30分で組み立てるインタビューライティング03
出演者の職場や自宅にお邪魔して撮影させていただくドキュメンタリーや情報番組の取材において、撮影に頂ける時間は限られており、ほとんどの場合、セッティング30分、インタビュー1時間というのが基本である。
これより公開するインタビューライティングは全て準備時間30分を目安に構築されている。
現場でいかに無駄なく最良の選択をできるかは技術者の経験と準備にかかっている。
実際の現場で何を考え、どう設営していったのかを紹介する。
◎VR現場画像◎
〜使用機材〜
カメラ SONY PXW-Z450
照明 キーライト YONGNUO YN600 &ディフューザー1枚
〜意図〜
イスラエル政治学者。
自宅のリビングにて。およそ8畳。
学者ということもあり本棚と電球色のランプを背景に置き、視線前側の空間の白壁が電球色のオレンジ色に染まり落ち着いた印象となった。
ランプの電球のそのままの光量だと白飛びしてしまうのでLED電球にディフューザーを巻き、適度な輝度になるまで光量を落とした。(※発熱量が大きいランプにディフューザーを巻きつける際は火災防止のための細心の注意が必要。比較的発熱が低いLEDであっても発光部は相当な高温になるので直接電球に触れない様に巻くなど取り付けの工夫が必要。)
〜配置〜
基本的にインタビュー収録は視聴者が話に集中できるように背景をボケさせ話者を引き立たせる必要がある。
特に撮像板の小さいビデオカメラでは背景がボケづらいので、焦点を合わせる被写体と背景の距離をできるだけ離すことが求められる。
今回は部屋の対角線の距離を最大限活かして背景の対角ぎりぎりの位置までカメラが下がり、被写体は部屋の中心よりカメラ寄りになる配置とした。
出演者は部屋の隅に向かって話す事になるので通常の生活ではこのようなレイアウトはしないだろうと思うが、この部屋の雰囲気が伝わる背景づくりを試行錯誤した結果この配置に落ち着いた。
360度画像と配置図で位置関係を確認して頂きたい。
↑①キーライト YONGNUO YN600&パラ1枚
↑②フィルライト 窓からの外光
〜解説〜
①視線方向からキーライト
②画面左の窓からの外光でフィルライト
画像を見てお気づきかもしれないが、前回までの01、02と今回のライティングではキーライトとフィルライトの光量のバランスが逆になっている。
01、02はキーライトに対してフィルライトは暗部を補正する役割だが、今回はフィルライトの方がキーライトよりも強く、場の光の方向性を生み出しているのが外光のフィルライトである。
今回の03について、考え方によっては外光をキーライト、LEDライトをフィルライトと呼ぶのが正しいとも言えるが、ここでは「インタビュー照明」を主語としているので「顔を描く光源をキーライト」と呼ぶことにする。
「キーライトとは何か?」ということをここで考えておきたい。
キーライトとは一般的にその場(その構図)の主となる光源のことを指す。
例として一番簡単に思い浮かぶのは、晴れた屋外で撮影する際、キーライトとなるのは太陽である。
その太陽に対して被写体とカメラをどのように配置していくかを考えるとき、視線方向に太陽光が当たっていれば01、02のようなバランスになり、視線の反対側、顔の側面に太陽光を配置するのが今回のライティングである。
ドラマや映画のような、「場」を意識したライティングプランでは今回も一番強い光源である外光をキーライトとするのが正しいのかもしれないが、前述の通り、光の強弱ではなく顔を見せるためのライトをキーライトと呼ぶことで統一する。
01、02、03と見比べてみてどのような印象の違いを持つだろうか?
01、02はお手本のようなキーライトが当たっていて、説得力のある人物感を出すことを心がけた。
03は、左からの外光を受け、右奥には電気スタンドのオレンジの明かりが灯り、部屋の内側を向いているということが構図の中から感じられる。
前の二つの映像と比べると、リラックスした自宅の雰囲気を感じるのではないだろうか。
今回も人物を左向きにするか、またはキーライトをもっと強くすることで01、02と同様のバランスにすることができるのだが、15人のインタビューで構成されるドキュメンタリー番組として、「その人がどのような世界に居る人なのか」という情報も感じられる映像構成が求められる。
15人全て同じライティング構成で似た様な画面のインタビューばかりが続くよりも個性を出すことが必要と考え、今回はこの部屋の雰囲気をなるべくそのままに感じられるような、まるで視聴者もこの部屋に居るかのような自然さを表現した。
キーライト、フィルライト、バックライト、背景のバランスによって印象は大きく変わるということを意識して、番組の狙いに合わせたライティングの構成を考えておくことで映像を深めることができる。
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