あえて過矯正で眼鏡を合わせたその理由とは?視能訓練士歴20年で初めての経験
このレフ値に対して、私が合わせた眼鏡処方の度数は
R:S-8.50D C-2.0DAx180°
L:S-6.75D C-2.0DAx180°
乱視の度数はともかく、近視はレフ値から考えても明らかに過矯正ですよね。
この度数が正しかったとは言い切れませんが、なぜ私が過矯正に合わせたかその理由をお話しします。
斜位にもちこめる、の?
「ケンさん、なんだか斜視がありそうなので代わってもらっていいですか?」
視能訓練士ではない、後輩の子から頼まれたので交代しました。
新患で20代の男性。主訴は眼鏡を作り変えたいと。今の眼鏡で困っているわけではないけど、見にくいときもあるので眼科に来たそうです。
その眼鏡はこんな感じでした。
R:S-8.25D C-1.25DAx180°
L:S-6.50D C-1.25DAx180°
Vd=(1.0×K.B)
Vs=(1.0×K.B)
このレフとKBの度数を見て、直感的に思いました。
「球面度数を下げて、乱視を少し上げてあげたらうまくいくだろう」
そういえば、斜視がありそうって言ってたな。
詳しく聞くと、小学生のときから指摘はされていたけどそのままにしていたと。最近人に指摘されることが多くなったらしいとのこと。
たしかに、パッと見たときにはphoriaに持ち込めているので、間欠性なんだろう。で、斜視角測定してみました。
近・遠ともに片眼に40△Base inしても足りない…。
つまり、少なくとも80△以上の間欠性外斜視があるってことになる。
(すいません、そこまでしか測定していません)
うちはそんなに斜視の患者さんはこないから、普通にいるのかもしれませんが、80△以上をphoriaにもちこんでいる成人の方を見たのは初めてでした。
念のためバゴリーニで確認してみても、遠近ともにクロスパターン。
で、ふと思った。
これだけの斜視角をphoriaにもちこむってことは、もしかして…
半身半疑ながらも、眼鏡をかけて再度、両眼視力を測定してみました。
BV=(0.7×K.B)
やっぱりそうだ。
んで、レフ値にちかい度数の検眼レンズをつけて暗室でスキアをやってみました。
スキアで初めて体験したこと
まずは両眼開放の状態でスキアをしてみたところ、近視の度数が1.0D~1.5D足りない結果となりました。
(私のスキアの中和は、-1.5D。長くやっていると自分の特徴がつかめます)
で、次に片眼を遮蔽してもらいやってみました。
案の上、綺麗に同行し適切な度数で中和したため、両眼開放と度数差がはっきり違うことがわかったのですが…
実は今回一番驚いたことは
両眼開放のときには、瞳孔径がとっても小さかったのですが、片眼遮蔽してもらった瞬間、瞳孔径が倍くらいに大きく広がったのです。
(感覚でいうと、3mmが6mmくらいに)
興奮して、「もっかい見せて、もっかい見せて」
と、患者さんに懇願してスキアで遊んでいました。
(遊んでいたのは冗談ですが、気さくな方だったので素直に事情を話しつきあってもらっていました)
そっか、それだけ輻輳かけてると縮瞳するのは当然か。
今まで全然意識してなかったな。
そして、本人から決定的な一言を引き出しました。
「遠くが見えづらいときは、片目をつぶっていた」
無意識的に、両眼で見るよりも片眼でみた方が見やすいということに気づいていたのでしょうね。
視力表を見せながら、2人で
「両眼だと見にくいけど、片眼だと見やすいでしょ?」
「うわぁ~ホントですね」
と和気藹々しながら、眼鏡処方をしたのでした。
で、院長から最後に
「opeした方が絶対いいと思ったから、すすめたよ」
はい、同感です。
正直、この眼鏡合わせが適切だったのかどうかわかりませんが、大きな斜視角を斜位にもちこんでいる場合、斜位近視の存在を無視してはいけないんだと確認できたので、こうして書かせてもらいました。
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