5月8日(土)

    曇っている。曇りの日は嫌いで、いつも完璧に晴れていてほしい。頭が中心めがけて生温い意識が逆向きの円錐形みたくぐでぇ~っと注がれてすぐに眠たくなって実際に眠る。そういうときは歌を聴く。
     はるまきごはんのボカロ曲を聴く。この人の『八月のレイニー』や『Tender Rain』は名曲で、あやうく雨の日が好きになりそうになる。すぐれた作品は鑑賞者を、一介の消費者からあやうさに引きずり込む。他にも『メルティランドナイトメア』や『アスター』や『ドリームレス・ドリームス』、『銀河録』、『カルデネ』、『22世紀の僕らは』『ラストライト』等、あげればきりがない。歌ってみたもすぐれたものが多い。不勉強ながら、この日初めて足首の歌う『Tender Rain』を聴いた。『八月のレイニー』なら柘榴。『アスター』ならしるばーなや缶缶など。『22世紀の僕らは』はSou。『ドリームレス・ドリームス』はSou、そらる、宮下遊歌うお兄さんなどの大物が歌う。『銀河録』はあらきやメガテラ・ゼロ。『カルデネ』は腹話術やそらるやしるばーな。『ラストライト』はメガテラ・ゼロ。『セブンティーナ』は缶缶。『再会』はハイダミオやきぢなどをよく聴く。
    私が一番好きなのは『メルティランドナイトメア』で、好きな歌ってみたはSou、そらる、しるばーな、Yunoshin、鹿乃、きぢ、がおー、SAKI、Rea、祭屋、るかにょんなどで、それらに本家も含めてどのバージョンを聴いてもずっと飽きないで聴いていられるボカロ曲は、これとぬゆりの『ロンリーダンス』だけである。
    雨を題材にしたボカロ曲&歌ってみたのうち、素晴らしい作品といえばえこ。の『参月の雨』で、ゆきむら。の歌うバージョンはほぼ毎日聴いている。ゆきむら。の歌うものには基本的に、私のとってハズレがない。信頼できる歌い手の一人である。尚、えこ。には『参月の雨』と『さんがつのあめ』と二種類の作品があり、ゆきむら。が歌っているのは前者だが、後者も素晴らしい作品である。
    この間のSouとChinozoの対談でも「陽キャ」と表現されたように、現在のボカロの愛好者はどちらかといえば、オタクというよりYouTubeなどの動画文化の好きな現代っ子になっているようだ。したがって歌い手文化の愛好者もその傾向が強まり、ユニットを組んでアイドル的な消費やYouTuber的な配信者(編集された生主であるから、ある意味で原点回帰しているのかもしれない)としての消費、またはメジャーデビューして歌ってみたそのものを止めたりして人口に膾炙している。ニコ動の斜陽とあわせてYouTubeだけに投稿する大物歌い手も増えてきていて、バックグラウンド再生をたよりにNico box内ばかりを毎日徘徊している私などは、正直最新のボカロ&歌ってみたのトレンドに着いていけなくなっている。しかしだからといって私が古くからそれらを愛好してきたわけではなく、そういったものにどっぷりはまったのは大学に入ってからで、上にあげた、私の好きなはるまきごはんやぬゆりなどは、そこまで古いボカロPでもない。それだけここ数年のトレンドの流れが凄まじいということである。そして動画文化の担い手である彼・彼女らはその流れをうまく掴み、乗り、様々なところを転々とする。その強かさは私みたいな「陰キャ」からすれば少々鼻白んでしまう身振りですらあるが、彼・彼女らがこのままどこへ向かうのかはたしかに見物である。そして彼・彼女らのニコ動に残したすぐれた作品や表現たちの価値は変わらない。あとニコ動はマジで頑張ってほしい。


    蚊に刺される。したがって夏が来る。私はおそらく四季のうち夏がもっとも好きなのだが、蚊との闘争は唯一の難点であり、夏の訪れを告げるのは蚊にさされではなく、日差しであってほしかった。あとマジで梅雨は死んでほしい。本当は、季節に対して殺意なんか覚えたくない。本当に忌々しい季節が、これから我々にめがけてやってくるのだ。

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