30分で組み立てるインタビューライティング02
出演者の職場や自宅にお邪魔して撮影させていただくドキュメンタリーや情報番組の取材において、撮影に頂ける時間は限られており、ほとんどの場合、セッティング30分、インタビュー1時間というのが基本である。
これより公開するインタビューライティングは全て準備時間30分を目安に構築されている。
現場でいかに無駄なく最良の選択をできるかは技術者の経験と準備にかかっている。
実際の現場で何を考え、どう設営していったのかを紹介する。
◎VR現場画像◎
〜意図〜
イスラエル情勢の専門家。自宅のリビングにて。
窓背景の明るい室内でのインタビュー。
窓の向こうに7月のイスラエルの日差しがある。
番組の全体のトーンとしては暗く引き締まった画面構成をした方が統一感が出るのだが、この燦々と明るい現場で窓を暗く見せようとすると何キロワットものHMIを用意して強力な光線を出演者に浴びせることになり現実的でないので自宅であることを活かし、学者の知的な生活空間を感じさせる明るい画面構成にした。
〜配置〜
〜使用機材〜
カメラ SONY PXW-Z450
照明 キーライト YONGNUO YN600
フィルライト YONGNUO YN600 Air
↑①キーライト YONGNUO YN600&パラ1枚
↑②バックライト 外光
↑③フィルライト YONGNUO YN600 Air
〜解説〜
1、視線方向からのキーライト
2、窓からの実際の光がバックライトの役割を果たしている
3、暗部を整えるフィルライト
①キーライトは光量最大で出演者になるべく近づけた。
強いライトを当て過ぎると本人の表情が眩しそうになったり、顔を背けがちになったりするので、人間の感覚として極端に眩し過ぎない程度に留める必要がある。
また、LEDライトを直接照射するとLEDパネル独特の粒々がより眩しく感じるのでディフューザーを一枚かけた。
ライトを近づけたことと、ディフューザーをかけたことで、より柔らかい明かりとなった。
②窓からの光が自然なバックライトとなり側頭部の髪質、耳の輪郭、襟から肩のラインを浮き立たせている。
③キーライトが強めに当たっていることで硬い印象になるのを和らげる。
正面寄りの低い位置より照射し、あご下から首回りの暗部を補正した。
④背景に照明は加えず、窓からの光のみ。
画面右側の額縁がかかる白壁に窓からの光が当たり、サイドボードとその上の写真立てにもグリーンが反射して心地よい奥行きを構成している。
窓外のグリーンが露出オーバーながらも葉の揺らぎが感じられる程度の光量に収まっている。
LEDライトの光量でも窓背景に対応できた一例。
完成形を見ると元々明るい部屋である様に見えるが、背景の明るさにカメラ設定を合わせるとNDフィルターを入れることとなり、人物はほぼ真っ暗の状態からライティングする必要がある。
通常、窓背景の構図になった場合はHMIなどの相当強力なライトを被写体に照射しなければ背景が白飛びしてしまうところだが、今回は窓の外に濃いグリーンの植物が生い茂っていたことで完全な露出オーバーになるのは避けられつつ、葉の動きも見える爽やかな背景にできた。
植物のグリーンは概ね輝度が低く、葉によって影を作るのでさらに輝度が低くなる。窓の向こうが日なたの壁だったり空だったりするよりも植木や山などの緑で覆われているところを選んだ方が輝度差が少なくなり制御しやすくなる。また、緑色は補色として人物の肌色が引き立って見える効果もある。
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