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大嶋あやのSASUKEヒストリー〜KUNOICHI完全制覇までの10年間〜vo7.KUNOICHI完全制覇
2025年1月13日(月)、オリゼ所属の大嶋あやのは女性版SASUKE「KUNOICHI」にて50名の出場者の中で唯一完全制覇を果たし、歴史にその名を刻みました。
このnoteは、大嶋あやの本人によるKUNOICHI完全制覇までの10年間を振り返るシリーズ第6弾です。
1.初出場に向けて
2.SNSに苦しんだ時期
3.KUNOICHI初出場
4.SASUKE復帰
5.1stクリアまでの道のり
6.日本人女性NO.1と呼ばれる重圧
7.KUNOICHI完全制覇 🈁
vol.7のテーマは「KUNOICHI完全制覇」です。
今回は長編です。ですが、夢中になって読めちゃいます。絶対に読んでください!神回です!(オリゼ広報yuki)
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さて、このコラムもいよいよ最終回となりました。ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございます。
最後は、私、大嶋あやのが2025年1月のKUNOICHIにおいて完全制覇をするまでの1ヶ月についてお話します。
2024年10月末のSASUKEの結果は、今までの準備を裏切るような残酷なものとなりました。しかし、次のKUNOICHI収録までは1ヶ月。このタイトスケジュールのおかげで落ち込む時間がなかったことが、かえって良かったのかもしれません。
そこからの間は、「KUNOICHIで最高の結果を出すために必要なものは何か?」だけを考え、気持ちを切り替えて再び準備に入りました。
まずは7年前のKUNOICHIの動画をひっぱり出してきて、どんなエリアがあったかを当時の感覚と共に思い出す作業から入りました。7年前ともなると今とは全く違う体ですし、感覚も別物なので、次は、今の体の感覚で7年前のKUNOICHIのエリアに挑戦するイメージを作りました。
体のポテンシャルが上がり、感覚も鋭くなると、気持ちに余裕が出るということを明確に感じました。その時、『今回のKUNOICHIは完全制覇できる』と確信したのです。
もちろん何度もSASUKEのセットを自作している知人のもとへ出向き、練習もたくさん積みました。KUNOICHI特有のエリアは作られていないのでイメージと公園の遊具で代用します。
一番リタイアの確率が高いのは、決まってメンタルが平常じゃなかった時なので、練習の中でうまくいっている時の気持ちの感覚(ギアのポジションのような感覚)をなるべく正確に記憶することに集中して準備をしたと思います。
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そして迎えた本番当日。
私は7年前の懐かしさと悔しさを噛み締めながら現場入りしました。多少の高揚感と共に、当時とは全く別物の景色に新鮮さも感じながら、スタッフの皆さんに挨拶をして回りました。このたくさんの方々のおかげで、今日私は人生のターニングポイントを迎えられているんだなと。
ルール説明を聞き終え、収録が始まります。
「7年前はこの会場にいるほとんどの出演者が私のことを知らなかったんだよなぁ。」なんてしみじみ思っていたのも束の間、どんどん挑戦者たちが水に落ちていくのを目の当たりにし、少しずつ私の心はセーフティラインから逸脱し始めていることに気がつきました。(セーフティラインというのは私の中でこの線上にいればメンタル最強!と思えるラインのことで、自分なりにそう呼んでいます。)
自分の出番までは、この『セーフティライン』から落ちないようにするメンタルの調整に最も注力しました。自分だけでは修正しきれない時は、応援にきていたSASUKEのメンバーに手伝ってもらい、今自分が何に不安になっていて、何に怯えているのかを明確に洗い出し、ではそこからどういう思考をしたら良いかという作業を1stステージの自分の番が来るまでの間、常に行っていました。
アップの時は視界を一旦暗くするなど自分なりの整え方を妥協せず行い、1stステージに挑みました。無事クリアしてからは『完全制覇は確実』と自信が持てたので、2ndステージ以降は自分を120%信じてパフォーマンスしました。
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着々とエリアをクリアしていった私は、3rdステージのスポンジブリッジ(ドミノの様に連なった板の上を歩くエリア)の前にもう一段階集中力のギアを上げ、最も苦手意識のあるこのエリアに臨みました。
「これがクリアできたら98%はファイナルにいける。」そう確信を持っていたので、絶対に落ちるわけにはいかなかったのです。残りの2%は最終エリアで油断したら落ちる可能性もあるということで「2%は落ちると思っていた方が緊張感が抜けずに集中できる」と考えていました。
無事にスポンジブリッジをクリアし、残すは後ひとつ「フライングバー」だけとなりました。先ほど述べたように、油断したら誰でも落ちる可能性のあるエリアです。なぜなら、名前の通り、バーを持って飛ぶからです。一瞬空中に浮くため、羽のない私たち人間には確実に落ちない約束ができないエリアです。
しかも、エリアこそ違うものの、7年前のKUNOICHIでは、私はこの最終エリアで落水しています。その思いもあり、油断の怖さを痛いほど理解していました。
同じ失敗はもうしたくない。
自分の中でポイントをおさらいし、最後は「練習では落ちたことがない。SASUKEのW杯でもできているから、同じようにやれば大丈夫。」と冷静に自分を見つめ直し、適度に自信を持って挑みました。
このフライングバーのコツは、「飛ぶと決めたら全力で」です。
自分のSASUKEの時のお守りの言葉なのですが、恐る恐るやったり躊躇ったりしたらSASUKEの神様に見破られると思って毎回挑んでいます。
今回のKUNOICHIも「やると決めたら全力で」すべてのエリアをクリアしてきました。最後の最後にこの言葉を思い出し直して、全力で飛び続けた結果、私はマットの上に無事着地していました。
人生で初めてのファイナリストです。(SASUKEではFinalステージに挑戦する人のことをファイナリストと呼び、とても栄誉のある呼び名として使われています。)
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さぁ、いよいよファイナルステージです。
ファイナルステージは大得意ですし、もう水がないので思いっきりやっちゃおう!!!と勝手に私のギアはMAXになり、アドレナリンを人生で一番感じた瞬間でした。
イメージでは9秒残してクリアできるなと想像していたので、登っていくリズムや感覚をSASUKEの完全制覇者である森本さんに教えてもらいながら、自分なりの感覚に落とし込んで直前に整えました。
ファイナルステージのスタート音は独特で、和太鼓を叩いたような渋い音でスタートします。その音を向けてもらえる人間が世界中に何人いることか。オリンピックの金メダリストより遥かに少ない人数しかこの音を鳴らしてもらえないのかと思うと、「今この瞬間を存分に生きよう。悔いのないようにスタートの音、歓声、自分の足音、現場の緊張に包まれた空気、すべてを自分の心に刻もう」とファイナルステージに挑みました。
無我夢中で登り続け、結果は8.9秒残してクリア。
15年ぶりのKUNOICHI完全制覇者誕生です。しかもそれが自分だなんて、いつ想像したでしょう。信じられない気持ちと、緊張感からの解放と、とても清々しい気持ちでした。
この日のために自分は準備をして、スタッフさんが番組を作り上げてくれて、今日のためにどれだけの人が準備をしてくれたか、ようやく期待に応えることができ、心の底から嬉しかったです。
辞めなくてよかった。
初出場から10年間、ほとんどが苦しい期間でした。体格の差を理解されない、もしくはクリアできれば「簡単にしてもらってるんじゃないか。」と疑われ、努力を理解してほしいとは思わないけど、自分の想像した結果を自分の体が出せないことがずっと悔しく、もがき続けた10年間でした。
この日はそれが吹き飛ぶ一夜でした。一生忘れないでしょう。
最後に私が皆さんに伝えたいことは、「毎日負け続けても良い。辞めなければ、いつか光は射す。時々休憩しても良い。のんびりマイペースに続ければ、それはいつか価値のあるものになる。」
それが今回のKUNOICHIを通して私が感じたことです。
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今まで読んでくださりありがとうございました。またいつか、皆さんのお目にかかれる日を楽しみに、私も休憩しながらのんびり毎日負け続けようと思います。また皆さんの前で自分に打ち勝つ日が来ることを願って…。
ーー大嶋あやのSASUKEヒストリー、これにて完結です。いかがでしたでしょうか。私は最終回、涙を堪えながら入稿しました。臨場感のある文章に引き込まれた読者の方も多いのではないでしょうか。あやの選手にしか語れない熱いお話でしたね。今、これを読んでいる方で、うまくいかないことに悩み苦しんでいる方がいらっしゃったとしたら、このnoteが少しでもあなたの勇気につながれば幸いです。
みなさん、引き続きあやの選手の応援をよろしくお願いします!(オリゼ広報yuki)