Rett Syndrome(レット症候群)
どうも、でし丸です!
今回は以前は発達障害として扱われていたものの、原因の特定が進んだ事で現在は発達障害とは別カテゴリーになったレット症候群について書きます!
レット症候群、聞いた事ありますか!?
ぼくは今年の3月頃にその患者さんの検査をさせてもらう事になり初めて知りました💦
その時すぐに帰ってから調べたのですが、臨床所見とご本人の特徴がバッチリ一致してて驚いた記憶があります。
それでは今日もお勉強の時間です!
<概要>
レット症候群は1966年にオーストリアの小児精神科医Andress Rettにより発見されました。遺伝子変異が原因の疾患で、一度習得した発語や運動機能が次第に退行していく症状が特徴です。1998年に原因遺伝子が解明され、今は血液での遺伝子検査によって診断を確定されることが多いそうです。症状の具体例としては意味のある手の動きの喪失、言葉によるコミュニケーションの喪失、歩行障害、手の常同行動などがあります。
そう、比較的新しい疾患なんですよね!
因みに常同行動については下記のASDの記事を参照下さい🙌
ほんの僅か触れています🙇♂️
レット症候群は生まれた時には運動発達・身体的成長ともに問題が見られることはありません。症状は概ね生後6ヶ月~1歳6ヶ月ぐらいに現れはじめます。
<発達障害から外れた背景>
WHOによる国際疾病分類『ICD-10』ではレット症候群は「広汎性発達障害」のカテゴリーとして分類されています。これは内容が採択されたのが1990年であり原因が特定される前であるためです。しかしアメリカ精神医学会が原因が分かった後の2013年に発行した『DSM-5』にはレット症候群の記載はなく、精神障害とは違うんじゃないの!?っていうスタンスです。厳密には、第4版である『DSM-IV』にはレット症候群はレット障害の名称で広汎性発達障害の一つとして記載されていましたが、染色体の遺伝子の異常が疾病の原因でであることが発見されたことによって『DSM-5』から除外されることとなりました。
このように研究が進んでいくとともにレット症候群に関する情報は日々更新されています。
<症状>
特徴的な症状のパターンが見られます。その中には「発達の退行」「特徴的な手の動き」「歩行の障害」という主に3つの症状があります。
・生後6ヶ月以降の発達の退行
生まれたときにはその身体的な成長や運動・発語の発達に滞りは見られませんが、6ヶ月を過ぎたころから筋緊張低下、自閉傾向など初期症状が見られるようになります。徐々に運動・発語面でも、できていたことができなくなってくる「退行」という現象が起こってきます。
6ヶ月以前から発達に明らかな遅れのある場合にはレット症候群ではなくその他の疾患や障害となる可能性が高いといえるでしょう。
・特徴的な手の動き
ものをつかんだり、手を伸ばすなどの目的をもった手の動きが少なくなり、消失します。その後、手を口にもっていったり、揉んだり、こすったりするしぐさが出てきます。これは「常同行動」と呼ばれる行動であり、自閉症の子どもにも同じような行動として手をひらひらさせたりくるくるまわったりというような行動が見られることがあります。
ぼくが検査させてもらった子も、ずっと手を洗う様な動きをしていました。その時はカルテを読んでもレット症候群って何だ!?って初見の疾患に焦り眼科的なルーティン検査をするしか無かったのが悔やまれます…
・歩行の障害
症状の軽い場合には、歩いたり小走りできますが、重篤な場合は運動機能の低下により歩行障害、歩行失行が見られます。歩行できるようになる以前から、運動発達の遅れがみられることが多く、早い場合には寝返り、四つ這いの獲得が遅れます。
また「筋緊張」という身体の筋肉を支える部分の問題も絡んでくるため、場合によっては歩行異常のほかにも身体が硬くなったり、座位が保てなくなったりすることもあります。歩くことが困難となるため、疾患が進行してくると移動の際に車いすを使用したり、座るときには補装具を必要とすることになります。
そう、先述の検査した子も例外ではなくバギーに乗っており、補装具も付いていました。
・発語によるコミュニケーションの障害
喃語あるいは意味のある言葉を習得したあとに、言語機能が部分的または完全に消失します。発語ができなくることによって外界とのコミュニケーションが難しくなります。これは構音機能の低下が原因のひとつには考えられますが、更に詳しい原因についてはまだわかっていません。
あの子も言葉は一切発しませんでした…
これらの主な3つの症状のほかには、呼吸異常や歯ぎしり、睡眠障害、身長・体重が伸びない成長障害、手足が小さく冷たい、不適切な場面で笑ったり叫んだりする、痛覚が鈍い、一点を比較的長く見つめている、などの症状が見られることがあります。
ぼくが検査させてもらった子でこの特徴の中で最も印象的なのは睡眠覚醒リズムの異常です。保護者の方曰く、起きている時間の方が少なく、いつ起きているか読めないとの事で来院前には睡眠調整を行っているそうです。それにも関わらず前の子の検査が長引き、このレット症候群の子の順番が来た時には既に寝てしまっていたのです…せっかく遠い中来てもらったのに非常に申し訳なかったです😭
起こしてもらう時間を作って何とか検査と診察を受けれたのですが、次回からはその子の前は長引かないように障害のある子の検査手順や方法を改めて見直す必要を痛感した出来事でした。
<性差と疫学>
女児のみに発症します!
日本の厚生労働省の研究班で行われた20歳までの 有病率 調査では、推定で約1,020人であり、1万人の女児に0.9人くらいの有病率と報告されています。
<原因>
X染色体の中に存在する「MECP2」という遺伝子が何らかの要因で病的な変異を起こすことによって起こります。しかし遺伝子に変異が起こったからといって必ずしもレット症候群を発症するわけではなく「MECP2」という遺伝子に病的な変異が起こっている人のうちレット症候群と診断がつくのはその中の90%ほどです。
また近年の研究では病因として「CDKL5」や「FOXG1」という遺伝子も新たに発見されています。この疾患は家系や両親からの遺伝では起こるのではなく、何らかの原因による遺伝子の突然変異であると考えられています。家庭内で親から子どもへ遺伝することはほぼないということが調査によって明らかになっています。
しかし、極めて稀に母親保因者からや生殖細胞の病的変異モザイクを持つ親から遺伝すると言う報告もあります。
<合併症>
70%~80%にてんかんがおこります。またその他に重度の知的障害、自閉症状、後天的な小頭症、体が硬くなり捻じるような動作、歯ぎしり、過呼吸―無呼吸を交互に繰り返す呼吸障害、および小さく冷たい手足、頑固な便秘などの自律神経症状、脊柱の側彎などがおこるそうです。
<治療法>
根本的な治療が確立されていません。レット症候群のある患者さんに対してはそれぞれの症状をケアする対症療法により症状の緩和を目指します。例えば、運動機能の低下に対しては理学療法が行われ、発話に関しては言語療法が行われます。また症状として多く見られるけいれんには、抗けいれん薬の調整などです。他に、背骨がゆがんでくる側弯に対してはコルセットを使用して姿勢の維持を行うなど、一つひとつの症状に対してアプローチを行うそうです。
<眼科で出来る事>
意外かもしれませんが
レット症候群の子は眼科的な疾患はほとんど見られず、良好な視機能を有している子が多い
です。そのためハンディレフやレチノマックス、SVS等で他覚的屈折値を求め、TACで視力を測り近見眼位を測定するというものになるかと思います。ただし、レット症候群のある子どもは自らの意思により体を動かすことが難しいので、自分の意思を伝える方法が限られてきます。ここで重要になるのが視線を動かすことです。疾病の度合いが重度の場合には、外界からの刺激に対して反応をできるのは視線を動かすこの方法のみとなります。声をかけてあげるときには目を見ながらやりとりを行うのが良いと考えられます。
また、近年では視線入力装置などの代替コミュニケーションの手段も開発されています。
視線入力装置|NPO法人 レット症候群支援機構
2021年のレット症候群に対する調査(日本重症心身障害者学会誌第46巻1号55~60)では、【正常な眼の病理組織学的所見や構造、正常な網膜の働き、斜視や眼振の少なさ、良好な眼球運動機能、大脳の後頭皮質や脳内の視機能に関わる経路の良好さ、VEPの振幅と潜時については正常と異常の両者の知見が複数報告されてきている。】とありますが、この調査の結果では216名の調査対象からの返答を元に約80%に屈折異常や斜視、眼振は確認されず、注視・追視も出来る事が示されました。
<終わりに>
日々新たな研究の行われている新しい疾患であるが故に対症療法しかない現状、国際レット症候群協会の会長のKathy Hunterさんの言葉に「Care Today, Cure Tomorrow」というスローガンがあります。ここには現在はできる限りのベストの治療を行って、来たる根本的な治療方法の開発の日々を待とうという前向きな意味がこめられています。
この疾患は視機能が良好な為一般的な眼科ではあまり出会うことの無いものかもしれません。しかし他の障害を持つ子どもや認知症や知的障害の大人に接する時と共通し、視線での誘導、即ちアイコンタクトが重要であると考えます。
アイコンタクトは相手との関係性を築く第一歩でもあると思います。看護師の国家試験にもアイコンタクトについては出題されます!是非皆さんも実践してみて下さい!
今回は実際にこの障害に出会っているが故にいつもより長くなってしまいスミマセン💦
もう少し端的に纏められるように文章能力を鍛えます🙇♂️
ではまた👻