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絣人インタビュー(from France)

Toscane Jourde(トスカーナ・ジュール) フランス
現在スイスの美術大学の学生であるトスカーナは、ギャップイヤーという制度の期間を利用して 日本に来日。2ヶ月間の日本旅行も終わりに近づいた12月22日に下川織物を訪れ、23日から27日まで工場の中で久留米絣の制作を体験した。彼女が長年抱いていた日本のイメージと実際に体感した日本。そこから得られた新たな発見についてのインタビュー。

滞在中の5日間さまざまな久留米絣の制作工程を体験した

<インタビュアー> 3代目職人「下川強臓」
「久留米絣という織物を通じて、世の中に勇気と希望の光を灯し続けたい」 という信念のもと、モノづくりの裏側にあるテマヒマやこだわりを自らの言葉で語る。 全てのモノづくりには、作った人の「想い」がこもっている。 職人としての領域=ZONE(ゾーン)とは何かを久留米絣を通して探ります。 さまざまな取り組み、モノづくりの中で集中力が高まり、ゾーンに入っていく瞬間や ゾーンを越えた絶対領域を求めていく様を表現していきたい。
「クロスオーバー」で久留米絣に新たな領域=ZONEを作る


滞在を終えてのインタビュー

1)自己紹介
こんにちは、私の名前はトスカーヌ・ジュールです。私は24歳です。フランスのノルマンディー地方、シェルブールで育ちました。パリのオリヴィエ・ド・セールという応用美術学校で、オブジェクトデザインを3年間学びました。現在はスイスのローザンヌにあるECALで学び続けており、最終学年の3年目です。卒業論文と卒業制作の間にギャップイヤーを取ったのですが、その間、パリでデザイナーのロナン・ブルレックのスタジオで6ヶ月間のインターンシップをした後、2ヶ月間日本に来ました。


糸を結ぶ繊細な作業もすぐに慣れていた

2)日本への興味
私はずっと日本に魅力を感じていました。しかし、実際に日本に来てみて、そこで発見した現実は、私が持っていたすでに素晴らしいイメージを遥かに超えていました。ここでは、人々の尊敬の念、謙虚な性格、静けさ、そして規律にとても感動しています。ここでは、人々が一人で過ごすことができ、また日常生活の中に楽しみや美を見出していると感じます。銭湯は、個人が集団の中で何かを一人で行うという文化の良い例だと思います。また、日本では自然が非常に力強いと感じています。物の視点から見ると、私は日常的な物に大きな美を見出し、それが私の関心のあるデザインの一つの側面だと考えています。つまり、デザイナーの名前がついていない日常的な物に興味があります。また、歴史や伝統が非常に重要視されている点にも驚きました。松本で出会った男性が「歴史は私たちが子どもを育て、親を敬うためのものだ」と言ったことがとても美しいと思いました。

寒い日本の冬でも外作業を楽しく体験

3)絣への興味
私はオブジェクトデザインを学んでいますが、常にテキスタイルの技術や知識に引かれてきました。私が最も自然に手を伸ばすメディアは、しばしば柔らかい素材です。色、パターン、テクスチャーに非常に興味があります。ですので、テキスタイルについてはできるだけ自分で学ぼうとしています。私は、昨年、編み物のパターンに関する個人的な研究を行ったことで、絣(かすり)を知りました。私は、以前に染めたボールやコーンを使ってパターンを得ようとしたかったのです。例えば、コーンやボールの半分を染色液に浸し、それから編むという方法です。私は反復的な作業で進めるのが好きで、実験から実験へと進んでいくことが好きです。ですので、このプロジェクトでは、久留米の絣が私の参考の一つでした。

謙虚さと協調性を持った素晴らしい学生でした

4)下川織物への訪問のきっかけ
私が下川さんの作品を知ったのは、パリのENSCIでテキスタイルデザインを学んでいる友人たちが4年前に日本に来て、研修旅行をしていたからです。私はこの技術を自分で観察したいと思っていました。実際、よりよく理解するために、それが複雑なプロセスだと思うからです。一般的に、テキスタイルに関しては、言葉よりも観察や実践の方が効果的だと思います。

工場のスタッフに見守られながらいろんな工程を体験

5)滞在の印象
1週間滞在して、もうすぐフランスに戻ります。しかし、ここにもっと長く滞在して学びたいと思っています。1週間でこのプロセスをかなり理解できたと思います。概略としてははっきりしていると言えますが、もちろん詳細な部分にはまだ多くのことがあると思います。素晴らしいのは、下川さんが自分の仕事を非常に惜しみなく共有してくださったことです。絣の作品は、私のような未経験者にはとても繊細で手が届かないものに見えますが、それでも下川さんは、私が自分で各工程を行うようにと招いてくれました。信頼とリラックスした気持ちに感謝します。そして、それが学び理解するための最も効果的な方法だと感じました。特に、非常に小さな、非常に特定的で反復的な動作の中で多くのことが進んでいくのです。2日後には、下川さんは私に織機のチェーンを組み立てさせてくれました。外から見ると最も複雑で理解できないものに思えましたが、実際に扱ってみるとその論理がわかります。また、下川さんがこの会社にどんな方向性を持たせようとしているのかも非常に興味深く感じました。この会社は、彼の父親から引き継いだもので、古来の技術を使う企業に関連する多くの問題があると思います。どのようにして現代においてその技術を継続させていくか。下川さんが自分の技術に誇りを持っているのを感じましたし、現在の仕事の多くは、ミーティングや展示会、私のような人を受け入れ、ワークショップを見学させること(また、下川さんが行ったように、ビデオインタビューを通じて経験をドキュメントすること)に費やされていると感じます。日本の現代の工芸企業を管理する裏側を垣間見ることができたのはとても興味深かったです。ビジネスやオフィスの側面を見ることで、日本の工芸に対するロマンチックなビジョンだけでなく、現実的なシステムの中でどのようにそれが適応していくのかも見えてきました。

集中力を発揮

6)来年の目標
2月に最後の学期が始まり、卒業制作を行う予定です。まだテーマは決まっていませんが、日本で多くのインスピレーションを得たと思います。デザイナーの力を見せつけることなく、美しくデザインされた日常の物に焦点を当てたいと考えています。家の中で使われるアイテム、例えば取っ手や電気のコンセントなどをデザインすることに興味があると思います。また、もっと多くの人と繋がるために日本語も学びたいと思っています。

短い滞在の中でも1人でも多くの方と積極的に交流

滞在を終えて(下川の感想)

スイスの美術大学の学生であるトスカーヌは、ギャップイヤーという制度の期間を利用して日本に初来日。2ヶ月間の日本旅行も終わりに近づいた12月22日に下川織物を訪れ、23日から27日まで工場の中で久留米絣の制作を体験した。彼女が長年抱いていた日本のイメージと実際に体感した日本。そこから得られた新たな発見についてのインタビュー。事前に下川織物への訪問を入念に計画されていたものではなかったものの、フランスの友人などを通じて下川織物のことは聞いていたようで日本滞在中にぜひ訪問したいという願望はあったようです。結果的には年末の急な訪問となりましたが実際に会ってみると彼女は、謙虚で礼儀正しく規律を重んじて協調性のある優しい女性でした。初めての来日で西日本エリアの様々な場所を訪れていたようですが、おそらくどこに行っても、その土地で会った日本人と心のこもった交流をしていたように感じました。その中でも最も印象に残る滞在の一つになったと別れ際に言ってくれたことが、とても嬉しく思いました。来年、大学を卒業したらデザイナーになって、近い将来、再び下川織物を訪れて、コラボレーション制作をしたいという夢を語ってくれました。

久留米絣織元 下川織物
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Kyozo Shimogawa
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