発達障害の眼科検査 ADHD編
前回のASD編に続き今回は外来で出くわすことの多い(?)ADHDの子どもの検査について書きたいと思います!
ADHDは問診票やお薬手帳にその薬(コンサータ、インチュニブ、ストラテラ、ビバンゼ)が書いてあれば確定と見ていいですが、比較的その傾向が強いけど診断付いてないなぁ…でもそれっぽいよなぁ?て子にも通じる内容で書いてみます!
ADHDについては過去の記事でおさらいをお願いします🙇♂️
以上の様にADHD児は3つのタイプに分けられます。多動の子は比較的すぐに分かるかと思いますが、不注意型の子は少し分かりにくいかもしれません。
結論から述べますと…
ADHD児の検査のコツは
【時間を短くする工夫】
【環境調整】
【集中力の出させ方】
と言えます!それぞれ詳しく書いてみます。
①時間を短くする工夫
これはASD児の場合と同じく見通し表を使用して検査の開始と終了を明確にする事です。
ASD児の検査記事はコチラ↓↓↓
ADHD児では検査室を走り回ったりとか機器をいじったりとか検眼レンズ触ったりとか、とにかくはしゃぎます💦
また、平衡覚の自己刺激の為に回る椅子は回してみてたり、座ってクルクル回ったりする事もあります。落ちて怪我する事にもなりかねませんよね…そんな子に通常のルーティン通りレフケラ、眼圧、視力、眼位、立体視、など1つずつやってたら途中で飽きて進まない事が良くありました。
その為ぼくの常勤先では初回は出来る所まで、次は続きからという様に分割しています。
最悪レフだけで終わる事もありますが、医師から説明してもらい、保護者にとっては忙しい中大変ですが、緊急性の低い主訴であれば1週間後とかに続きからの検査をしています。
※レフ時の動きについて
ぶっちゃけ、なかなか上手く撮れませんよね…
これはADHD児に限った事ではないですが、少し動きやすい子どものレフを撮る時に固定の為、頭を鷲掴みにする人がいますよね!?
これ止めた方がいいですよ!!
見る人から見たら物凄く印象悪いですし、厳密な定義からはズレますが<虐待>と取られてもおかしくないです!
そんな時は前回のASD児の検査同様、手のひら全体と胸を使った2人がかりの圧覚で対応しましょう。
止むを得ず1人で行う時はぼくの場合、親指で挙上しつつ残りの4本の指と手のひらで側頭部から後頭部にかけてを軽くレフ側に押して固定します。子どもの頭はそんなに大きくないのである程度この手法で何とかなりますが、高学年の子だと厳しい事もあります…やはり保護者の方の協力はあった方がいいです。
これに関しては画像がなくて分かりづらく申し訳ございません🙇♂️
ともかく、検査は行う項目を絞ってその日出来る所まで、欲張らない、省略出来るものは省略する!がポイントだと思います。
特に初診で診るべき点は全ての子どもがそうですが、斜視の有無、弱視の有無に絞るべきだと考えます。両方その日に診れれるに越したことはないですが、無理なら前述の通り日を改めています。
②環境調整
眼科の検査室は本当に色々な物があり刺激たっぷりでADHDではない子でもテンション上がる子は上がります。そんな子に余計な刺激があると集中はまず出来ないので、なるべくシンプルに、そして興味を惹きそうな物は視界に入らない所に置くという工夫が必要です。
幸い、常勤先は視力検査レーンが2つしかないので大きな施設よりは余計な物や人が目に入りにくくなっています。
※ぼくは常に画像左手側の検査レーン固定でやってます。
2レーンしかないものの、分かり難いですが画像右側の壁際に中待合の椅子があり他の患者さんが座る事になるので、まず他の人が目に入ってきてしまいます。
また、隣の検査レーンとも非常に近いため横で検査している人や検査員も目に入ります。
子どもの目線で撮った検査レーンの画像がこちらです。
まず左手の棚の上の植物と奥のCLリーフレット類が目に飛び込んできます。
…どけます。
更に隣のレーンの視力表と真ん中の空気清浄機も目に入ってきますよね!?あとは隣の検眼レンズセットも丁度子どものすぐ右斜め上に来るので気が散ります。
さすがにこれらは動かせないので見えなくすればいいのです!
はい、パーテーション((̵̵́ ̆͒͟˚̩̭ ̆͒)̵̵̀)⸝o̗
あまり無いかもしれませんが、たまたま別用途で置いていたパーテーションが不要になって処置室に置いてあるので、ADHD児の検査や他の事が気になって落ち着かない子どもの場合はコレを持ってきます!
実際に置いてみるとこんな感じになります。
隣のレーンや中待合の人々は完全に視界から消えます!
また隣の検査も見えなくなるので、よくある(ぼくのとこだけ?)自分のレーンの視標が小さくなった時に隣のレーンの大きい視標を答え出す現象も無くなります。
このパーテーション、見ての通りそんなに大きくないですし、ニトリで買った高くない物なので風通しの良いクリニックなんかだと比較的容易に設置まで漕ぎ着けられるかもしれません。
※大きい施設の方はスミマセン!ぼく自身が小さなクリニック以外に勤務した事がないので想像つきません💦
ここまですると割合、刺激が減って視力もスムーズに進む事が多いです。ただ、ここまでする子もそんなに多くはないですが…本当に最終手段的にパーテーションは使用しています。
③集中力の出させ方
とにかく飽きさせずに短い集中力をなるべく多く出させる事に尽きるかと思います。
1分間集中して後は遊んじゃうよりも10秒の集中力を6回出させるイメージです!
その為には声掛けが大事です。
ぼくの場合は「検査しよ〜!」、「この中見ててね〜」とかではなく、「ハイ、検査しまーす!」「ハイ、この中を見まーす!」と“○○します!“と言うような場面の区切りを付ける言葉遣いで検査を進めるように心掛けています。
もちろん命令口調や上から目線ではなく優しく言いますが…少し逸れますが、よく妻に言われるのは【歌のおにいさん(おねえさん)最強説】です。あの人達は本当にプロです!あのテンションと声掛けの仕方を真似しろと言われているのでそれを意識して取り入れてみたら、それまでよりもスムーズに検査が進む様になりました☠️
※固視について
眼位検査では固視が悪い子が非常に多いです。特に遠見で顕著ですね。これは皆さん悩む問題かもしれませんが、ぼくの場合はまず視力表の絵指標の所でやってみる→絵は4パターンなのでどれか見てくれる物がないか模索する→絵がダメならアンパンマン4種どれかを貼る→ダメなら風船を出す→それでもダメなら風船にシールを貼るでやってます。
絵指標に関しの画像は割愛しますが、その次のアンパンマンはコレです。
元々は<ドーナツ食べたのだぁれ>用に(妻が)折り紙を切ってラミネートして作った物ですが、これを視力表の中央に貼っています。アンパンマンに食いつく年齢だと良いのですが、ダメなら次は風船の出番です!
これは【くろかわ式近見指標】という物を利用しています。
詳細はコチラ!
Xで知り合った視能訓練士の先生に頂きました。
(勝手にリンク貼って申し訳ございません🙇♂️)
めちゃくちゃ便利です!
コレを使って遠見固視目標として風船を付けると大体の子は攻略できます👍
風船と空気入れ、風船を巻き付ける棒は100均で手に入ります。
これには院長もノリノリで、風船のストックが山のようにあります…
膨らませて設置して最後にご褒美としてプレゼントするまでを一連の流れとして行っていますが、風船だけでダメならそこに大きめのシールを貼っています。
大抵はこの流れで遠見の固視を持続させる事が可能ですが、まだまだ試行錯誤中ではあります…
ただし、風船まで出す前に様々な声掛けで固視の持続を図る事も大切です。アイテムに頼りっぱなしではなく、ゲーム感覚で検査を進めると良いです。
例えばよく遠見でやるのは
「こっち見たら負け、あっち見てたら○○くん(ちゃん)の勝ちゲーム」
です。
これは遠見固視目標をずっと見てくれていたら「お〜強いねぇ!おじさん負けそう💦」験者を見たら「あっ!おじさんの勝ちだよ〜もう1回勝負しよっか!?」って具合にやってます。大体4歳くらいの発達年齢ならばルールが理解できるので割と喜んで勝負してくれます。何事もゲーム感覚で検査を運ぶ事がとにかく大切です!
視能訓練士は検査を行う事が仕事ですが、子ども相手の場合は検査ではなく遊び感覚で楽しませて笑わせてナンボだと思っています!
<終わりに>
一体ぼくの妻は何者だ!?っていう疑問だけが残る様な記事になりました…別に視能訓練士でも保育士でもないです💦
さておき、結論は最初に書いた3つの通りです!
中でも集中力の引き出し方は環境調整に比べれば工夫で何とかなる物だと思っています。
また、検査時間の短縮も医師と良好な関係にあれば可能だと思います。
是非取り入れ可能な点がありましたら取り入れてみて下さい!ADHD児に限らず落ち着きが少ない子どもにも有用だと思ってます!
※LD児に関しては殆ど書く事がないのでご了承ください😭
強いて言えば眼球運動の苦手さが特徴的なので、NSUCOを使ってスクリーニングは可能なのかな?と言う点だけです。
その辺はビショントレーニングの記事を参考にして頂けますと幸いです🙇♂️
こんな感じで発達障害児への眼科検査の具体的な手技や気を付けている点を書いてみました!
出し切った感が否めないですが、もし発達障害や知的障害などにご興味がある奇特な方がいらっしゃいましたら今後とも宜しくお願い致します🙇♂️
ではまた👻