M-1グランプリ2019 レビュー(前編)
いや、今さらか〜〜〜〜い(ズコーッ)! となることを承知で記事を上げることにした。
最近の記事では全く触れていなかったけれど、僕はお笑い好きである。
昨年のM-1の前には、4本ほどプレビュー的な記事もアップしている。
これ、手前味噌ながら、後で見返してもなかなか的を射た記事だったように思う。
M-1後にはもちろん、レビュー記事を上げようと思ったが、ちょうどその頃は執筆熱が冷めていたこともあってやらずじまい。
今でも、笑いについてはちょくちょく書きたいとは思っているのだけれど、なかなか手を付けられずにいた。
そして、何のきっかけもなく、今、改めてレビュー記事を書こうとしている。
本当に、あらゆる文脈を無視しての「今」である。
しかも、そこそこ長くなるので前編と後編にわけるという暴挙。
M-1グランプリ2019をご覧になった方は、5ヶ月前の記憶を掘り起こしながら読んでほしい。
まずは、決勝ラウンド。
1組ずついこう。
1.ニューヨーク
トップバッターながら、プレッシャーに負けることもなく見事に場を温めた、という印象。
「1組目の歌ネタは不利」と言われながらも、ネタを変えることはせず、しっかりウケをとっていた。
ただ、たぶんだけれど、このネタを劇場で(つまり彼らのことをほとんどの観客が知っている場で)やったときは、もっとウケていたのではないだろうか。
というのも、これ、ニューヨークの芸風が「毒を吐く」ことを知らなければ面白さが半減するネタだからである。
ニューヨークの芸風を知っていれば、彼らがやることによって、直接的には口にせずとも、「J POPをイジっている」ネタだということがわかる。
しかし、ニューヨークを知らなかった人には、歌と動きの滑稽さで笑いをとるネタ(間違っちゃないんだけど)に見えてしまった可能性がある。
M-1ではけっこうキーになることの多い「知名度」。
今回は「知名度がないこと」が少々のマイナスになってしまんだろうなー、という例だった。
でも、ちゃんとおもしろかったです。
2.かまいたち
早くもド本命。
この早い順がどう出るか、と思ったが、さすがの一言だった。
ミルクボーイの爆発さえなければ、横綱相撲の大会になっていただろう。
ネタ自体は、見たことがある人も多かっただろう。
ファンとか、ましてや同じ舞台に立っている芸人は、何度も見ているんじゃないだろうか。
僕も2回くらい見たことはあった。
それでも、本当に見事だった。
めちゃめちゃおもしろい。
まさにかまいたちの色が出たネタだし、言葉選びも、間のとり方も完璧だったように思う。
水掛け論に見えてしっかり展開していくので、中だるみもなく、かつ最後の畳み掛けもあるので、何度見ても楽しい。
文句なしの最終決戦進出だったと言えるだろう。
3.和牛
敗者復活より。
まず、敗者復活枠を最後にせず、普通にくじ引きの中に入れる変更があったが、これはよかったと思う。
過去の例を見れば、どう考えてもトリは有利になるからだ。
盛り上がりには欠けるのかもしれないが、本当は敗者復活枠をトップバッターにすることで、色んな不公平感が解消されるとも思っている。
さて、和牛。
今回のM-1では、世間や審査員の評価と自分の評価のギャップが1番大きい組だった。
うーん、正直このネタおもしろかったですか? という感じ。
敗者復活戦の時点で個人的にはそれほどでもなく、「及第点だから人気票込みにしたら和牛がいきそうだな」くらいの感想だった。
16年〜17年のときと比べると何段か落ちるかなぁ…と。
その2年が面白すぎてハードルが上がりきっていることもあるだろうし、もしかしたらもっと密に和牛を見ているファンからすると違う見え方だったのかもしれないけれど、それでも僕の中ではギリギリまで3位に残るほどのものではなかったように思う。
上沼さんが言うように、もしかしたら奢りがあったのかもしれないし、それはわからないけれど、とりあえず僕にはハマらなかった。
和牛は間違いなく現代トップクラスの漫才師だし、僕自身も彼らの漫才は好きである。
だからこそ、ウエディングプランナーのネタをやった17年に優勝しておいてほしかったなーと、今になって思う。
4.すゑひろがりず
今大会いちの色物コンビ。
彼らのスタイルをもっとも端的に示す、自己紹介とも言えるネタで爆笑をとって、しっかり会場を沸かせた。
見ていたときは、下手すると1位に食い込むか…とすら思ったが、さすがにそこまでは伸びず。
やはりスタイル的に高得点はつけづらい側面はあっただろう。
それに、現代のあれこれを狂言の世界観に入れ込むという「型」でウケをとる芸風ゆえ、2本目は確実に厳しかっただろう。
その辺を考えても、優勝候補が続いた後の「4番」という絶妙なタイミングで、あれだけ会場を盛り上げて、あのくらいの得点で引いていくというのは、番組的には100点の活躍だったと言えるだろう。
5.からし蓮根
良くも悪くも、「いつも通りの彼ら」だった。
M-1で活躍する組は、だいたい「いつも見るより1.5倍くらいおもしろかった」と思わせられる。
前年の霜降り明星や、2008年のオードリーあたりはまさにそんな感じだった。
面白いんだけど、爆発しない。
なんとか最後のくだりで大きな笑いをとったが、本人たちとしては不完全燃焼だったのではないだろうか。
審査員や世間の評価通りこれからの2人だと思うので、今年からの活躍に期待。
彼らも、世間にキャラクターが知れ渡ることでウケやすくなるタイプだろうから、露出が増えればその分チャンスも増えていくだろう。
6.見取り図
面白い。
言葉選びの妙と、2人のコントラスト、構成、どれをとってもまさに彼ららしいネタだった(そんなにたくさんネタ見てないけど)。
個人的には、ぺこぱと並んで3位くらいの出来だったように思う。
プレビューでは、「今年インパクトを残して、来年本格的に優勝を狙う、というのが、理想的かつ現実的なシナリオかも」と書いた。
出場も2回目で、今年は少しずつ露出の機会も増えている(もう少し見たいけど)ようなので、次回からは決勝に進めば「常連組」という扱いになる。
ハードルは上がるのでネタのクオリティと新しさはもちろん必要だけれど、それを乗り越えるポテンシャルは充分あるはず。
今年の大会では、大いに期待したいと思う。
前編はこのくらいにしておこう。
後編は残りの4組と最終決戦について書く。
勢いがつけば、次回からの展望みたいなことも書くかも。
お笑いのネタはとてもいいペースで筆が進むので、ちゃんと勉強してお笑いナタリーとかの記事書く人になるのもいいなーと、甘っちょろいことを考えている。
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後編はこちらから!