オリジナル絵本 『レナコックの涙』


「レナコック 」という物がいる。

見た目は虹色の鳥のよう。

レナコック は、ゴロリゴロリと音を立てて

世界中を歩き回っている。

レナコック は、悲しみや苦しみを食べると

ダイヤモンドの涙を流すという。

悲しんでいる人や苦しんでいる人は食べられていなくなってしまうのです。



レナコットの涙


ある日、トルールという街に、

ゴロリゴロリと音を立てて、レナコック がやってきた。

トルールの街には高層ビルが立ち並び、

その横にはとたん屋根のバラック小屋が立ち並んでいた。


トルールの街にアバンという少年がいた。

アバンはお母さんと二人暮らしだったが、

アバンの家は貧乏で、

アバンがゴミの山から鉄なんかを探しては家計を支えていた。



この日もアバンはゴミの山から鉄なんかを探していいた。

すると黒く光るネックレスを見つけた。

「今日はなんていい日だ。お母さんプレゼントしよう!」

アバンは、どんな時でもいつも明るく前向きだった。

画像3




家に帰るとアバンのお母さんは、おーいおーい泣いていた。

「レナコック がこの街にきているそうだ。

ああ、どうかレナコック よ、

私を食べてダイヤモンドの涙をこの子に渡してください。

家は貧乏で、この子を売りに出さないといけない。

この子を守るためにどうか、私を食べてください。」

そう祈りながら、おーいおーいと泣いているのです。



母


アバンは言いました。

「お母さん、泣かないで。

僕が働くから大丈夫だよ。

お母さんにプレゼントのネックレスだよ。」

そういってネックレスをプレゼントしましたが、

お母さんは、おーいおーい泣いたまま受け取りませんでした。



そんなお母さんの泣く声を聞いてか、

ゴロリゴロリ ゴロリゴロリ と遠くから大きな音が聞こえてきました。

レナコック が現れたのです。


ゴロリゴロリ  ゴロリゴロリ ゴロリゴロリ

レナコック は、今にも壊れそうなトタン屋根の

アバンの家の前で止まりました。

お母さんは震えながら

「ダイヤモンドをください、ダイヤモンドをください」

とレナコック に祈り続けました。


それを見てアバンは、レナコック の前に立ち

大きな声で叫びました。

「ダイヤモンドなんかいらない!

お母さんを連れて行かないで!

あっちへ行け!」

アバンは小さな体で、お母さんを必死に守りました。


するとレナコック はアバンをしばらくじーっと見つめたかと思うと、

くるりと向きを変えて、滝のように大量の涙を流しました。

アバンはレナコック の涙で溺れそうになりました。



アバンはレナコック の涙の中で、夢のような世界を見ました。

そこにはアバンとお母さんが笑顔で美味しい食事を食べたり、

アバンが行きたかった学校に通い、勉強をしていたり、

友達とサッカーをして遊んでいる姿でした。

レナコック の涙の中には、アバンの理想としている世界が広がっていました。



レナコック の涙でずぶ濡れになったアバンは、

はっと気付きました。

「レナコック は、悲しみを食べて、

みんなを幸せにしようとしているの?」


レナコック は何も言わず、

ゴロリゴロリ と大きな音を立てながら

どこかに行ってしまいました。



その日の夕方、

アバンはゴミ山から拾った鉄を持って、

換金してくれる男のところにやってきました。

すると男はもう一人の男と何やらヒソヒソ話をしていました。

「レナコック がこの街に来ているらしいぞ。

今がチャンスだ、今こそ戦争を起こそう。

そうすれば、レナコック がたくさんダイヤモンの涙を流す。

俺たちは大金持ちだ。」

それを聞いたアバンは、足がガタガタ震えて来ました。


次の日の朝、街の真ん中の広場で

バババーーン!!!

と大きな爆発音が聞こえました。

何者かが広場を爆発させたのです。

トトールの街は昔から、さまざま人種が集まっており、

戦争を始めるのは容易なことでした。

バババーーン バババーーン

たくさんの爆弾が街も人も破壊して行きます。

アバンはお母さんを連れて、ビルの影に身を隠していました。

広場ではたくさんの人が怪我をして苦しんでいます。

すると、

ゴロリゴロリ ゴロリゴロリ

レナコック がどこからともなくやって来ました。


苦しんでいる人をレナコック はどんどん吸い取っていきました。

苦しんでいる人はレナコック に吸い取られると、穏やかに消えていきました。

その度にレナコックの体 はどんどん大きくなり

大粒のダイヤモンドの涙を流しました。

するとどこからともなく男や女が走ってきては

ダイヤモンドをとって逃げて行きました。


爆弾は止まりません。

レナコック は苦しむ人を吸い込むたびに

風船のように大きく大きく膨らんで

今にも体が爆発しそうになっていました。


アバンはビルの影からレナコック を見ていました。

いてもたってもいられず、

アバンはレナコック の前に走って行きました。

「レナコック 、悲しみを吸い取るのをやめて!

レナコック がはじけて死んでしまうよ!」


するとレナコック はぐるりと向きを変え、

アバンをじっと見つめました。

アバンを見つめるレナコック の目は、

ダイヤモンドよりもキラキラと輝き、

悲しみや喜びが混ざったような目をしていました。


その時

バーーーン!!バーーーン!!

と2回銃弾の音が聞こえたかと思うと

その場でアバンがばたりと倒れました。

アバンが動かなくなったのです。


レナコック はしばらく じっとアバンを見つめました。

そして優しくアバンを包み込むと

アバンの体を吸い込みました。


その瞬間、

レナコック の体は

バババババーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

激しい爆風と爆音、熱風とともに粉々にはじけ飛びました。

トトールの街を一瞬で消えさり、

爆風は、世界の3分の2の街や人すべてを消し去りました。


世界には何もなくなりました。

あるのは大地と、輝く星だけ。


乾いた大地に小さな塊がありました。

その塊はすくっと立ち上がり、あたりを見渡しました。

黒いネックレスをしたそれは、

ゴロリゴロリと音を立てながら歩き始めました。

ダイヤモンドの涙を流しながら。


レナコック の涙 ラスト