4月3日(土)
意識を取り戻した頃には朝の七時で、土曜も仕事がある母親も起きてくる。ほぼ雑魚寝状態だったので身体は全く休まっていないが頭は冴えている。昨日の日記をいろいろ修正したのち再び寝る。
昼頃に起きる。世界が滅べばいいとちょっとだけ思う。昼飯を食べ、書けそうなESをネットのメールで探していたらある会社の試験があったのでなんとなく受けるが、なんとなくでは当然済まない内容で、歯が立たない。日曜の日記に書いたこととほぼ同じことを考え、世界が滅べばいいとさっきより強めに思う。
入社試験歯が立たない問題は、じゃあ勉強すればいいじゃん、とよく言われるが、そもそもその「勉強」の仕方がわからないのである。というか、自慢じゃないが私は小学生の頃から勉強というものをろくにしたことがない。授業中は全部寝て、課題はやらず、テスト期間は遊びの期間で、自主的な勉強なんてする余地はなかった。ノートを取ったことも問題集を解いたこともない。学生としてやるべきことは何一つしてこなかった。大学入試は適当に空欄を埋めて──マークシートなら全部「5」とか選んで──あと机に突っ伏して寝ていたら、「大学入試は適当に空欄を埋めて──マークシートなら全部「5」とか選んで──あと机に突っ伏して寝ていた」だけで受かるような大学にしか行けなかった。プロフィール欄に「大卒」とあるが、みんなのようにネット内に名前を公表できるようなところではないのである。恥ずかしいから。
そしてそのままだらだら過ごしていると、ただ知識教養のない馬鹿になるだけではなく、常識もなく、勉強の仕方そのものがわからないままの22歳ができあがる。まず何をしたらいいのかも最終的にどうなればいいのかもどういう過程を踏んでいけばいいのかもわからない。机に向かったら寝るか落書きしてしまう。完全に学生としての私は失敗していたのだ。
失敗とは、失敗に歯止めがかからない状態のことを言う。ライ麦畑からふらふら落っこちて、きっと底は無くて、死ぬまで落っこちていく。
というわけで壊滅的にその入社試験はできず、引き続きESを探すことにして、二つ見つける。が、一つは最近よくある「自分を表す写真一枚」を提出させるヤツで、殺意しか湧かない。二、三十年前から就活というものはあったろうが、どうしてこういう余計なタスクを増やすのか、意味がまっっっっったくわからない。ネットを通じての採用活動が主流になったからといって調子に乗っている人事部の老害ども、或いは「個性重視」のエセリベラルロスジェネ生き残り採用係の大馬鹿どもがノリでやってるとしか思えない。マジでやめろ。迷惑でしかないから。
とはいえ写真を貼り付けて嘘八百書くだけならできなくはない(通過したことはほぼない)のでやろうとしたが、条件として「自分が映っている大学四年間のもの」とあり、殺意を増幅させ、世界が滅べばいいと強く思わされ、そして諦める。友達がいないから知らないんだけど、世の大学生はこのために前もって自撮りしとくのか。サークルのBBQでの集合写真ばかり撮ることのどこに「自分らしさ」なんてあるのだろう。てかまず「自分らしさ」表すのに条件なんて提示してくんな阿呆。ないわそんなもん。全員死ね。
というわけでもう一方のESを悶え、叫びながら書く。もう夜になっている。頭が痛い。その後『コルヌトピア』を読むが、文章が少し合わなくて読み進められない。なのでダラダラ他のツイッタラーのアカウントを読み、同世代のみんなの頭の良さに驚く。みんなデカルトのこともスピノザのこともカントもヘーゲルもニーチェもフロイトもめっちゃ知ってて、それっぽく語ってる。小説もアニメも漫画も映画も音楽もみんなすっげえ知ってる。私は何も知らない何もできない何も残っていない。何ら語り口も持たない愚痴ばっかりの人間になって部屋で寝ている。世界が滅べばいいと強く強く強く思う。ライ麦畑から落下中の私を残して、地にあるものは全て滅んでしまえ。
『コルヌトピア』の「コルヌトピア」の部分だけ読んで、寝る。