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『イワノキツネ』第2部 №4

小野さん一行は、誰もいない静まり返った深夜の道路をひた走る。

「なにかわかったんですね」

一心不乱にバイクを走らせる小野さんに、背中に掴まっていた猫さんが聞いてみる。

「全然わからないよ」

風をきって膝に乗っているチョビヒゲ猫は落ち着いている。

「どこへ向かっているのですか?」

「教えてもらった井戸だよ。アレかな?」

小野さんが軽快に原付きを災害時緊急井戸の側に横づけすると、井戸の蓋は閉まっていた。固いコンクリートで上が塞がれており、しっかりと施錠されている。小野さんは困りもせず、原付きの座席を開けると、中から機械を取り出した。

「わ!ドローンだ!」

チョビヒゲ猫が、テキパキと手早くドローンを組み立てる様子を見て感激する。小野さんは手際よくドローンに"悩みを聞く石"を括りつけた。

「冥界のドローンはルートも特別なんだ」

そう言うと、井戸の蓋に置いたドローンが空高く飛びあがり、上空でピタリと止まると、行く先の方角を定めてフッと闇夜に消えた。

「消えちゃいましたね」

「井戸to井戸で移動するんだ。もう向こうに着いたと思うよ」

「えっ瞬間移動ですか?」

「そうだね。ワープというのかな」

チョビヒゲ猫は感動する。

「最近は安全管理上、開いている井戸が少なくてね。冥界でもドローンを導入したんだよ」

小野さんのスマホに何か連絡が入る。

「来た来た」

2匹は興味深く届いた映像を見せてもらうと、映っていたのは、やはりキツネだった。しかも鍵を持っているキツネで、ドローンに付けられた石をくわえている。

「何かわかったかい」

「これはトライゴーニックのようです」

「そうか。それは珍しいな」

「C面があります」

「メッセージは?」

「"悩みはありますか"とあります」

「古代人からの叡智とか」

「"悩みはありませんか…"と」

小野さんは珍しく舌打ちすると、鍵を持つキツネに石をこちらへ送り返すよう依頼するも、猫さんが思いついて、スマホのキツネに聞いてみた。

「白いヘビが白い石を持ち去って困っています」

すると、ほぼ同時に目の前の井戸に悩みを聞く石が付いたドローンが戻ってきた。

「最短ですね」

「すごいんだよ」

「召喚というのですかね」

「そうだね」

小野さんとチョビヒゲ猫が冥界ドローンの性能にホレボレしている間に、猫さんはドローンから悩みを聞く石を外すと、石はやる気に満ちていた。石はグイグイと猫さんを引っ張ると、向かうべき方角を教えてくれている。

「おおおのさん。石がそっちに行けと」

石に引きずられている猫さんに気づいた小野さんとチョビヒゲ猫は、急いで原付きに乗り、石が進もうとする方角へと原付きを走らせる。空は次第に白んできて、深い闇はうっすらと明るさを増していた。









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