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『イワノキツネ』第2部 №3

「それは夜泣き石だね」

小野さんは一連の白ヘビ騒動を冷静に分析する。動揺する猫さんにも"そもそも夜に泣く石なので、あまり気にしないように"とアドバイスをする。猫さんは持っていた"悩みを聞く小石"を小野さんに見せると、素敵じゃないか!と少年のような反応をした。

チョビヒゲ猫は、こんな真夜中に小野さんが来ることに疑問を感じていた。最近、深夜に訪れる客人にまともな輩はいないので、おキツネ様が小野さんに变化しているのではないかと、小野さんの周りをウロチョロする。

「僕のライフワークなんだよ」

察した小野さんが、チョビヒゲ猫を安心させる。お仕事の気晴らしに、日頃から興味のある地域に出向いては、珍しい遺跡や遺構を調査しているらしい。古井戸を経由してアチコチ移動出来る小野さんらしい気晴らしだと、チョビヒゲ猫は納得する。

「白キツネ君がね、いないんだよ。最近。なんでも尻尾のすごい大狐が来たとかで、すっかりソイツに傾倒しちゃって、まるで舎弟みたいに一緒にどこかへ行っちゃった。」

チョビヒゲ猫と猫さんは顔を見合わせて、その大狐、よく知ってますともと頷く。猫さんは、大狐からもらったすべすべする石を探していると小野さんに話すと、異界の噂では、大狐は各地で取り巻きや舎弟を増やして、なぜか猛烈に北上しているようだった。

とはいえ、キツネの事は詳しい小野さんでも、ヘビについてはさっぱり見当がつかなかった。あのヘビがなんの目的で、どこへ行き、何をするのか、小野さんと2匹の猫達はさっそく途方に暮れる。すると、猫さんの握っていた小石がムズムズする。驚いて猫さんが手を離すと、悩みを聞く小石の透明な塔がさっきより成長している。

「ワォ!」

小野さんは自治会館の畳に転がった塔を持つ小石を拾い上げると、感嘆の声をあげた。

「この石は何か教えてくれそうだね」

よく見ると、石にはレコードキーパーと呼ばれる模様が存在しており、過去の偉人達の情報が封印されているそうだった。小野さんは熱心に石を観察すると、ふと顔をあげて、チョビヒゲ猫に近所にある緊急災害時用井戸の場所を聞くと、突然原付きに飛び乗った。

猫さんはせっかく拾った新しい石を持ってゆかれては困ると、原付きの後ろに飛び乗る。チョビヒゲ猫は、会館内に自分の手形で置き手紙を作り、自治会館にしっかり施錠して、ゆっくりと静かに小野さんの膝に乗り、すっぽりと腕の中に収まった。







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