働くことで幸せを感じた瞬間〜挫折と感謝のプレゼント〜
芸大を卒業後、
僕は企業デザイナーとしてアパレルのメーカに就職した。
20代の僕は挫折の連続で、
働くことで幸せを感じることはあまり多くはなかった。
しかし、ある出来事が僕に幸せをもたらした。
僕の芸大は学費がクソ高かった。
ざっと国立大学の3倍程度。
というのも、
私大で新設されたばかりだったからかもしれない。
当時僕は世間知らずだった。
学費が高くても親が出してくれるだろう。
それ位の感覚だった。
裕福な家庭だったわけでもなかった。
働きはじめて、
その学費がいかに高かったか実感した。
どうやって、両親は学費を捻出したのだろうか?
ちなみに僕の初任給をどうやりくりしても、
払えそうにはない額だ。
どうして両親は僕に何も言わなかったのだろうか?
「到底それは無理な相談やで」とか。。
当時母に言われたことは、
「あんたがやりたいんやったら、がんばりい」
だけだった。
父は何も言わなかった。
アパレルメーカーで忙殺される日々は続いていた。
思い通りにいかないことも相変わらずたくさんあった。
それからしばらくして、
何か両親に恩返しできたらと思うようになった。
それから、
月に1万円貯金をし始めた。
1年後、12万円が貯まった。
その12万円を温泉旅行の資金として両親に贈った。
僕が4年間費やした学費に比べたら、
比較にならない少額だ。
もしこれがギブ&テイクの関係なら、
とても割に合わない話だ。
でも、両親はなぜか鬼のように、
喜んでくれた。
その喜ぶ姿を見て、
僕は働いていて幸せだなって、
実感したのだ。
こんな幸せもあるんだなって、
両親が僕に無言で教えてくれたこと。
一生懸命働く背中で教えてくれたこと。
その両親の背中も当時より、
だいぶ小さくなってしまった。
今度は僕が両親を助ける番だと思っている。