜ダークキングダムには愛がないとかしらんがな〜という想いで引き裂かれてしまった。
ネフライトの死後、ゾイサイトがメインになってからはゾイサイトのクンツァイト様への気持ちに一切の打算がないことは明白になる。
なにしろ普段やっていることが敵キャラらしくあくどいので悪女のように自分の美貌で男を惑わせ
ているだけ説も一応考えてはいた。でも回を重ねるごとに、ゾイサイトはすごく正直に心のままに、ネフライトのことを好きなのだという気持ちをあらわすようになる。なんか…登場時当初の直接的な絡みのインパクトがデカかったけど、この子すごく…本当に恋する乙女なんだなって…好きな人に綺麗といってもらいたい、構ってもらいたい、自分が一番でありたい、でもなにより、彼のことを愛したい。そういう切実さが露わになってくるゾイサイト。
そしてクンツァイトはといえば衝撃の29話、嫉妬するゾイサイトに薔薇の花を贈る。まるで惚れた彼女の機嫌をとりたいみたいな行動や、ゾイサイトがされて嬉しいことをちゃんと把握して花を差し出せる優しさに、「これは愛」だわ…と思わざるを得なかった。
ほかにも「これは愛」と思ったポイントは、個人的には「共闘できるところ」だと思う。ジェダイトもネフライトも自分こそが功績をあげるのだと単独行動だったけど、ゾイサイトはクンツァイト様のサポートを受けることを厭わないし、クンツァイト様のために命を差し出したいとすら思っている。一方のクンツァイト様も、適材適所の作戦で彼をフォローする。どちらも、相手を蹴落とすどころか相手のことを信頼して同じ目的のために戦っている。そういうところが、二人並んだ時のカップル感を高めていて最高に良い。
と、クンゾイ勝利確信かと思いきや、この期に及んでまだわたしは、「でもだってダークキングダムの世界に愛がないなら彼ら二人は一体なんなんだ」という思いから解き放たれることができずに情緒不安になっていた。
35話を迎える前のわたしのお気持ちツイートはこちら。
"ゾイサイトが可愛すぎるので永遠に敵はゾイサイトで良いという気持ちと、
はやくゾイサイトの今際の時に抱きしめてくれるクンツァイト様が見たいという気持ち"
(35話予知…?!良かったね、夢が叶った)
"ゾイサイトの気持ちも愛ではないのかもしれんけどでもゾイサイトの方は好きに近しい感情っしょ?!"
(ダークキングダムの世界に愛がないので、彼らの間にある感情は人間世界でいうところの愛ではなく、それを超えたもっと深い絆……その絆に名前をつけるならば"クンゾイ"、みたいな)
"ゾイサイトが他の誰のためでもなくクンツァイト様のために命を捨てるとか言い出しておいおいおいどうなっちゃうんだ報われてくれないとわたしが身投げするぞ"
"受けのでかい愛を受け止めてあまりあるデカイ愛を返してくれる攻めじゃなきゃイヤダーーー!!"
●35話
呆然としている。
こんなにもクンツァイト様の愛が深かったことに。
こんなにも彼らの間にあった絆が美しかったことに。
正直、ゾイサイトは38話くらいまで生きているんだと思ってたので、まさかこの回で死ぬとは思わなくてあっけなく殺されてしまったことにまず驚いた。
ゾイサイトに死の宣告が下され、その責任を負おうとするカレシのクンツァイトに、
「おや……このひとは、たとえ自分の不利益になるにも関わらず、上司に逆らってまでゾイサイトをこんなにも庇うのか…こんなこと、ゾイサイトを利用したり、外見的な美しさだけを愛している者にはできないことだな….これはマジで、本格的にLOVEだな…」
といよいよわたしもクンゾイは純愛です!と確信した矢先だったのだ。ゾイサイトが殺されたのは。
クンツァイトのショックを受けた顔……ああ、本当に大切にしてたんだ……
そして今際のときの二人……無念の死だろうに、幸せだといってのけるゾイサイト…いや彼は本当に幸せだったんだろう、愛する人がそばにいてくれるのだから…そしてあんな顔は相思相愛じゃないとできない。
ゾイサイトは自分の綺麗な外見を愛していたし、クンツァイト様がその外見を好きなことも知っていたし、クンツァイト様もゾイサイトの美しさを愛ていたはず。でも、クンツァイト様は外見の綺麗さだけじゃなくて、ゾイサイトという人格をまるごと愛していたんだなぁと思った。だから「綺麗に死にたい」って言われたとき、たとえば目蓋を閉じてあげるだとか、そういう外見的な美しい死に方を用意したのではなかった。クンツァイト様はマントで二人を覆い、ゾイサイトのために夢のように美しい、花々に満ちた空間をつくりあげる。それは綺麗なものを愛するゾイサイトのために用意した風景である。そしてかつて二人が共に過ごした美しい、愛に満ちたときをも思い起こさせるようだ。この世を旅立つゾイサイトの胸に、永遠に幸せが刻まれるように。もしかしたら、案外ゾイサイトの方がこの時はじめて、クンツァイト様の愛の深さを思い知ったのかもね……
ゾイサイトの最期の言葉が、
「お慕いしておりました」
なのが、素敵だよね…愛しているでも好きでしたでもなく、控えめで深く、自分の全てを彼に差し出す優しい言葉だなと思う。
わたしはこのシーンを観て、なにか腑抜けたようになり、再生をとめ、ぼんやりしたあと、
「あーー、これで二人の物語も終わっちゃったんだな。悲しい…」と思っていた。実はあんまり泣かなかった。なんか、受け止めきれねえ……ってかんじで……テンションの上がらぬまま(セーラー戦士に謝れ)続きを再生した。
そしたらさ……ネフライト、セーラー戦士と戦うとき、
『ゾイサイトの仇も取らせてもらう』って言ったじゃん。
頭パーンなったよね。錯乱したよね。
完全に不意打ち。
愛する死者の想いが残された者を生かす。
愛する死者の魂が、生者の魂を燃やす。
アツイ、あつすぎる…!!!!
任務に忠実なお堅いクンツァイト様が、私情をはさんで戦っちゃうの超〜〜〜ヤバじゃない?!!
あっ、もうクンゾイは尊いです、はい、全面降伏で認めます……このシーンが一番泣けたんだ、なぜか……ゾイサイトのいないところでゾイサイトへの深い愛を証明するのはやめろわたしに致命傷を負わせるから……
思えばゾイサイトを看取ったあと、風の轟々と吹き荒ぶなかマントをひらめかせて立ちすくむ後ろ姿のクンツァイト様のカット、ひとひらだけ花が散っていた。ゾイサイトの象徴であり、彼の愛と思慕の象徴でもあったハート型の花びらがひとつ……あれは、これから孤独に生きてゆかねばならないクンツァイト様の胸に、ゾイサイトがこれからも生き続けていくことの現れだったんだろうな……
クンゾイの物語はもう35話の時点で尊みが臨界点に達しているのですが、どうやら風の噂でこの先もやばいらしいという微バレを耳にしまして。また阿鼻叫喚をかけたらいいな。