『あらわれた世界』№22 (最終回)
オシリスは、夜の砂浜を歩いていた。
暗い夜の波が、静かに寄せては返している。
砂浜には、ヘビの抜け殻のような毛の付いた皮が落ちている。後ろからついてきたメジェドがその皮を眺めながら、オシリスに付き従う。
夜の海には、三日月の暗い月明かりが伸びている。オシリスは海の彼方をしばらく眺めると、ため息をついて砂浜に座り込み、仰向けに寝転んだ。
「メジェドよ」
波打ち際を見回りしていたメジェドが、フワフワとオシリスに寄り添う。夜風が心地よい。
「人は星になるんだよなぁ」
メジェドは呼吸に合わせて空中で上下している。
海のはるか彼方で、珍しい魚が跳ねた。
オシリスの舘から、オシリスを呼ぶ声がした。オシリスは体についた砂粒を払いながら、しぶしぶ立ち上がる。メジェドは空中でスッと踵を返して、オシリスを守護する。
オシリスはゆっくり背伸びをすると、夜空を仰ぎながら、大きく腕を伸ばした。
もう彼らと会うことは無いだろうと知りつつも、また海から透明な球体が現れないかと内心期待しながら、オシリスは静かに舘へと帰って行った。
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