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#29: こんなときだから♪ミニマル・ミュージック

ライヒ:クラッピング・ミュージック(1972)

今週のテーマは「不自由は発明の母ー制約から生まれた音楽」。

一年前,いや2020年を迎えた約4ヶ月前,誰が今の状況を予想したでしょうか?
楽しみにしていた旅行もコンサートも飲み会に行くことを阻害され,そして,大好きな人に会うことさえも難しい日々を。
自由に外出ができない日々が続くなんて,想像できませんでした。
今,私たちは「不自由」な生活を強いられています。

しかし,この「不自由」さ。アートにとっては悪いことばかりではありません。
むしろ,この「不自由」という制約を利用して,自らの表現に昇華する才能を持つ人をアーティストと呼ぶのかもしれません。
今週は,制約という不自由から誰も思いつかなかった「自由」を獲得した作品を紹介していきたいと思います。

初めはスティーブ・ライヒ(1936- )の作品から。
ライヒはユダヤにルーツを持つアメリカの作曲家でありパーカッショニストです。
ミニマル・ミュージックの先駆者であり,現代音楽のみならずロックやジャズなどあらゆる音楽家に影響を与え続けています。

最近,最小限しか物を持たないミニマリストのライフスタイルが注目を集めていますが,その音楽版がミニマル・ミュージックと言っても良いと思います。
最小限の素材だけで音楽を奏でる,しかもスタイリッシュでなければならない!
どんなに素材がシンプルでも,ダサかったり,痛々しかったりしてはダメなんです。クールじゃなければミニマルじゃない。

ミニマリストのスタイルもそうですよね? ただ単に物や素材を減らせば良いというわけではない。オシャレで,快適に,自分らしく生きている人がミニマリストと呼べるのではないかな,と思っています。

ね? なんか共通してるでしょ?

本日お送りする作品は「クラッピング・ミュージック」,そのままズバリ手拍子のみの音楽です。

二人で演奏するのですが,一人はずっと同じパターンの手拍子を最初から最後まで叩き続けます。もう一人は,最初は相方と同じパターンを8回繰り返すのですが,その後,1泊ずつズラしたパターンを4回繰り返し,その後も1泊ずつスライドしたパターンを叩いていきます。

これ,やってみるとわかるのですが,同じパターンを演奏し続けるのもムズカシイ!! ついついつられてしまうのですが,練習して慣れてくると,手拍子が揃うところ,休みが揃うところがわかってきて気持ちよくなってくるんです!

これはやってみなければわからない感覚です。

しかも,楽器がなくても大丈夫。
パターンだから楽譜が読めなくても問題ない。
一緒に演奏してくれる相手がいない?
一人でも,両腿を叩きながら,ぜひソロ・バージョンにもチャレンジしてほしいと思います!

今の生活をただ単に「不自由」と思うか,今だからこそチャレンジできるものがたくさんある! と思うか,視点をズラすことで,今の生活がちょっとだけでも楽しくなるといいな,と願っています。

今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!


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